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チベット旅行記(上) の商品レビュー

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9件のお客様レビュー

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2024/07/07
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

明治30年、チベットに仏法を学ぶため、単身海を渡った河口慧海の旅行記。旅行記というには壮絶というか、出会いと別れと艱難辛苦を乗り越えながら一歩ずつ進む様が現実とは思えないほどドラマチックで、普通の人だったらこの上巻の間に7回くらい死んでると思う。 チベットに入ろうとする外国人は殺される時代、事前に言葉を習得し、その土地土地の有力な僧侶や遊牧民に助けられつつ、時にはシナ人であると嘘をつきつつ、大迂回路をとってチベットに向かっている。彼が仏教の教えを愚直なまでに守るさまが、貫徹し過ぎていてむしろユーモアにさえ感じる。お話のお礼とか餞とかに、物をもらう代わりにその人の禁酒を乞うて、その人の魂を救ったと満足したり。何日も水がない中を彷徨いあるいて、やっと見つけた水たまりの水には虫が湧いていたので、虫を殺すわけにはいかないと躊躇したり。どんな窮地に陥っても愚直に仏教の教えを守る彼には、不思議と天の助けが与えられる。この時代に、何十キロもの荷物を持ってヒマラヤ越えするとか、そのエネルギーがチベットで仏法を学んで衆生を済度するため、とか、すごすぎる。折々に詠む旅の和歌も良き。彼が説教した人が皆感嘆して回心していくから、とても話の上手い人だったんだろうな。そしてそれを、数年学んだだけのチベット語でやってのけるってすごい。キリスト教の、使徒たちの宣教みたいなもの?言語を超越した何か。

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2023/04/29

G.W.にゆっくり読もうと、図書館から借りてきたら、むちゃくちゃ面白く、あっという間に上巻を読んでしまった。 河口慧海は明治時代の僧侶で、仏典の勉強をするため今から120年前に鎖国していたチベットに入った最初の日本人なのだ。それも密入国なのだがこれはその旅行記なのである。 仏教...

G.W.にゆっくり読もうと、図書館から借りてきたら、むちゃくちゃ面白く、あっという間に上巻を読んでしまった。 河口慧海は明治時代の僧侶で、仏典の勉強をするため今から120年前に鎖国していたチベットに入った最初の日本人なのだ。それも密入国なのだがこれはその旅行記なのである。 仏教的な話はほとんど出てこない。言葉もできない。ツテもない。ネパールからヒマラヤを越えて行く。チベットはほとんど標高5,000m級の高地にある。そこを獣や山賊に襲われながら、巡礼者や土地の人に助けられながら日本人であることを隠して密入国するのだ。その逞しさ、運の強さ、全部ひっくるめてとにかく痛快。 本当の意味での探検であり小説より面白い。冒険小説でいえばハガードの「ソロモン王の洞窟」を思い出してしまった。ノンフィクションであることを考慮すればアラン・クオーターメンを凌駕する。 現代は探検する場所がなくなってしまった。どこの景色も以前ネットかテレビかどこかで見たような景色だし、世界中の人は文明に触れていて、すべてが想定内のような気がする。だから未知なるものへの興味がオカルトに向いてしまうのかもしれないけれど、まだ知らない土地があった時代の本当の冒険! さあ、いよいよGW!下巻を楽しもう!

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2019/03/10

色んな人からの推薦本だったから、いつかは読もうと思いながら、どうもタイトルや装丁の詰まらなさそうな雰囲気から、手が遠のいていた。その事は素直に反省しなければならない。時代は明治。仏教徒の旅行記、しかも場所はチベット。このキーワードをどう感じるかは様々だろうが、私が思っていた読みに...

色んな人からの推薦本だったから、いつかは読もうと思いながら、どうもタイトルや装丁の詰まらなさそうな雰囲気から、手が遠のいていた。その事は素直に反省しなければならない。時代は明治。仏教徒の旅行記、しかも場所はチベット。このキーワードをどう感じるかは様々だろうが、私が思っていた読みにくさは微塵も無い。寧ろ、現代のバックパッカーにおける日記のようだ。あるいは、遭難者の手記だろうか、とにかく読みやすい。そして仏教観が世界を広げ、時のチベットの汚穢さは臭いすら経験させてくれるようだ。 志し。シャカムニ如来は王位も富貴も捨て、乞食として出家し一切の衆生のために、身を削り修行した。筆者も安穏と地位を捨て、覚悟を決めたのだ。そんな生き様からは、宗教を超え、学ぶ事は多い。

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2017/06/18

 明治時代に日本からチベットへ行った僧侶の旅行記。私が読んだ新書は現代語訳で、全訳ではないが一般人が読むには適していると思われる。どうやら多少の脚色もあるようだが非常にスリリングで、冒険譚としても面白い。ろくな装備もなく登山家でもない彼がよく生きて帰ってこれたものだと思う。  ...

 明治時代に日本からチベットへ行った僧侶の旅行記。私が読んだ新書は現代語訳で、全訳ではないが一般人が読むには適していると思われる。どうやら多少の脚色もあるようだが非常にスリリングで、冒険譚としても面白い。ろくな装備もなく登山家でもない彼がよく生きて帰ってこれたものだと思う。  ヒマラヤに近いチベットは自然環境も過酷だが、それに加えて当時は厳重な鎖国政策を取っていた。だから外国人がチベットに入ることは物理的にも政治的にも命の危険と隣り合わせであり、ヨーロッパからも多くの探検家や研究者が進入を試みながら断念していたという。  著者がそんな場所へ行ってちゃんと生きて帰ってこれた理由は色々挙げられるが、「死んだら死んだでしょうがない」という割り切りがあったことが結構重要なのではないかと思われる。その辺はさすが僧侶といったところか。  それにしても、目的地へ向かう途中の国に何年も滞在し、そこで出会った人から言葉を勉強して準備するなんて、現代とのあまりの違いが眩しくすら感じられる。何もかも簡単になってしまった現代の私たちは、便利さに比例して弱くなっているのは間違いないだろう。

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2012/03/29

日本人で初めてのチベット入国者として1897年(明治30年)にチベットへ旅立った河口慧海の旅行記。 「チベット人は糞を食う餓鬼というもの」、等現地人をやたらけなしたり、自分の方が良く知っているといった自慢話が多いのが気になった。

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2011/05/14

チベットを旅行したら死ぬぞ、といわれての河口慧海の一言。 「死ねばそれまでのこと。日本にいたところで死なぬという保証はできない。向こうへ行っても必ず死ぬとは決まっていない。運に任せてできうるかぎりのよい方法を尽くして、事の成就を図るまでのこと。」 死をかけてのことじゃなくても、全...

チベットを旅行したら死ぬぞ、といわれての河口慧海の一言。 「死ねばそれまでのこと。日本にいたところで死なぬという保証はできない。向こうへ行っても必ず死ぬとは決まっていない。運に任せてできうるかぎりのよい方法を尽くして、事の成就を図るまでのこと。」 死をかけてのことじゃなくても、全てにおいて言えると思う。できうるかぎりのよい方法を尽くすことが大事。

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2010/07/07

[ 内容 ] ただひとり、ひたすら求道の情熱に身を任せ、明治33年、日本人として最初にチベットに入国した河口慧海。 その旅行記は古典的名著であり、読み物としても抜群の面白さを備えている。 上巻では、明治30年6月、日本を出発し、装備も不十分なまま寄せ来る困難をしのぎながらヒマラヤ...

[ 内容 ] ただひとり、ひたすら求道の情熱に身を任せ、明治33年、日本人として最初にチベットに入国した河口慧海。 その旅行記は古典的名著であり、読み物としても抜群の面白さを備えている。 上巻では、明治30年6月、日本を出発し、装備も不十分なまま寄せ来る困難をしのぎながらヒマラヤ越えに挑んださまを描く。 [ 目次 ] チベット入り決心の次第 出立まえの功徳 探検の門出および行路 語学の研究 チベット入りの道筋 奇遇 間道のせんさく ヒマラヤ山中の旅行 山家の修行 北方雪山二季の光景〔ほか〕 [ POP ] [ おすすめ度 ] ☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度 ☆☆☆☆☆☆☆ 文章 ☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー ☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性 ☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性 ☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度 共感度(空振り三振・一部・参った!) 読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ) [ 関連図書 ] [ 参考となる書評 ]

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2009/10/04

これはある超人の日記であり、文化人類学の教科書でもあるだろう。 最近「ホワイトアウト」を読んで雪に対する恐怖感を目の当たりにできた気がしていたのだが、本書に比したら戯画に堕ちてしまうだろう。何しろこちらはほぼノンフィクションだろうから。 だいたい、なんの設備も持たずヒマラ...

これはある超人の日記であり、文化人類学の教科書でもあるだろう。 最近「ホワイトアウト」を読んで雪に対する恐怖感を目の当たりにできた気がしていたのだが、本書に比したら戯画に堕ちてしまうだろう。何しろこちらはほぼノンフィクションだろうから。 だいたい、なんの設備も持たずヒマラヤ越えなど可能なのだろうか?本書で著者は何度も死にかけている。十分な食料も持たず、防寒着もつけず、自らの信念だけでマイナス何十度の生き地獄を何千キロもの気も遠くなるような冒険へ、彼を駆り立てたものは何なのだったのか?それは仏教への信仰心ひとつだ。 同じ日本人という概念では彼を捉えられないだろう。医学等博学な知識や、恐ろしいほどの体力は超人に値するが、性格は変人に近い。その地金を表す文体は恐ろしく下手糞であり、途中何度か目にする和歌などはあまりにヘタ過ぎてこちらが恥ずかしくなるほどだ。彼のエゴイスティックな部分が文中よく垣間見られ、現地の人たちからも変人扱いを受けている。また、現地の人々を露骨に差別し、卑下するような気配も感じられる。まさに文化人類学のテキストのようではないか。 未踏の地に光を灯す部分だけが彼の業績なのではない。 戦前の日本人のもつ純粋な探究心や克己心、なにしろその不屈の闘志に感銘をうける。

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2009/10/04

徳の高いお坊さんは、意外とフランクで現実家だ。けどやってることはファンタジーの領域かと思うくらい人間離れしている。そういう旅行記。

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