売買春と女性 の商品レビュー
『歓楽の墓』(1925年、文化生活研究会)のほか、遊郭・娼妓の実態を記して苦界に身を落とす女性たちの境遇の改善に向けて提言をおこなっている文章14編を収録しています。 『歓楽の墓』は、著者自身のお茶屋通いの体験を、悔恨の念をもって記した「懺悔録」でもあり、また当時の遊郭や娼妓た...
『歓楽の墓』(1925年、文化生活研究会)のほか、遊郭・娼妓の実態を記して苦界に身を落とす女性たちの境遇の改善に向けて提言をおこなっている文章14編を収録しています。 『歓楽の墓』は、著者自身のお茶屋通いの体験を、悔恨の念をもって記した「懺悔録」でもあり、また当時の遊郭や娼妓たちの実態を記した「報告書」でもあります。学生時代には、周囲の男子学生よりも女性に対して奥手であった著者が、遊郭での初体験で厳密をあじわい、その反動として芸妓たちとのお茶屋遊びにのめり込んでいったプロセスが、赤裸々に語られています。 他の文章では、娼妓たちの苦しみをジャーナリストの視線で鋭くえがき出し、彼女たちをそうした状況に陥れた社会への批判が展開されています。著者の批判は、マルクス主義的な発想にもとづいて、富をもつ者たちによる女性の占有という点にその焦点が絞り込まれていくような行論になっており、現代的な観点から見ると限界もあるように思われますが、当時の廃娼論の具体的な例を示すものとして、興味深く読むことができました。
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