人はなぜ逃げおくれるのか の商品レビュー
洪水を経験した人は、洪水には対処できるが、津波には対処できない。 自分の目で災害をみないと、警報があってもそれを過小評価してしまう。 この本は、阪神大震災の九年後に書かれている。 このため、東日本大震災でまのあたりにしたような、津波被害に対する避難態度というのは、書かれていない。...
洪水を経験した人は、洪水には対処できるが、津波には対処できない。 自分の目で災害をみないと、警報があってもそれを過小評価してしまう。 この本は、阪神大震災の九年後に書かれている。 このため、東日本大震災でまのあたりにしたような、津波被害に対する避難態度というのは、書かれていない。 しかし、冒頭で書いてあるように、人は、自分が実際に経験したことでないと、きちんと状況を把握できない。 だから、過小評価してしまい、結果的に逃げ遅れが発生してしまう。 一つの災害からは学ぶものがたくさんあり、次に類似した災害時にそれを生かさなければならない。 でも、東日本大震災から一年半たった今、被災地以外の人々があの経験から学んだことを今も実感として保っているか?と言ったら、保っていないと思わざるを得ない気がする。 災害は予見することが難しい。まして、自然災害は人間の力が及ぶものではない。 だとしたら、過去の経験を生かして、いかに生き延びるか?を考え、対策する必要があると思う。 生き延びると一言でいっても、生き残ったことを悔やむ生き残りではなく、サバイバーとして生きていける世の中でないといけないんだなーと思った。 あと、生き残るには、「冷静な判断力」「生き残るんだ!という精神力」が必要だと、あらためて思った。
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明石の歩道橋事故、警備を担当した株式会社ニシカンの”茶髪の男が暴れた”という責任回避のウソ、これを思い出した。 洞爺丸の遭難で、首まで水につかっている状態のときに、このまま沈んでいけばあの窓に手が届く、それまでここを動くなよ、と冷静に自分に言い聞かせて生き延びた人などの事例を読ん...
明石の歩道橋事故、警備を担当した株式会社ニシカンの”茶髪の男が暴れた”という責任回避のウソ、これを思い出した。 洞爺丸の遭難で、首まで水につかっている状態のときに、このまま沈んでいけばあの窓に手が届く、それまでここを動くなよ、と冷静に自分に言い聞かせて生き延びた人などの事例を読んで行くと、生き延びるためには冷静な判断、そして自分は生きるという強い意志力の2点が必要なことを、改めて実感した。
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●:引用 ●たとえば、洪水の被害経験をもつ場合には、洪水については、ある程度の自信をもって切り抜けることができる。だが、津波や地震に出会った場合には、洪水の被災経験は役に立たない。また、同じ洪水の場合でも、それまでに経験した規模もタイプもいちじるしく異なる洪水に巻きこまれた時に...
●:引用 ●たとえば、洪水の被害経験をもつ場合には、洪水については、ある程度の自信をもって切り抜けることができる。だが、津波や地震に出会った場合には、洪水の被災経験は役に立たない。また、同じ洪水の場合でも、それまでに経験した規模もタイプもいちじるしく異なる洪水に巻きこまれた時には、先行経験は役に立たないばかりか、時に、被害を過小評価させてしまう要因ともなる。また過去に、避難指示に従って避難したが、実際の被害はその必要がないほど軽微であった場合には、(略)次の災害に遭遇した時に、避難行動を遅らせたり阻害したりする要因となる。災害経験があるということは、避難行動を起こすうえで、いつもプラスに働くとは限らないのである。ただ、ここで言えることは、過去に大きな災害を経験している場合には、一般に、避難行動は積極的に実行されるということである。避難の有効性を体得する機会が多いからである。 ●災害の悲惨な結果を予防するために、警報は重要な機能を果たしている。避難も救援活動も警報の伝達をまって開始される。したがって、警報発令と防災行動の完了との時間的なズレを考えると、できるだけ早期に警報をだすことがのぞましい。ただ、恐れなければならにのは、時間をかせごうとするために、外れの多い警報が乱発されることである。「オオカミ少年現象」を起こさないためにも、空振りはできるだけさけなければならない。たとえ、一二度の空振りは許されても、三振してアウトになってはいけないのである。ひとつの悲劇的事例を、1982年7月の長崎水害に見ることができる。 ●人びとは警報を受け取っても、自分たちに危険が迫っていることをなかなか信じようとはしない。そのため、直前の警報が外れたり、警報のメッセージに、少しでも曖昧なところや、矛盾したところがあったりすると、警報の信頼性に対して疑いの目を向ける傾向がある。正常性バイアスという私たちの心に内蔵されている機能は、もともとは、私たちが過度に何かに恐れたり、不安にならないために働いているはずなのだが、時に、この機能は、私たちをリスクに対して鈍感にするというマイナスの役割をはたす。注意が必要である。(略)災害リスクに直面している人びとは、正確な情報を求めている。科学的にはここまでしかわからない、という専門家の説明や、危険の可能性があるので、防災行動を始めてくれという、防災行政担当者の説明に対しては、私たちは謙虚で聞く耳をもっている。防災担当者が心すべき鉄則は、まず、防災については素人である一般市民に正直であれ、ということだ。この原則が確実に実行される場合には、正常性バイアスにおちいる心配はない。 ●災害は、被災社会システムをリスクの大きい、それ自体の浮沈がかかった重要な意思決定の場面に直面させる。被災の程度や被災社会システムの活力、外部環境社会からの援助の質と量が、災害復興の最も重要な要素であることは間違いない。だが、もうひとつの重要な用件がある。それは迅速かつ適切な意思決定を行う、優れたリーダーの存在である。リスボン大地震の際のボンバルや、ロンドン大火後の復興計画を策定したレンのような卓越した人物の存在が、災害復興の最終的な成果を決める重要な鍵になると言ってよいだろう。
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(2012.06.28読了)(2012.06.22借入) 【東日本大震災関連・その95】 この本は、2011年の東日本大震災よりだいぶ前に書かれた本なので、地震や津波に特化して書かれた本ではありません。そういう意味では、地震や津波について知りたかった人には、物足りない面があるかと...
(2012.06.28読了)(2012.06.22借入) 【東日本大震災関連・その95】 この本は、2011年の東日本大震災よりだいぶ前に書かれた本なので、地震や津波に特化して書かれた本ではありません。そういう意味では、地震や津波について知りたかった人には、物足りない面があるかと思います。 そういう向きには、東日本大震災後に出版されたものの方がいいでしょう。 【目次】 プロローグ 古い「災害観」からの脱却を目指して 第1章 災害と人間 第2章 災害被害を左右するもの 第3章 危険の予知と災害被害の相関 第4章 「パニック」という神話 第5章 生きのびるための条件 第6章 災害現場で働く善意の力 第7章 復活への道筋 エピローグ 「天」と「人為」の狭間に生きる人間として 参考文献 ●異常や危険に鈍感(11頁) 私たちの心は、予期せぬ異常や危険に対して、ある程度、鈍感にできているのだ。 ある範囲までの異常は、異常だと感じずに、正常の範囲内のものとして処理するようになっているのである。このような心のメカニズムを、〝正常性バイアス〟という。 災害心理学の観点からすると、人間はなかなか動こうとしない動物なのである。 ●パニックにならない(14頁) 地震や火事に巻き込まれても、多くの人びとはパニックにならない。 異常行動としてのパニックは、多くの災害や事故ではあまり起こらないのである。 ●津波の経験(77頁) 津波を経験したことのない地域を津波が襲った場合には、大きな悲劇が待っている。地震のあとには津波の危険があることをイメージできない人々は、避難しようとしない。 ●危険の過小評価(84頁) かりに危険を感じたからといって、直ちに避難行動を始めるわけではない。その次には、危険の大きさを評価する段階がくるのである。なかには危険を過大にとらえる人びともいるが、一般には、危険は、実際よりも過小に評価される傾向がある。そのために、多くの災害では、避難勧告や避難指示が出されても、それに従って避難する人びとは少ない。 ●幼い子供と老人(89頁) 幼い子供がいる家族では、避難行動は早めに始まる傾向があり、老人や病人のいる家族では遅れる傾向がある。このため、後者への支援がより重要になる。 ●パニックを恐れるあまり(130頁) パニックを恐れるあまり、危険の大きさを緩和して伝えたため、事の重大さが伝わらず、そのために、多くの人びとの死傷を避けることができなかった。 ●パニック発生の条件(140頁) 第一の条件は、緊迫した状況に置かれているという意識が、人びとの間に共有されていて、多くの人びとが、差し迫った脅威を感じている、ということである。 第二の条件は、危険をのがれる方法がある、と信じられることだ。 第三の条件は、脱出は可能だという思いはあるが、安全は、保障されていない、という強い不安感があることだ。 第四の条件は、人びとの間で相互のコミュニケーションが、正常には成り立たなくなってしまうことである。 ●パニックを防ぐには(146頁) パニックによる死傷者を出さないためには、すでに述べた四つの条件のうちの、いくつかが成り立たないようにすればよい。 ●サバイバー(153頁) 生存者を、災害を生きのびたサバイバーととらえるか、被災者ととらえるかの違いは、あたかもグラスにビールが半分ほどになった時に、まだ半分あると考えるか、もう半分しかないと考えるかのちがいに似て、生存者の人生に、生き方の上で大きな差異を生み出す。 ●老齢者ほどきつい(155頁) 災害は、被災した人々の生活環境を激変させるが、激変した環境に適応できる人々と、適応できない人々を、選別して分離する。阪神大震災を見ても、関連死を含めた死者全体の半数以上が60歳以上の人びとで、この震災は老人の災害という側面を持っている。震災後の経済的・社会的ストレスも老齢者ほど重いのである。 ●生き残りの条件(171頁) 生きたいと強く希望することは、生き残りのための十分条件ではない。生きたいと強く願えば、必ず生き残れるというものではない。けれども、生きたいと欲し、決して諦めないことは、生き残りのための必要条件である。 ●被害の不平等(191頁) 広島で被爆して生き残った人々の中に、「もう一度ピカが落ちて、みなが同じようになればよい……」と語った人がいる。 ●関東大震災後(200頁) 1923年の関東大震災以前の東京は、政治や文化の中心ではあったが、経済や商業に関しては、大阪の実力は、東京とほぼ肩を並べていたのである。しかし、震災復興の過程で、東京の都市機能が格段に整備されたために、復興後の東京は、文字通り日本における政治・経済・文化の中枢として発展することになった。 (2012年7月4日・記)
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ヒトは危険に対してある程度鈍感に出来ているので、異常を過小評価しがち。周りに「じっとしてて下さい」などと言われても、自分で災害の驚異をしっかりイメージして自ら行動することが大事だそうです。 そんなこと言われてもなぁ・・・とは思いますが、注意喚起のため日頃から目を通しておきたい一冊...
ヒトは危険に対してある程度鈍感に出来ているので、異常を過小評価しがち。周りに「じっとしてて下さい」などと言われても、自分で災害の驚異をしっかりイメージして自ら行動することが大事だそうです。 そんなこと言われてもなぁ・・・とは思いますが、注意喚起のため日頃から目を通しておきたい一冊。 日本語にはサバイバーに相当する言葉がない、という話も印象的でした。日本では生き残った人は被災者とよばれてしまうために、素直に生き延びたことを喜べる社会風土が作られにくいそうです。まずは被災者を罪悪感から解放し自分をサバイバーと感じられることが災害から立ち直るためには大切、と。目から鱗。 「急速に成長しつつあるコミュニティは被災しても急速に復興するが、変化せず停滞しているか、下り坂にあるコミュニティは、被災後にきわめてゆっくりと復旧するか急激に衰えていく」んだそうです。 ひぃ、今の日本はどっち?!でもこれで自然にダウンサイジングしていけばちょうどいいか?
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韓国で起きた地下鉄火災事故の模様は今も生々しく記憶に残っている。 「災害に遭遇した時、身をまもるために素早く行動できる人間は驚くほど少ない。現代人は安全に慣れてしまった結果、知らず知らずのうちに危険に対して鈍感になり、予期せぬ事態に対処できなくなっている。」 著者は、...
韓国で起きた地下鉄火災事故の模様は今も生々しく記憶に残っている。 「災害に遭遇した時、身をまもるために素早く行動できる人間は驚くほど少ない。現代人は安全に慣れてしまった結果、知らず知らずのうちに危険に対して鈍感になり、予期せぬ事態に対処できなくなっている。」 著者は、災害時における人間の行動が意外にもスローテンポであることを韓国での事故を一例に私たちに紹介している。避難訓練などで「落ち着いて。大丈夫ですよ。」という言葉が最悪の事態を引き起こす可能性もあるのだ。 冷静な行動ということ、経験ということ、私たちが普段定説と信じていることが災害心理学の目を通すと逆説的な場合があることを知った。東日本大震災から多くの子どもたちを訓練によって救った言葉は「想定を信じるな。」「津波てんでんこ(それぞれが一目散に逃げろ)」だったことを思い出した。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
「正常性バイアスのせい」自然災害の場合、警報などの緊急情報の曖昧さ・不明瞭さが被災リスクを高める。防災担当者や専門家は一般市民に対し、現段階において科学的に分かっていることと不明なとこを正直に明快に伝えることで、正常性バイアス(身に迫る危険を危険として捉えることを妨げさせて、それを回避するタイミングを奪う)に陥いらせないようにさせる必要がある。エキスパート・エラーが生じている場合もあるので、結局は個人のタイムリーを判断する知性と行動する勇気が求められる。
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■避難 1.避難行動には模倣性と感染性が見られる。隣人や知り合いなどが避難すると、つられて避難する。 2.パニックとは各個人が自分自身の安全を脅かす事態をさけようとし、他者の安全を無視して行う、非合理かつ無秩序な行動の集積である。 3.パニックはほとんどおこらない。スケープゴート...
■避難 1.避難行動には模倣性と感染性が見られる。隣人や知り合いなどが避難すると、つられて避難する。 2.パニックとは各個人が自分自身の安全を脅かす事態をさけようとし、他者の安全を無視して行う、非合理かつ無秩序な行動の集積である。 3.パニックはほとんどおこらない。スケープゴートの材料にされている。
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地震・伝染病・テロ……現代社会を脅かす災害は枚挙にいとまがない。本書は、災害を乗り越えるために必要な事を、心理学を通して考察したものである。 まず災害が発生した場合の人間の心理状態を分析し、被害軽減のための諸条件を検討する。そして、災害が過ぎ去った後の、復興へ向かう道につい...
地震・伝染病・テロ……現代社会を脅かす災害は枚挙にいとまがない。本書は、災害を乗り越えるために必要な事を、心理学を通して考察したものである。 まず災害が発生した場合の人間の心理状態を分析し、被害軽減のための諸条件を検討する。そして、災害が過ぎ去った後の、復興へ向かう道についても言及している。 災害時の人間心理を中心に据えながらも、災害後の行動や災害と社会の関係性など、災害と人間について広く考察がなされており、災害について考える入門書として位置づけられる。特に、主に終盤にかけて述べられている筆者の災害観は、東日本大震災を経験した今こそ強く心に響くものである。 「心理学」と題されてはいるが、学問的に突っ込んだ内容は少ない。また、理論の根拠代わりに事例を頻繁に用いていたり、論の展開が曖昧な部分も多いなど、厳密に読もうとすると引っかかる所がある。 しかし、実際に発生した災害の事例が数多く詳細に紹介されており、読み物としては面白い。難解な内容も特にないため、新書らしく誰にとっても読みやすいと言える。
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災害時ほとんどの場合、人はパニックにならない。その場の雰囲気に流されず、冷静な判断をすることで生き残れる。その際、1時間後に生き残る可能性を高めるために今リスクを取ることも時には必要。 災害は社会の新陳代謝を早める。優れたリーダーシップで思い切った改革をするべき。 今の日本はどう...
災害時ほとんどの場合、人はパニックにならない。その場の雰囲気に流されず、冷静な判断をすることで生き残れる。その際、1時間後に生き残る可能性を高めるために今リスクを取ることも時には必要。 災害は社会の新陳代謝を早める。優れたリーダーシップで思い切った改革をするべき。 今の日本はどうか。
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