トリップ の商品レビュー
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(図書館) 東京から電車で2時間弱のとある町にある商店街を舞台にした連作短編集。 読んでも読まなくてもいいかな、という1冊。 ●空の底 道を踏み外すことに憧れる高校生のわたし。 隣に住む20代のすみれさんは家庭内別居といって離婚を妄想している。 ●トリップ 2人が暮らす川原の近くを歩いて、息子太郎の手を引いて買い出しに出かけるあたし。ドラッグから抜け出せない。 ●橋の向こうの墓地 「あたし」の後をつけてコロッケを買いに行くおれは、彼女の提案で仕事を辞め専業主夫として暮らしている。 ●ビジョン 精肉店の嫁としてコロッケを売るもうすぐ40歳になる私。お見合い結婚をして15年、これが正解だったのかいまだに悩んでいる。 ●きみの名は 同じ商店街、浜田酒店に嫁いだ淀川君子を大学時代からストーカーしているぼく。 ●百合と探偵 「ぼく」と淀川君子が再開してビールをのんだ喫茶店の店主であるあたし。 ーこの話だけよく分からない。母親である「あたし」は苦労して娘を育てた「つもり」だけど、娘はちゃらちゃらしてる母親だと思ってた?(子ども預けて製菓学校に通ったり、派手な格好をしたり) 一人称あたし視点で語られるけど、確かに娘視点の方が、夫が浮気した理由も分かるし、という感じ。だとしたら、「あたし」めちゃくちゃ痛い…。 ●秋のひまわり 商店街で花屋を営む母親と暮らす12歳のぼくは学校でいじめに遭っているが、年下の彼氏に夢中の母親は気が付かない。ある日その彼氏が店の資金を持ち逃げする。 ●カシミール工場 商店街の古本屋で働くあたし。 昔からいじられるキャラで卑屈な性格だから誰とも打ち解けられない。お気に入りの少年「ぼく」がいじめられていることを知り、自分はそうではないと気づく。 ●牛肉逃避行 妊娠した妻とお茶していたホテルでお見合いしていた「あたし」を見かけたぼく。 偶然後をつけるようにして「あたし」が住む町で引越し先を内見することになる。 ーこれはちょっと面白かった。「今しなければならないのはそれを現在にかえること」そうなんだよね、若い頃はとくに、今いるのは本当の自分じゃない、とかとかく考えがちなんだけれども。過去も未来も「今」でしかないから。 最後の一文はかなり皮肉だけれども。 ●サイガイホテル 「ぼく」と妻が内見した一軒家に住んでいた私は、年老いた祖母を見捨てて東南アジアを放浪している。途中で亡くなった祖母の葬式にもでなかった。現地人のように暮らしている自負から油断して置き引きにあい荷物を盗まれてしまう。 ーこの話は嫌い。主人公が最低すぎる。 とはいえ、角田さんの書く登場人物は、角田さん自身が会社勤めとかしていないせいか、みんな総じて幼い。よく東南アジアで自分探ししてる気がする。 現実感がないんだよねぇ…。
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他館より借受 娘の実テの問題に出たとのことで、読んでみた。 トリップ レストラン四季のあたりがテストに出ていたらしい。旅行の話かと思った。 なんとなくつながっていく連作。
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「ロック母」の中の一編、「ゆうべの神様」の世界観。 まだ商店街が機能している田舎町の閉塞感を書いたら、誰も角田光代に勝てないと思う。
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郊外の街を舞台にそこに住む人々を描いた短編集。後半は話と舞台の骨格がしっかりしてきたから中々読めるけど前半は結構ぐだぐだで、2000年以降に角田光代が書いたとのとは思えない完成度。雑誌に短編書いてよ、と頼まれてさっさと書き上げたっていう感じ。
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角田さんの短編10個。 一つ一つ独立した話ではあるけど、さっきの短編の誰かが第三者で出てくる。 こんな風に、知らない間に誰かの目につき、いつの間にか覚えられていてこっそりあだ名なんかつけられてて、でもそんなそぶりはなく振る舞われてる、それにも自分は気付いてない、なんてことはあるか...
角田さんの短編10個。 一つ一つ独立した話ではあるけど、さっきの短編の誰かが第三者で出てくる。 こんな風に、知らない間に誰かの目につき、いつの間にか覚えられていてこっそりあだ名なんかつけられてて、でもそんなそぶりはなく振る舞われてる、それにも自分は気付いてない、なんてことはあるかもしれないなあ。 改めて考えると気持ち悪いけど、でも逆もあるか。 一番最後のだけ、他の話との絡みがなかった。 何作目だろう。東南アジアの一角で放浪してる。 いつかの誰かかもしれないと思いながら読んだが、誰でもなかったようだった。 涼しい日に読んだから大丈夫だったが、暑い日に読んだらだるくなりそうな話だった。
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ある町に住む住人たちの日常。 誰もが抱えている不安や欠如。 自分にとってはとても大変な事も、傍から見たら何て事は無いのかもと思わせる。
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この人の本は短編よりも長編が好きかも。 当たり前だけど、人の価値観っていろいろあるんだよなあ、と改めて感じた。
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ある町にすみ人たちの日常を描いた短編集。 みんな普通に見えて、本当は普通じゃない部分もたくさんある。 なんだかわからないけど、この本に出てくるコロッケがすごく食べてみたくなった。
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とある町で暮らす人々に焦点を当てた連作短編集。 角田さんは、こういう「自分でも何故だかわからないけれど空回りして思うように生きられず、痛みを抱えながら、でもその悶々とした思いを吐き出すこともできずにいる」という人を描くのがうまい。 救いやカタルシスが用意されているわけではないの...
とある町で暮らす人々に焦点を当てた連作短編集。 角田さんは、こういう「自分でも何故だかわからないけれど空回りして思うように生きられず、痛みを抱えながら、でもその悶々とした思いを吐き出すこともできずにいる」という人を描くのがうまい。 救いやカタルシスが用意されているわけではないので、読後感がいい訳では決してない。 ただ、境遇の全く違う登場人物であっても、自分でも気づいていなかった胸の奥の部分をギュッと掴まれたような、見て見ぬふりをしていた自分自身の奥底を見せつけられたような気分に、毎回させられてしまうあたりは、さすが角田さんと言わざるを得ないのでしょうね。 一番印象に残ったのは、花屋の男の子のお話「秋のひまわり」かな。切なくて、泣けた。
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10話の連作短篇形式。 「ありふれた町」に住む、深くは関わりのない人たちが感じる“不足感”“喪失感”“虚無感”などを表現しているのかな? 何の為に本を読む?楽しむため!っていう私には読者を楽しませる気がない小説家で損した感じ。
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