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花芯 の商品レビュー

3.5

43件のお客様レビュー

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    7

  2. 4つ

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2021/04/28

表題作『花芯』は1958年の作品,1957年に「女子大生・曲愛玲」で新潮同人雑誌賞を受賞した後の第1作で,ポルノ小説であるとの批判にさらされ,批評家より「子宮作家」とレッテルを貼られ,しばらく干されていたのだという。 直接的な性愛描写を,隠すことを美徳としてきた(一部の)世間に...

表題作『花芯』は1958年の作品,1957年に「女子大生・曲愛玲」で新潮同人雑誌賞を受賞した後の第1作で,ポルノ小説であるとの批判にさらされ,批評家より「子宮作家」とレッテルを貼られ,しばらく干されていたのだという。 直接的な性愛描写を,隠すことを美徳としてきた(一部の)世間に対する,堂々たる反抗と読んだ。家庭というのは女性にとっては大きな制約なのであって,作者の裏表のない讃歌によって,子宮は自由へと解き放たれた。これは悪女でなければ雌獅子でもない,一娼婦の目覚めの話である。まだ熟しておらず粗削りではあるが,有り余るパワーを黙殺するのはもったいない作品である。 現代からすれば,陳腐にも思えるポルノと言ってしまえばそれまでなのだが,戦後間もない時代背景を見てこういう風土もあったのだという,慎重かつ真っ向からの批評が求められる。

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2020/04/18

現代文学に食傷気味だった頃、開いた一冊。 長らく本棚の中で眠っていたが、パンドラの匣を思わせる素晴らしさだった。 尻切れ蜻蛉の様に終わる表題作は、最後の三行に瞠目させられる。 何と切れ味が良く、格好良い物言いだろう。 読者を突き放して尚嘲笑う事、物書きになるべく生まれた妖怪の如し...

現代文学に食傷気味だった頃、開いた一冊。 長らく本棚の中で眠っていたが、パンドラの匣を思わせる素晴らしさだった。 尻切れ蜻蛉の様に終わる表題作は、最後の三行に瞠目させられる。 何と切れ味が良く、格好良い物言いだろう。 読者を突き放して尚嘲笑う事、物書きになるべく生まれた妖怪の如し。 流石です。

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2018/03/31

 なぜ買ったのか……多分、ツイッターか何かで紹介されていて、どんなものなんだろうか、と思って購入したのだと思います。  一作目の、るいさんが、果てしないなあ、と思いました。儚さを佇む。

Posted byブクログ

2017/11/27

かなり長い時間をかけてやっと読了。 実は私の勝手な都合ではあるけど、宮下奈都さんの本と並行して読んでいたので、その落差というか作風の開きに戸惑いが大きかった気がする。 5編の短編集。印象が深かったのは最後の花芯だったけど、どの話の主人公も、言葉でちゃんと自己表現しないのに、人の...

かなり長い時間をかけてやっと読了。 実は私の勝手な都合ではあるけど、宮下奈都さんの本と並行して読んでいたので、その落差というか作風の開きに戸惑いが大きかった気がする。 5編の短編集。印象が深かったのは最後の花芯だったけど、どの話の主人公も、言葉でちゃんと自己表現しないのに、人の何倍も濃い思いを持っているという共通点があったように思う。 自分と違うタイプが多く、なかなか共有できなかったことも読了までに時間を要した理由かもしれない。

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2017/10/30
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

こんな女に出会ってみたい。 解説者が如何にポルノ小説を文芸作品に昇華させようとしたとてそれはそれ。瀬戸内晴美さん自身こそばゆかろう。 いいじゃない、子宮作家でも又は袋とじ作家でも

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2017/05/04

瀬戸内晴美。若き日にこの素晴らしくも、迫力ある作品を世に出したからこその寂聴先生なんだと改めて実感した。読み返したい作品。女性のすごさ、その一言でしょう。

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2017/04/04

繊細で且つ深い描写にゆらゆらと揺られて文字を追う心地よさ。美しい日本語とはこういうことなんだなぁ、と酔ったような心地にさせてくれます。女性の性愛を語っているにも拘わらず、品のある文章ゆえ下品にならずむしろ清らかに感じられた。

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2018/03/20

『子宮作家』ねぇ……そんなに下品な作品では全然ない、と思うのは、書かれた当時と今の風俗が変化しているからだろうか。 むしろ、恋のなんたるかも知らないうちに、親が勝手に決めた好きでもない男性と結婚し、子供まで生んでしまった後に、恋を知り、夫を愛していないと気づいてしまう女性のなんと...

『子宮作家』ねぇ……そんなに下品な作品では全然ない、と思うのは、書かれた当時と今の風俗が変化しているからだろうか。 むしろ、恋のなんたるかも知らないうちに、親が勝手に決めた好きでもない男性と結婚し、子供まで生んでしまった後に、恋を知り、夫を愛していないと気づいてしまう女性のなんと可哀想なことか、と同情すらしてしまう。 そこで、妻とは、母とはどうあるべきかということを、自分自身がどう生きたいか、よりも大切だと考える女性だったなら、心と身体を別物として生きられたのかもしれない。 けれど園子は、既成概念などに囚われない女性であり、心と身体を別物とは思えない女性だった。 夫や子供を置き去りにしてまでも恋い焦がれた相手と、結ばれたと同時に恋が終わったというのも、なんというか……。 でも、分からなくもない。 わたしも、わたしの周りの友人たちも、20代の頃は同じような感じだった。 この作家の男女関係に対する考え方は、数十年後を先取りしていたのかもしれない。

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2016/06/05

何でしょう。特別面白かったと言う訳でもなかったのに、物凄く惹きつけられて一気読み。 今読むと特別タブーを扱った小説だとは感じませんが、当時はやはりセンセーショナルだったのでしょうか。 しかしこれを書いた人が今は尼さんだとは凄い。 解説が中々面白く、もしこれが男性作家であれば ...

何でしょう。特別面白かったと言う訳でもなかったのに、物凄く惹きつけられて一気読み。 今読むと特別タブーを扱った小説だとは感じませんが、当時はやはりセンセーショナルだったのでしょうか。 しかしこれを書いた人が今は尼さんだとは凄い。 解説が中々面白く、もしこれが男性作家であれば 『こんな女もいるかもね〜』になるところ、 女性作家が女の性を書いたもんだから、 『まじかよ!こんな女もいるのかよ!』と妙に生々しく恐怖すら感じる。 みたいな事を書いてあって、なるほどなぁとクスっときてしまった。

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2016/05/31

梳る。そんな言葉の一つ一つが、書かれた時代に暮らす作者の息づかいに、生々しく触れているような気にさせる。現代の女性という存在ではない、もっと気持ちや欲望に正直な、女という生き物の内面を目の当たりにし、男はいつの時代もただいるだけなんだと、改めて感じさせられる。 機微を映画にどれだ...

梳る。そんな言葉の一つ一つが、書かれた時代に暮らす作者の息づかいに、生々しく触れているような気にさせる。現代の女性という存在ではない、もっと気持ちや欲望に正直な、女という生き物の内面を目の当たりにし、男はいつの時代もただいるだけなんだと、改めて感じさせられる。 機微を映画にどれだけ写し込めているのか、興味が出たので、観に行ってみよう。

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