花芯 の商品レビュー
美しい言葉が心に響く
デビュー後に発表した表題作が「ポルノ」と批判され、しばらく文壇より干されることになったのだとか。それが、信じられない。5つの作品を形作る洗練された言葉の数々。久しく味わっていなかった美しい言葉が、沁みる。
ごうけ
瀬戸内寂聴は初めて読んだ。50年ほど前は物議を醸した小説らしいが、今出たなら、炎上するような話ではないと思う。この小説が嫌いな人は、つまりこの登場人物の女性のような生き方を否定したいんだろう。 昭和レトロな雰囲気、落ち着いた文体。生きづらい女性の哀しさが滲む物語。
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瀬戸内寂聴99歳の映画を観て読んでみたくなった。あのかわいいおばあちゃんと、この生々しい心の動きが全く結びつかなかったけれど、筋が通っていることや奔放なところは同じなのだと思った。
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瀬戸内晴美時代の六篇からなる短編集。 「いろ」 長唄などの師匠・るいと31歳下の弟子・銀二郎との話。 読み進めるうちに、るいは玉三郎に重なる。顔の右半面は火傷でただれているが、色白で顔立ちだけでなく所作も美しく、どんなに歳を取り弱っていっても凛とした振る舞いをし、ただただ銀二郎のことを愛していた。そして、亡き後も銀二郎に愛されていた。 「聖衣」 電車に乗り、死の際に立つ不倫相手とのこれまでのことを思い返し、もうすでに亡くなってるかもしれないと思いながら、病院へ向かうけい子。 目の前に立った外人の尼僧の黒白の聖衣に秘される緋色の帯は何を言わんとしているのか。 「花芯」 園子は申し分の無い雨宮という夫がいながら、夫の上司である越智に一目で心を鷲掴みにされる。そんな越智に対して貞淑であろうとするかのように夫との関係を拒むようになる。越智には関係を持つ未亡人がいて、一緒になる事はできないと分かっているのに、夫の元からも去る。園子はなんて自分に正直で強い女性なんだろう。
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寂聴さんのエッセイ本は何冊か読んでいるけど、小説を読んだのは初めて。曰く付きの作品を読んでみたかった。50年位前とは思えない生生しさ。私は好きだ。辛いし痛いしけど。女の性。分かる自分も痛みを抱えている。
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こんなにも人間の性愛を、深く、上品さを持った淫らさで表現できるのはこのひとが女性だからだと痛感させられる短篇集。 女性こそが強さをもって人間のしがらみを隠すことなく、官能を通して表現し切れるのだ こんな小説、現代では望むべくもない
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ザ文学といった感じ。 多くを語らないので、一度さらっと読んだだけでは分からないことがたくさん。 もう一度じっくり読み直したい。 文章の表現はさすが、、うっとりしてしまう。 物語に引きずり込まれてしまい、現実に戻ってきにくくなるのが難点。
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女性だから生み出せる表現ばかりで、下品な感じは全くしなかった。これを子宮作家と馬鹿にするとはなんと表面的…時代柄、仕方ないのか。。 女性として分かるものも多かったけど、勿論、分からない価値観も多かった。感動したとか共感した、ではなく、深く考えさせられた文章をメモ程度に。 ・恋愛なんて、結局、誤解の上に発生する病状(p34) ・まだ男はできる…ということばよりも、まだこどもは産めるということばの方が、女にとって、なんとみずみずしく、涯しない可能を孕んだひびきをもっていることでしょう (p37) ・愛とはもっと透明な、炎のように掌に掬えないものではないだろうか。 (p107) ・人間はどうしてだれも彼も結婚したがり、味気ない噓でぬりかためた家庭の殻の中にとじこもりたがるのだろう。出来ることなら生涯、独身ですごせないものだろうかと、私は度々空想した。 (p110) ・人間のだれもが逃れることの出来ない行為 (p118)
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これまでに読んだ寂聴さんの作品とは違うテイストだけど好き。 当時この作品がバッシングを受けたのは、認めたくない女性像が描かれていたからでは。 寂聴さんあっぱれ! 解説は川上弘美さん
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