葬送 第2部(下) の商品レビュー
「人生は大きな不協和音だ」 これを20代で書ききった作者に感銘を覚えました。 こんな描き物をされている最中、作者はすごい濃密な空間にいたんだろうなと、想像すると畏怖を覚えました。 人は死ぬ、という事をこの2部ではずっと突き付けられた時間になりました。 死が身の回りから現代的...
「人生は大きな不協和音だ」 これを20代で書ききった作者に感銘を覚えました。 こんな描き物をされている最中、作者はすごい濃密な空間にいたんだろうなと、想像すると畏怖を覚えました。 人は死ぬ、という事をこの2部ではずっと突き付けられた時間になりました。 死が身の回りから現代的に忌避されている中、こんな形でしか段々と人へ伝えられなくなってきている気もします。 天才ショパンを通して人生の歩み方を、凡人ショパンを通して死ぬ過程とは何かを問いかける。 読んでいる途中より、読み終えた後の今の方が、頭の中でメロディーを奏でているのがすごく不思議。 思考から他の事が消え去るくらい、いい時間になりました。
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ジョンジュサンドの気持ちには、あまり共感しなかった。最後くらいは会いに来て欲しかった。 善良な個が集まって奏でられる不協和音。私たちを取り巻く現実世界をうまく表現しているなぁと思った。 曖昧な物が重なって出来上がってる個と共同体。印象派の絵画のような文体を意識して書いたって、平野...
ジョンジュサンドの気持ちには、あまり共感しなかった。最後くらいは会いに来て欲しかった。 善良な個が集まって奏でられる不協和音。私たちを取り巻く現実世界をうまく表現しているなぁと思った。 曖昧な物が重なって出来上がってる個と共同体。印象派の絵画のような文体を意識して書いたって、平野さんが天才すぎる。 クラシック含め音楽の知識が不十分で、ショパンの演奏会を想像の世界で実感できなかったのが悔しく、今後も勉強していきたい。
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「葬送 第二部(下)」平野啓一郎著、新潮文庫、2005.09.01 476p ¥660 C0193 (2023.09.19読了)(2014.01.18購入) イギリスから戻ったショパンは、少しずつ病状が悪化してゆきます。著者は、その様子を克明につづってゆきます。喀血の様子などは、...
「葬送 第二部(下)」平野啓一郎著、新潮文庫、2005.09.01 476p ¥660 C0193 (2023.09.19読了)(2014.01.18購入) イギリスから戻ったショパンは、少しずつ病状が悪化してゆきます。著者は、その様子を克明につづってゆきます。喀血の様子などは、目の前で繰り広げられているかのように錯覚してしまいます。最後には、とうとうこと切れてしまいます。題名になっている「葬送」の模様も綴られ、遺産の処分の模様も綴られています。祖国ポーランドは、ロシアに占領された状態で、遺産をまとめて保存することは、かなわなかったようです。 読み切るのが、結構大変だったけど、読み終えてよかったです。 【目次】(なし) 十三~二十七 主要参考文献 解説 星野知子 ☆関連図書(既読) 「ショパンとサンド 新版」小沼ますみ著、音楽之友社、2010.05.10 「ショパン奇蹟の一瞬」高樹のぶ子著、PHP研究所、2010.05.10 「愛の妖精」ジョルジュ・サンド著、岩波文庫、1936.09.05 「ショパン」遠山一行著、新潮文庫、1988.07.25 「ドラクロワ」富永惣一著、新潮美術文庫、1975.01.25 「葬送 第一部(上)」平野啓一郎著、新潮文庫、2005.08.01 「葬送 第一部(下)」平野啓一郎著、新潮文庫、2005.08.01 「葬送 第二部(上)」平野啓一郎著、新潮文庫、2005.09.01 「ウェブ人間論」梅田望夫・平野啓一郎著、新潮新書、2006.12.20 「三島由紀夫『金閣寺』」平野啓一郎著、NHK出版、2021.05.01 (アマゾンより) 病躯を引きずるように英国から戻ったショパンは、折からのコレラの大流行を避けてパリ郊外へ移った。起きあがることもままならぬショパンを訪なう様々な見舞客。長期にわたる病臥、激しい衰弱、喀血。死期を悟ったショパンは、集まった人々に限りなく美しく優しい言葉を遺す。「小説」という形式が完成したとされる十九世紀。その小説手法に正面から挑んだ稀代の雄編。堂々の完結。 ショパン生誕200年のメモリアルイヤーを彩る、美と感動の長編小説
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「ポーランド人とは即ちポーランドだ。ポーランドとは即ちポーランド人だ。 この心のすべてが、いわばポーランドの文化の歴史だ。我々一人一人が感じ取り、考え、生み出そうとするとき、常に感じ取らせ、考えさせ、生み出させているのはポーランドだ。 このからだこそは。ポーランドの土が育んだパ...
「ポーランド人とは即ちポーランドだ。ポーランドとは即ちポーランド人だ。 この心のすべてが、いわばポーランドの文化の歴史だ。我々一人一人が感じ取り、考え、生み出そうとするとき、常に感じ取らせ、考えさせ、生み出させているのはポーランドだ。 このからだこそは。ポーランドの土が育んだパンが血となり肉となったものだ。十指の先端にまでその土の恵みを知らぬ箇所はない。」 優美で、神経質なまでに繊細、決して相手を傷つけることのない紳士的なショパンの胸の内にある、ポーランド人としての誇り、ポーランドへの熱い思いが伝わります。 「我々の心に訴えるものは、技量というよりも精神であり、技術というよりも人間である」」という岡倉天心の言葉を思い出しました。 ショパンのリサイタルで演奏された曲を、一つ一つ聴きながら文章を読み、とても贅沢な読書体験になりました。お勧めの読み方です。 「どうして自分は、たったそれだけの思いやりをすら持つことが出来ないのだろう?どうして一切を顧みず、愛する人の為に何かあをしてやりたいという気持ちを抱くことが出来ないのだろう?」 …天才ドラクロワ、切ないです。 この他にも、サンド夫人、ソランジュ、スターリング嬢、どの人物にもそれぞれの人間性やドラマがあり、この小説を重厚なものにしています。 とても贅沢な小説でした。
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ショパンとパトロンのジョルジュサンドとの係わりがよく分かる。ポーランド人ショパンのパリやロンドンでの苦闘、作曲や演奏会がダイナミックに描かれている。
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今年は5年に1度開催される『ショパン国際ピアノコンクール(ショパコン)』の開催年、この年にこの本と巡り会い幸運でした。 ショパコンでの演奏曲もちらほらと‥ ショパンの生に対する限りなく強い思い、執着、画家ドラクロワの鋭い洞察力、そして自由奔放、強い個性の執筆家サンド、三人が織り成...
今年は5年に1度開催される『ショパン国際ピアノコンクール(ショパコン)』の開催年、この年にこの本と巡り会い幸運でした。 ショパコンでの演奏曲もちらほらと‥ ショパンの生に対する限りなく強い思い、執着、画家ドラクロワの鋭い洞察力、そして自由奔放、強い個性の執筆家サンド、三人が織り成す人間模様は複雑です。 平野氏の三人三様のこと細かな心理描写・思考描写には脱帽、いやその細かさ故に疲労感さえ感じられる場面もありました。 人の本当の心の中は誰も覗けませんですしね。
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ここまで本当に長かったが、終盤はショパンの「最後」…である ここで息がつけないような展開で一気にスピードアップしていく ショパンに死が迫る 何度も喀血し、死と隣り合わせで生きるショパン 少し回復してはまた悪化…を繰り返す そんな時期にショパンは周りの技術者(指揮者、調律師、医...
ここまで本当に長かったが、終盤はショパンの「最後」…である ここで息がつけないような展開で一気にスピードアップしていく ショパンに死が迫る 何度も喀血し、死と隣り合わせで生きるショパン 少し回復してはまた悪化…を繰り返す そんな時期にショパンは周りの技術者(指揮者、調律師、医師など)たちの死について、 ~一人死ぬたびに彼らばかりではなくその技術までもが道連れにされてしまう 自分が死ねば音楽もしかり 自分の演奏がその死の瞬間にこの世から一切消えてなくなってしまう~ このように考え、何か残したいという思いが強くなる 自らの音楽についての考えをまとめるべく「メトード・ド・メトード」(未完のピアノ入門書)に着手 そして ~創作とは常に死というものと無限に近接する行為 あるいは死そのものですらあるのであろう~ と考える 死を目前にポーランドの家族への思いがいっぱいになるショパン ショパンは故郷ポーランドを大変愛しており、フランスに亡命したポーランドの人たちに惜しみない援助をしていた (当初は広く受け入れられ保護されていたが、成功者以外は徐々に居場所を失うのだ 亡命できたら苦難が終わりではない) 若いころに故郷を離れたショパンは最後はポーランドへの母親と姉妹たちへの思いが膨れ上がる そして、なんとか姉だけを呼び寄せることができるのだ(唯一の救いでホッとできる数少ない場面) そう、まるで自分がそこにいるかのような錯覚になってくる ひたひた迫るショパンの死 ショパンを大切に思う人たちの悲しみと深い愛情 ショパンの精神的な苦しみと、肉体的な苦しみ 死と向かい合ったショパンが何を感じ、どう思うのか… ある空間が徐々に狭まり、空気が薄くなるのに圧だけが増すような感覚 ショパンの生命力が消えていくのと対称に、ショパンを愛するものたちの感情の強さが相まってその描写のリアリティーさが迫るものがあり圧巻であった そして、この時ドラクロワは… 「憂」「鬱」「虚」「靄」「倦」… とにかくこんな感じ(漢字…いや、まじめなんです)がいつも周りに漂っている ピーカンに晴れる日も出てきたのだろうが、まったく記憶に残らない 芸術、人間ドラマ、死、孤独、家族… 多くの要素が満載で、テーマ性も多岐である 読むのに時間はかかるが、かけた時間の価値はある 本書に出てくるショパンやドラクロワ同様に、平野氏が血と肉を削って作品に捧げたのが良く伝わる そこがこの作品を支えている基盤となり、重厚なものに仕上がっているのであろう 「マチネ…」と本書のあまりにもの違いに驚いたので他の作品の読むべきなんだろう(笑) さて次は何にしようか…
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第四分冊でありシリーズ最終巻となる本書では、ショパンの死が中心にえがかれています。 本作は、「小説」という形式そのものが裏のテーマになっているということができると思われますが、ロマン主義的な芸術の理念をみずからの作品によって実現したショパンとドラクロワの二人を中心に、彼らや彼ら...
第四分冊でありシリーズ最終巻となる本書では、ショパンの死が中心にえがかれています。 本作は、「小説」という形式そのものが裏のテーマになっているということができると思われますが、ロマン主義的な芸術の理念をみずからの作品によって実現したショパンとドラクロワの二人を中心に、彼らや彼らを取り巻く人びとの「人間」としての側面に注目がなされているように感じました。忍び寄る死に直面しながら心の揺れ動きを見せるショパンと、彼に対してどのように振る舞うべきなのかさまざまに態度が分かれる周囲の人びと、そしてショパンのもとを訪れることのなかったドラクロワの自己省察などの心理描写が、リアルな「人間」のすがたを示しています。人間たちの有限性と、彼らのすがたを通して読者が感得することになるであろう芸術の理念の永遠性との緊張関係をえがくことが、「小説」という形式によって叶えられるということが、本作において示されています。 著者は、小説という形式のもつ可能性を自覚的に追求するような作品をこれまでも手掛けており、そうした試みの一つとして本作を理解することができるように感じました。
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210201*読了 ああ、とうとう読み終えてしまった。そしてショパンの演奏が永遠に聴かれなくなってしまった…。 ショパンの苦しみが辛い。ドラクロワの行動も決して非難できない。 彼らは今この時を生きてはいないけれど、彼らの残した作品は今もこの世に存在し、多くの人の心を動かしている…...
210201*読了 ああ、とうとう読み終えてしまった。そしてショパンの演奏が永遠に聴かれなくなってしまった…。 ショパンの苦しみが辛い。ドラクロワの行動も決して非難できない。 彼らは今この時を生きてはいないけれど、彼らの残した作品は今もこの世に存在し、多くの人の心を動かしている…。ただそこにある作品ではなく、この小説を読んだ今はそのすばらしい宝物を生み出した当時の彼らの心境を思って、より一層大切にしたいと思えます。 本当にいい小説だった。長いし(そこがいい!)、難しくて理解できていない部分も多々あるだろうし(そこもいい!)、万人が「この本おもしろい!」とオススメするわけではないんだけど、そこがいいんです。 この小説は芸術や文学を愛する人だけで大切にしたい…。 決して大ベストセラーにならなくても、この小説はすばらしい。そうなんです。 解説で平野さんがこの小説を20代で書かれたことを知り、驚愕。天才ってこういう人のことを言うのだな…。 ショパンとドラクロワという天才の人生を描く天才小説家、平野啓一郎さん…。3年間も19世紀に生きた彼らの人生と向き合い続ける根気。 ショパンは音楽、ドラクロワは絵画、平野さんは小説。天才とは持って生まれた才能なんだけれど、天命を与えられたように一つのことをただひたすらに夢中で続ける、という力を持っている人こそを天才と呼ぶのだろうな。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
結核に冒されたショパンに遂に死が訪れる.ショパンの矜持と高潔さ,一方の画壇の異端者ドラクロワの生きるための処世術と密かな望みが対比され,二人の友情を軸に,スターリング嬢を代表とする周りの人々の視野の狭さや俗さ,あるいはショパンの死に際しての悲しみ,サンド夫人親子の確執などの多層構造を,ポトツカ伯爵夫人やフランショームの言葉を借りれば「不協和音」として描いた大河小説である. 細やかな心理描写が見事で,特にドラクロワの思考の流れに共感する場面が多々あった.また,本書の主人公は一見ショパンであるが,真の主人公はドラクロワであろう.ショパン死去,それにともなう葬儀の混乱,財産の処分などの喧噪から一歩身を引くドラクロワ.彼が取り組むことになった教会の天井画について,その希望に満ちた内容を思い描く場面で本書は終わる. 行間から少し作者の「どうだ」という態度が透けて見えるのだが,古典を読むような重厚さがあり,非常に読み応えのある小説であった. 恐らく再読することになると思う.
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