砂の器(下) の商品レビュー
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この本を読んで初めて、かつて癩病と呼ばれた病気があり、その患者が差別を受けていたと知った。出版から60年経った今でも、この作品は癩病差別の現実を伝え続けている。それは小説としてものすごい功績である。 今西刑事の推理には時々納得できなかったが、彼のひたむきな努力にはとても心惹かれた。終盤、犯人の家を訪れるシーンでは、自分の鼓動が耳で聞こえるほど緊張した。
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ドラマ化や映画化されている小説なので読んでみました。超音波での殺人は今となってはとんでもトリックだし、戦争の際に戸籍が空襲で焼けたことによる名前の変更など現代ではなかなか成立しない話が沢山あります。また読んでいて唐突だったのが元浦千代吉が出てきたところ。繰り返し読みましたが、全くわかりませんでした。
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ジェンダーフリーとか色々言われているけれど、いろんな意味で少しずつ時代は多様化を容認する形に変わってきていると実感した作品でした。 犯罪捜査だって、防犯カメラとか科学的な捜査とかでこの小説の時代とは全然違うし…。 良くも悪くも社会は変わっていくのだな。 この犯人は親が世間で忌み...
ジェンダーフリーとか色々言われているけれど、いろんな意味で少しずつ時代は多様化を容認する形に変わってきていると実感した作品でした。 犯罪捜査だって、防犯カメラとか科学的な捜査とかでこの小説の時代とは全然違うし…。 良くも悪くも社会は変わっていくのだな。 この犯人は親が世間で忌み嫌われた病であるという自分ではどうしようもないことで犯罪に手を染めてしまう。 今の世だって親や兄弟が犯罪者というだけで苦労する人もいるし、犯人の婚約者のように親の地位が高いことで苦労なく生きていく人もいる。 社会って平等じゃないよな…とも感じたお話でした。
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「砂の器」を読んだのは、多分中学の夏休み。 静岡の従兄弟の家で、その一部を読んだ記憶があるから、今頃の夏休みの頃だろう。 横溝正史に夢中になりながら、その解説で取り上げられる外国のミステリー作家の名前を覚えたり、国内の他の推理作家に少し興味を持ち始めていたのだと思う。 今回、読み返してみて、一番驚いたのは、自分の記憶力。 全くと言って良いほど、覚えていなかった。 もちろん、犯人は覚えていたが、ストーリーでは、冒頭の殺人のシーンと、若い女が電車の窓から切り刻んだシャツを捨てるシーン、それと何故か方言に関する専門書の記述の箇所。 それ以外は、まるで初めて読んだ作品のように読んだ。 確か、二度くらいテレビやDVDで映画も見た筈なのだが。 これを中学生で読んで、完全に面白いとは思えなかっただろう。 やはり、当たり前だが、読書にも個人差があり、当時は早過ぎたので、あまり夢中にならなかったのだと思う。 僕は、負け惜しみのようだが、若い頃の読書ばかり勧めるのは、どうなのだろうかと、最近思い始めた。 もちろん、活字離れと言われて久しいし、寂しいことだが、若い頃読んだ本をもう一度、或いは二度、三度読むということの方が大事だと思い始めたのだ。 この作品で、癩病のことを知り、後に北条民雄の「いのちの初夜」を読んだ。 癩病のことを知らなければ、手に取らなかったかもしれない。 超音波を使った殺人や、「亀田」と「亀嵩」の誤解、映画館での真相にたどり着くまでの経緯など、今読んでも面白いが、終わりの方が、何となく駆け足のように思えた。
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犯人は絶対に関川だと思ってたので見事に騙された、、! 映画館の写真から犯人を結びつけたのはちょっと強引かなと、、そこがちょっと残念。 ただ、自然死に見せかけて殺害した方法や、戸籍改竄は素直にすごいと思った。 空襲で元の戸籍が焼けてしまったから、というのもその時代ならでは。 原作を読んだ後に映画も見た。 映画では和賀の過去が詳しく描かれており、原作でももっとその部分があればよかったなーと思う。 和賀のパーソナルな部分が見えないからこそ、関川が犯人のように見える仕組みなんだろうけど。 関川は関川でとんでもない奴。
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友達が持っていたので、借りて読んだ。最初の事件での方言を頼りに捜査するところから、謎が徐々に解けていき、非常に読みやすい作品だった。
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トリックの精緻さ、捜査の進展の自然さ、謎解きの瞬間の快感、といった推理小説において一般的に求められる点において本作が特段優れているとは思いません。 しかし、私は間違いなく傑作だと思います。 一つの殺人事件の捜査という流れの中で、当時の社会の情勢、負の部分を、裏付けのある事実と淡...
トリックの精緻さ、捜査の進展の自然さ、謎解きの瞬間の快感、といった推理小説において一般的に求められる点において本作が特段優れているとは思いません。 しかし、私は間違いなく傑作だと思います。 一つの殺人事件の捜査という流れの中で、当時の社会の情勢、負の部分を、裏付けのある事実と淡々とした筆致によって克明に描き出し、終始リアリティーと重々しさのある世界観に読者を没頭させます。これは、筆力のみならず、幅広い博学知識と社会を冷静に鋭く評価できる洞察力、そして労を厭わない取材力がなければなせない技だと思います。 また、ハンセン病、戦争被害といった社会問題が当時どのような意味を持っていたのかということを考える上でも非常に参考になる作品でもあります。
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最後のトリックは少し意外なものでしたが、昭和の時代背景も読み取れる話で、するすると読むことができました。
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方言・思想・映画等、入念に調べたうえでプロット構成されている。東京から秋田、島根、大阪など、広域にまたがって物語が展開していくため、自分も主人公といっしょに出張している気分になった。 残念ながら、個人的には苦手な文体・表現方法だった。物語のキーとなる人物の背景に、作者の影がちらり...
方言・思想・映画等、入念に調べたうえでプロット構成されている。東京から秋田、島根、大阪など、広域にまたがって物語が展開していくため、自分も主人公といっしょに出張している気分になった。 残念ながら、個人的には苦手な文体・表現方法だった。物語のキーとなる人物の背景に、作者の影がちらりとみえてしまう。関係者の心情の揺れ動きなどはほとんど描写されず、謎解きに特化していた。(推理小説だから当たり前かもしれないが・・・。) 作品が書かれた時代が、自分が生きたことのない時代であったため、感覚的につかみづらい場面も。例えば、お金の価値や、通信に要する時間、大家さんの家にお茶に呼ばれることなど…。時代が異なれば、事件の展開スピードや転機となる行動、人のふるまい方なども異なることを体感した。
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昭和の社会問題を背景に描く松本清張ミステリー。「砂の器」は、病気、戦争を背景にした作品。主人公の刑事が真面目に一歩ずつ犯人を追い詰めていく展開に、頁をめくる手が止まりませんでした。
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