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ペスト の商品レビュー

3.8

338件のお客様レビュー

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    79

  2. 4つ

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  3. 3つ

    83

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    19

  5. 1つ

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2020/11/22

カミュの小説というと、これと『異邦人』がまず上がるところだと思う。コロナ禍でこの小説が話題になる前にそちらは読んでいて、ずいぶんと解釈に苦労したことを覚えている。 話題になった通り、確かにペストが猛威を振るう描写は今の現実に近しいところが多々ある。それは感染の拡大に戸惑う市民で...

カミュの小説というと、これと『異邦人』がまず上がるところだと思う。コロナ禍でこの小説が話題になる前にそちらは読んでいて、ずいぶんと解釈に苦労したことを覚えている。 話題になった通り、確かにペストが猛威を振るう描写は今の現実に近しいところが多々ある。それは感染の拡大に戸惑う市民であったり、治療に当たる医師たちの姿であったりする。しかし、この小説を通じてカミュが書きたかったのは、パンデミックそのものよりもペストがもたらした不条理な現実に対し、登場人物たちがどう相対していくかにある。その主題に対し、様々な人物がそれぞれの立場から答えを出すが、その過程や議論が読みこみがいのある作品だと思った。「不条理」というのは異邦人でも共通していた観点だが、あちらの主人公であるムルソーは理解が容易でないのに対し、こちらで主に行動が描写される登場人物たちは、動機や行動原理がはっきりしているし、特に離別した愛人に再開するために行動していたアルベールが、「しかし、自分一人が幸福になるということは、恥ずべきことかもしれないんです」と言って町に残るくだりなど共感しやすいところも多くあり、とっつきやすいと思った。個人的には、ペストと戦う唯一の方法は誠実さであり、つまり自分の意志としての職務を果たすことだと発言したリウーに共感するところが多かった。逆にこちらでカミュを知った人には、『異邦人』を読んでみると別の発見があるのではないだろうか。

Posted byブクログ

2020/11/17

中学生の頃、父から「成績優秀な息子が、検事である父親が被告人に死刑を求刑するところを見てからグレてしまった」みたいな話を聞いた。 ...出どころはこれだったか。 たしか「ペストは社会悪の象徴だ」という話も聞いて読み始めた記憶があるが、率直に言って面白くなく、途中で断念した。 い...

中学生の頃、父から「成績優秀な息子が、検事である父親が被告人に死刑を求刑するところを見てからグレてしまった」みたいな話を聞いた。 ...出どころはこれだったか。 たしか「ペストは社会悪の象徴だ」という話も聞いて読み始めた記憶があるが、率直に言って面白くなく、途中で断念した。 いい年になってから再挑戦してみたが、ドラマチックな展開があるわけでもなく、やはり面白くはない(後半盛り上がり?はある)。ただし、人間の精神性について高尚な文体(難解ではあるが)で語られており、ノーベル文学賞受賞もうなづける(というか村上春樹が受賞すると思っている人たちって...)。 タルーの「人が人を殺すことは赦されない」という左翼思想は好きにはなれないが、ペストと戦った姿勢は尊敬に値する(口先で体制を悪だと非難しつつ、その体制の恩恵を享受して安全なところから批判だけを垂れ流す日本のサヨク・リベラル共となんと違うことか)。 グランの献身も、ランベールの転向も、コタールの愚行も、決してヒロイックではない人間のありのままの姿として共感させられた。 連載中のWebコミック版も読みたくなった。

Posted byブクログ

2020/11/08

封鎖された街での大衆心理、個々人の行動、心理が細かく描写されている。ペストが流行してから収束するまでの道筋は、まさに今のコロナ時代を辿っているような気分になる。今こそ読むべき一冊。

Posted byブクログ

2020/10/25

社会を不安に陥れ、暮らしを経済を追い詰める伝染病に直面した時に人々がとる行動は、今も昔も驚くほど似ている。

Posted byブクログ

2020/10/17
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

独特の言い回しが非常に読みづらかった。複雑な言い回しに親和性の高いデキるオツムの方には美しく芸術的な文体に感じるそうだが、自分にはそうではなかった。描写の質感を多くの場面で捉えきれず、読み勧めるのに大変苦労した。 ペストという災厄の最中に、人々に駆け巡った感情と行動、どれも共感できるし立場や人生観によるものだから否定はできない。 新型コロナが蔓延する現在になぞらえる評価も多いが日本人の風土に合わないものもたくさんあり、そこは人種の違いを感じた。とはいえ国内でも地域差が顕著であり当然といえば当然。 あー疲れた。

Posted byブクログ

2020/10/11

現在のコロナ禍の状況で読むとあまりにも同じシチュエーションであることに驚く。 コロナ前であれば、自粛中にも関わらずバーやレストランで人が賑わっているシーンに違和感を感じたであろうが、そう出来ない人間というものが今ならすごく実感として理解が出来る。 リウーセリフに、ペストと戦う...

現在のコロナ禍の状況で読むとあまりにも同じシチュエーションであることに驚く。 コロナ前であれば、自粛中にも関わらずバーやレストランで人が賑わっているシーンに違和感を感じたであろうが、そう出来ない人間というものが今ならすごく実感として理解が出来る。 リウーセリフに、ペストと戦う唯一の方法は誠実さだとある。目の前の職務に誠実に取り組む。奇策や近道はない。全てにおいて誠実さこそ大事なのだと改めて感じた。 ペストを様々なものに置き換えることで、今の自分や世の中に当てはめることが出来る。今はコロナが一番わかりやすいが、戦争や天災でも同様。身近な会社や学校でも当てはめられそうだ。 身の回りの不条理に対しどう対処するのか。誠実さか。

Posted byブクログ

2020/10/03

原文そのまま翻訳しました的な文章で読みにくいことこのうえなし。ただお役人の姿勢や、それぞれの立場で惑う人たちの行動が、コロナ禍にも相通ずるところがあり、技術革新だ、医療の進歩だと叫ばれて久しい現代においても、人智の及ばないことは起きるし、逆に人は人によって生かされるとも感じた。主...

原文そのまま翻訳しました的な文章で読みにくいことこのうえなし。ただお役人の姿勢や、それぞれの立場で惑う人たちの行動が、コロナ禍にも相通ずるところがあり、技術革新だ、医療の進歩だと叫ばれて久しい現代においても、人智の及ばないことは起きるし、逆に人は人によって生かされるとも感じた。主人公の医師リウーの感情がほとんど語られず、たまたまこの地を訪れていて封鎖の憂き目に遭う新聞記者ランベールや、下級役人グランの心情のほうがよほど伝わってくる。脇役の言動からリウーの心情を浮き立たせようという手法か。

Posted byブクログ

2020/09/28

人間は極限状態に陥ったとき、どう考えどう振る舞うのか。読みながら自分ならばどうなるか、そして、どうありたいかを考えざるを得なかった。貴重な体験だった。誠実でありたい。

Posted byブクログ

2020/09/27

新型コロナウイルスで起きている様相をペストでは余すところなく書かれている。まさに今の時代を予言しているかのようだ。ペストになって皆が混乱し絶望し根絶した結果、希望が湧いてくる。恐らくコロナ時代の過ごし方も同じになるという意味で歴史に学ぶところは多い。この瞬間からペストは我々全ての...

新型コロナウイルスで起きている様相をペストでは余すところなく書かれている。まさに今の時代を予言しているかのようだ。ペストになって皆が混乱し絶望し根絶した結果、希望が湧いてくる。恐らくコロナ時代の過ごし方も同じになるという意味で歴史に学ぶところは多い。この瞬間からペストは我々全ての者の事件となった、ペストは終わったこと、恐怖の支配した時代は過ぎ去った、人生の根源的な不条理をどう受け入れて付き合っていくのかその哲学的意義は奥深いと感じた。

Posted byブクログ

2020/09/26

前から気になっていたタイトルでしたがこのご時世でようやく読めました。難解な文章と内容にほとんど理解ができませんでしたが、見えない脅威に襲われる恐怖や不条理は伝わってきました。今読めて良かったです。

Posted byブクログ