土の中の子供 の商品レビュー
私が勝ち取ったものは、これなのだろうか。 私のすべてが震えて止まらないような瞬間が、あのような暴力と釣り合うような、喜びが、この世界にはあるのではないだろうか。 先人の書いた物語を読みながら、この世界が何であるのかを、この表象の奥にあるものが、いったい何であるのかを探ろうとした...
私が勝ち取ったものは、これなのだろうか。 私のすべてが震えて止まらないような瞬間が、あのような暴力と釣り合うような、喜びが、この世界にはあるのではないだろうか。 先人の書いた物語を読みながら、この世界が何であるのかを、この表象の奥にあるものが、いったい何であるのかを探ろうとした。 やられちゃえばさ、それ以上何もされることはないだろう?世界はその時には優しいんだ。驚くくらいに 大きくなりなさい。大きくなれば、君は自分の人生を自分で生きることができる こんな暴力に、私は恐怖など感じない。私には、通用しない。この世界のあらゆる暴力にも、理不尽にも、恐怖など感じてやりはしない。
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恐怖のための震えが、少しずつ、何か別のものに変化していく。私はあきらかに、何かを待っていた。恐ろしいにもかかわらず、でも確かに、じっと待機しているような感覚があった。12 何というか、きっとこの先にあるものを、私は待っていた。何か、私を待っているものが、そこに確かに存在するように...
恐怖のための震えが、少しずつ、何か別のものに変化していく。私はあきらかに、何かを待っていた。恐ろしいにもかかわらず、でも確かに、じっと待機しているような感覚があった。12 何というか、きっとこの先にあるものを、私は待っていた。何か、私を待っているものが、そこに確かに存在するように思えた。それが何であるのか、まだはっきりしない。14 「その先が知りたいな」「何で?」「その先に、そいつがどうなったのか。何ていうのかな、人間の最低なラインってどこなのかっていうかさ。どこまでいけるものなのかなって」21 その時の希望を知ることができたなら、そのように生きることも可能だろうかと。何か事情があったのではないかと思うことで、自分の本来帰るべき場所を、本来あるべきだったはずの時間を、自分の中で確保しようとしていたのかもしれない。30 死にたいなどと、思ってはいなかった。だが、自分が何かに惹かれているような気がした。希望と表現することが明らかに間違っているような、何かの望みが、私の中にあるように思う。それは姿が見えず、正体がわからない。31 落下していく最中、私の意識はある到達点までいくだろう。私は自分を落下させた加害者となり、被害者となる。不安と恐怖の向こう側に、何かを見るだろう。それを見ることができるのなら、何をしてもいいような気がした。46 色々と理由はあるのだろうが、少なくとも、彼らが私自身だったなら、私に対してこのようなことはしない。私以外の存在、それが何をしても不思議ではないし、どのようなことをする可能性もあるのだと思った。53 不安が、自ら意志をもったように、私の中に拡がって止まらなかった。自分は、死を求めているのだろうか。64 世界は、その広がりの中に私という存在を無造作に置いたままにしている。私はあまりにも無力であり、私の全存在をかけたところで、この世界に僅かな歪みすら加えることはできない。世界は強く、無機質にただ広がり、私を見ることもなく存在していた。64-65 死ねばいい。死んだところで、世界は私に気を止めることなどない。死は他の全ての事柄と等価値であり、この広がりの中では、大した意味など有していない。世界はやり直しの効かない、冷静で残酷なものとして私の面前に広がっていた。65 あの時、私は犬に向かって叫んだのではなかった。犬の向こう側にあるもの、私を痛めつけた彼らの、さらに向こう側にあるもの、この世界の、目に見えない暗闇の奥に確かに存在する、暴力的に人間や生物を支配しようとする運命というものに対して、そして、力のないものに対し、圧倒的な力を行使しようとする、全ての存在に対して、私は叫んでいた。私は生きるのだ。お前らの思い通りに、なってたまるか。言うことを聞くつもりはない。私は自由に、自分に降りかかる全ての障害を、自分の手で叩き潰してやるのだ。92 彼らがなぜ笑っているのか、私にはわからなかった。何か、他にあるのではないだろうか。無事でいられたことを全身で喜ぶような、私の全てが震えて止まらないよう瞬間が、あのような暴力と釣り合うような、喜びが、この世界にはあるのではないだろうか。94-95 「わからないんだよ」私は、正直にそう答えた。「ただ……、優しいような気がしたんだ。これ以上ないほど、やられちゃえばさ、それ以上何もされることはないだろう? 世界は、その時には優しいんだ。驚くくらいに」109 「僕は、土の中から生まれたんですよ」115 「だから親はいません。今の僕には、もう、関係ないんです」116
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暴力、性、殺、そして虐待。まぁ書き込んではあるが、お決まりのプロットだなという印象。残念。また芥川賞か。「ハリガネムシ」もそうだったけど、暗くて暴力的描写が求められる文学なのだろうか。同時収録「蜘蛛の声」は、「箱男」を彷彿とさせた。
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幼児期に虐待を受けた主人公の話で、 最初は暗くて、あちゃーと思ったけど ラストは希望が見えてホッとした。
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数年前、芥川賞。という事で購入してみましたが 私には合わず引き込まれるものがありませんでした。 一応全て読み終えましたが、ふ〜ん・・程度のもの。
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表題作「土の中の子供」は第133回芥川賞受賞作です。 痛みを持った男女がそれを乗り越えて共に歩んで行こうというお話。 こう書いてしまうと陳腐になってしまうが、その痛みがとてつもなく痛い。
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やや難しいです。論理詰めで難しいと言うよりは、言葉で言い表せない内容を必死に言葉で言い表そうとしている難しさがありました。文学らしいと言えばらしいのですが、あまりにそのことに粉骨砕身していて、面白さを削ってしまっているところがあるように思えました。 主人公が過去の経験から持つト...
やや難しいです。論理詰めで難しいと言うよりは、言葉で言い表せない内容を必死に言葉で言い表そうとしている難しさがありました。文学らしいと言えばらしいのですが、あまりにそのことに粉骨砕身していて、面白さを削ってしまっているところがあるように思えました。 主人公が過去の経験から持つトラウマ的(トラウマでは軽すぎる、もっと深いことを作者は書いているんだ、と言う人もいますが)な暴力描写、暗鬱な心理描写、被害描写があまりに長々と書かれているため、途中で気持ちがへこんできました。終りの方になると、主人公の心理は急速にプラスの方向に収斂して行くのですが、その心理のプラス描写が、それまでのマイナス描写と比べてあまりに少ないため、結局いい読後感を得ることはできませんでした。 蛇足ですが、現代の多くの作家の例に漏れず、この小説も村上春樹の影響を受けているように感じました。とは言え、「まあこのくらいの影響なら現代作家が受けても当然だろう」とは思えるレベルだったのですが、例の『あるいは~かもしれない』の『あるいは』の使い方のおかしさ、また、『汚い食堂に入り汚い食器に盛られた汚いチャーハンを食べた』などという表現は、残念ながら少し目についてしまいました。 次回作がせめてもう少し明るい、そしてよりオリジナリティ溢れる作品であることを期待します。
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芥川賞作品。 暗い生い立ちを持つ主人公の話。 一緒に「蜘蛛の声」って作品も収録されてます。 装丁から想像できると思いますが、暗いです。 なんだか、ただ暗い。 書いてあることにはうんうんと思うのですが、これだけ暗いのに全然後を引きませんでした。 あんまり引き込まれなかったです。 ...
芥川賞作品。 暗い生い立ちを持つ主人公の話。 一緒に「蜘蛛の声」って作品も収録されてます。 装丁から想像できると思いますが、暗いです。 なんだか、ただ暗い。 書いてあることにはうんうんと思うのですが、これだけ暗いのに全然後を引きませんでした。 あんまり引き込まれなかったです。 表題作より「蜘蛛の声」の方が好き。 こっちは暗い中にも人間の狂気が感じられて面白い。
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私と、同居している白湯子はともに負担を抱え込んでいる。 過去の重い記憶が未だに心と身体を縛り付けている。2人を結びつける一切の行為で2人が共感し合う訳でもなく、惰性的な生活はつづく。 私は両親に捨てられ、引き取った家族は私をムシケラのように殴った。やがて施設に引き取られ、今は...
私と、同居している白湯子はともに負担を抱え込んでいる。 過去の重い記憶が未だに心と身体を縛り付けている。2人を結びつける一切の行為で2人が共感し合う訳でもなく、惰性的な生活はつづく。 私は両親に捨てられ、引き取った家族は私をムシケラのように殴った。やがて施設に引き取られ、今はタクシーの運転手で生計を立てる。 土の中に生き埋めされた記憶が時折フラッシュバックする。理不尽にも暴力を受ける事がつきまとう。絶えざる死の誘惑、そこから打ち克とうとするなけなしの意志、果たしてその力が私を今まで 生かし続けたのだろうか。 強盗から難をのがれ、その最中に事故に遭う。病院で白湯子と見つめ合い、そこで自分たちの境遇を再確認するのである。
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ちょっと中村さんの精神攻撃ストーリーにも耐性が出てきた。なんでこうもこの人の書く人間は生々しい生命力を感じさせるんだろうか。やっぱすごいや。
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