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砂の器(下) の商品レビュー

3.8

178件のお客様レビュー

  1. 5つ

    40

  2. 4つ

    66

  3. 3つ

    52

  4. 2つ

    8

  5. 1つ

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2019/03/11
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

 来週の研究会に向け、久しぶりの再読。やはり映画版を見たあとだと、ずいぶん印象が違って感じられる。  なぜ清張は「名探偵」を登場させず、すぐれたカンの持ち主ではあるけれど決して頭脳明晰とは言えない刑事に事件を追跡させるのか? 捜査費のことを気にして、自分のポケットマネーで任意捜査を続けるような刑事や、善意からハンセン氏病の父を「保護」し、子と引き離して施設に送った被害者の人物像を丹念に描き出したのか?  ひとつには、清張自身の反エリート主義、「額に汗して働く人」の懸命な努力をこそ称揚したい、という問題意識があるのだろう(とくに小説版では、ヌーボー・グループの鼻持ちならないエリート臭が強調されている)。加えてもう一つ挙げるとすれば、この作品での清張が、刑事をあちこち移動させ、何度も何度も回り道をさせながら、事件解決への「執念」それ自体を描こうとしている点が重要だ。  そこで想起されるのが橋本忍の映画脚本である。原作ではほんとうに最後の最後で出て来るお遍路のシーンをピックアップし、和賀英良が弾くピアノ曲とあわせ、千代吉と秀夫の「道行」を抒情たっぷりに演出してみせた映画版は、清張の物語を変改しつつ、描かれた「時間」の長さをその人物の生の時間、複雑な感情が折り畳まれた時間と読み替えることで、視点を今西や三木から千代吉と秀夫に置き換えながら、作の問題意識を引き出し、読みかえてみせたことにある(映画版では、和賀は冷徹な殺人者とのみ描かれているわけではない)。まさにアダプテーションとして理想的な事例と言えるのかも知れない。

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2019/02/25

ラッキーハプニングだらけの捜査、事実から飛躍した推理、そして最後のトンデモトリック。松本清張氏の最高傑作として謳われるが出来はどうであろうか。

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2019/01/02
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

下巻も面白かったです。ぐいぐい読みました。 紹介してくれた先輩の通りの犯人でしたが、この情報から犯人に行き着くなんてやっぱりすごい…となりました。 悪いことは出来ないですね、必ず何処かで綻びが出て、逃げ切るなんて出来ないです。フィクションですが、そう思いました。 ハンセン病もこう繋がってくるのかー。そして自然死に見せ掛けた他殺。 読みごたえありました。 途中、近所出身の人が出て驚きましたが、よく考えたら松本清張は同じ県民でした。松本清張記念館も行ったことあります。松本清張作品、もっと読みたいです。

Posted byブクログ

2018/10/27

結論としては、これはそんな歴代ミステリの名作、って程の作品じゃない。上巻で乱発されたこじつけも、さすがに出し尽くした感じで、下巻では殆ど気にならない程度。で、前半(下巻の)は謎解きに奔走する刑事の推理がメインで、本作中で一番楽しめる箇所。ただ、たどり着いた結論がまたズッコケで、そ...

結論としては、これはそんな歴代ミステリの名作、って程の作品じゃない。上巻で乱発されたこじつけも、さすがに出し尽くした感じで、下巻では殆ど気にならない程度。で、前半(下巻の)は謎解きに奔走する刑事の推理がメインで、本作中で一番楽しめる箇所。ただ、たどり着いた結論がまたズッコケで、それだったら呪術とかの方がまだマシだったんじゃないかとすら思っちった。文章の端正さは流石で、会話文も含め、すらすら読み通せるリーダビリティの高さは評価できるけど、物語そのものはいまひとつかも。

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2018/06/27
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

2004年のドラマを見ていたので、原作はどのように描かれているのか期待して読みましたが、かなり内容が変えられていたのですね。 「カメダ」の件は面白かったですが電子音の話はあまりピンと来ず、確かな証拠もないまま犯人にたどり着いた気がして松本清張の代表作だと思っていたのでその割には・・・でした。 いろんな出来事がうまく繋がり過ぎていて逆に疑問です。 (今西はなぜ本浦親子に目を付けたのか?とか) 和賀と父親、三木との関係性も手紙の説明だけで終わっていて物足りなかったです(予定を変えてまで会いに行きたくなる存在?と思ってしまう)。 と、いろいろ書きましたが、戸籍の再生とか戦後の昭和が色濃く残っている貴重な小説だと思います。

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2018/04/24

この作品を読んで一番印象的だったのは、主人公今西栄太郎刑事の事件解明に対する執念である。自分の休暇を使って、自費で遠方まで調査に出掛ける仕事中毒ぶりが描かれている。ちょっとした事柄から、事件の鍵になりそうなことを次々と思いつき、遠方まで出張したりするが、それがことごとく空振りに終...

この作品を読んで一番印象的だったのは、主人公今西栄太郎刑事の事件解明に対する執念である。自分の休暇を使って、自費で遠方まで調査に出掛ける仕事中毒ぶりが描かれている。ちょっとした事柄から、事件の鍵になりそうなことを次々と思いつき、遠方まで出張したりするが、それがことごとく空振りに終わっている。何度も挫折を味わいながら、あきらめずにとことん突き詰めていき、真相にたどり着くまでの長い道のりは読み応えがある。所轄の蒲田署の担当刑事である吉村との友情も作品を味わい深いものにしている。 今西刑事の執念の捜査を描いた警察小説の比重の大きい作品と感じたが、事件の背景には、現代でも問題になっているらい病のことや、戸籍制度の闇の部分など、社会派推理小説としての問題点の指摘もある。 さらに、現実的に可能かどうか、疑問を感じる部分もあるが、前例のない特殊な殺人方法が示されている点にも興味を引いた。 しかしながら、列車から線路に白いものを撒く女の記事から血の付いた衣服の処分を連想したり、近くのアパートに住んでいる自殺した女を列車の女と結び付けたり、押し売り撃退の話とトリックとを結び付けたりなど、ちょっと無理がある、強引ではと感じる箇所もあった。

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2018/04/02

40数年ぶりの再読。大人でないと正しく理解できない内容が多く、ずいぶん背伸びをしていたものだなと思う。 善良この上ない元巡査を殺害した犯人は誰か?そして前衛劇団の俳優と女事務員殺しの犯人は?今西刑事は東北地方の聞込み先で見かけた“ヌーボー・グループ”なる新進芸術家たちの動静を興...

40数年ぶりの再読。大人でないと正しく理解できない内容が多く、ずいぶん背伸びをしていたものだなと思う。 善良この上ない元巡査を殺害した犯人は誰か?そして前衛劇団の俳優と女事務員殺しの犯人は?今西刑事は東北地方の聞込み先で見かけた“ヌーボー・グループ”なる新進芸術家たちの動静を興味半分で見守るうちに断片的な事実が次第に脈絡を持ち始めたことに気付く…新進芸術家として栄光の座につこうとする青年の暗い過去を追う刑事の艱難辛苦を描く本格的推理長編である。

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2017/11/11

最後まで違う人物を犯人と思って読み進めていた。当事の時代背景、社会問題を取り混ぜている作品。 最後に一気に謎解きをしている印象。犯行方法等も斬新。全体としてやや冗長なきらいもあり、それが難点かな。

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2017/08/02

おもしろかった。 トリックは、東野圭吾ばりだった。 むしろ、このへんの元祖は松本清張なのだろうか。 最後がわりとあっさりだったのが、ちょっと惜しかった。

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2017/07/02

松本清張さんの文章表現がとても美しい。 映像化が何度もされている作品ですが、原作の文章の美しさも評価されるべき作品であると感じました。 昭和のはじめ〜30年ごろを舞台とした作品のため、現在とはかなり時代背景が異なります。ですが、読みやすい文章であり、元々の作品の面白さ、構成が素晴...

松本清張さんの文章表現がとても美しい。 映像化が何度もされている作品ですが、原作の文章の美しさも評価されるべき作品であると感じました。 昭和のはじめ〜30年ごろを舞台とした作品のため、現在とはかなり時代背景が異なります。ですが、読みやすい文章であり、元々の作品の面白さ、構成が素晴らしいこともあり、違和感なく読むことができました。 後半はじりじりと真相に迫る、少しもどかしさを感じる展開に感じましたが、現代でも十分に通用する素晴らしい作品であることに、作者には尊敬の想いが尽きません。 メールやパソコンで問い合わせや情報照会ができない時代、手紙の言葉がまた、堅くて美しい日本語。そういった面が、現代において新鮮に感じられることと思います。

Posted byブクログ