わたしのおじさん の商品レビュー
こんな死生観は初めてだった。 誕生と死が同じ系譜上にいる同等のものとして描かれている。なんか素敵。 植田真の絵は白色の分量が多く、薄ぼんやりとした色合いやだだっ広い構図から、どこか寂寞とした印象を残す。好き。
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18、9歳あたりで読んだ頃の感覚はまったく思い起こすことができなかった。当時何にあんなにも反応したのか、もしかしたら、7年ほど前の自分のほうがこの本の「いい読者」だったのではないだろうかと思ったりして、だけど、ぼくは読み手として成長などしていないし後退しているという表現もふさわし...
18、9歳あたりで読んだ頃の感覚はまったく思い起こすことができなかった。当時何にあんなにも反応したのか、もしかしたら、7年ほど前の自分のほうがこの本の「いい読者」だったのではないだろうかと思ったりして、だけど、ぼくは読み手として成長などしていないし後退しているという表現もふさわしくないと思っていたいから、思い直したくて、同じタイトルと内容のこの一冊の本を、時を挟んで二度手にとって読んだに過ぎない一人の読者であるということだけがわかり、ずいぶんと間抜けな読後感だった。 しかし、本当に、当時手にとったものと今回手にとったものは、本当に同じなのだろうか、と、この本に限らず再読したものの多くに似たような感覚をもつ。本当に、そこに書かれていることは、動かずに次に開かれるのを待ってくれていたりするのだろうか。 その答えは結局、タイミングとか年齢によってとか何を言っても全体的に嘘で、書いたり読んだりしたら何かが終わるのだということをこれからもっともっと思い知りながら、捨てて、捨てて、それらを尊ぶのだと思う。 一冊の本に作家がそそいだものは読者にはほとんど触れることはできない。前回のような読みとり方や今回のような読みとり方が一人の読み手のなかで行われるということは、やはりとても心強いことなのだろう。
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「霧の中で、わたしは洗われ、研がれてゆく。そしてゼロに近づいてゆく。でも、ゼロじゃない。」 湯本さんの不思議ワールド。 どこか遠い異国のような気がして、どこか全くここではない世界のような気がして。 初めて出会うけど初めてじゃない人と出会って。 マイナスではないけど、ゼロに近付い...
「霧の中で、わたしは洗われ、研がれてゆく。そしてゼロに近づいてゆく。でも、ゼロじゃない。」 湯本さんの不思議ワールド。 どこか遠い異国のような気がして、どこか全くここではない世界のような気がして。 初めて出会うけど初めてじゃない人と出会って。 マイナスではないけど、ゼロに近付いて、プラスじゃないけど、ゼロから遠のいていく。 ゼロの場所が何なのか。わかるけれど、遠い気もした。
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図書館で見つけた本、絵本といっていいのかな。湯本香樹実さんの本を読んだのは、はじめて。『夏の庭』だったっけ、いつか読みたいなぁと思っている・・・『わたしのおじさん』これはクラクラしました。2度、読みました。最初、読んでワカラナイ事が、2度目は、ジワッ〜と味わえました。胎児の見る夢...
図書館で見つけた本、絵本といっていいのかな。湯本香樹実さんの本を読んだのは、はじめて。『夏の庭』だったっけ、いつか読みたいなぁと思っている・・・『わたしのおじさん』これはクラクラしました。2度、読みました。最初、読んでワカラナイ事が、2度目は、ジワッ〜と味わえました。胎児の見る夢?かな?カタクナッタ頭をほぐして、読むといいのかな・・・
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この作者にはよく「死」をサブテーマにした作品あります。 「夏の庭―The Friends」や「ポプラの秋」どちらも老人の「死」が絡んできます。 でもそれぞれちがう「死」であり、いろんな角度からそれそれ思いを馳せる事ができます。 この「わたしのおじさん」もそうでした。今までとは全然...
この作者にはよく「死」をサブテーマにした作品あります。 「夏の庭―The Friends」や「ポプラの秋」どちらも老人の「死」が絡んできます。 でもそれぞれちがう「死」であり、いろんな角度からそれそれ思いを馳せる事ができます。 この「わたしのおじさん」もそうでした。今までとは全然違う「生」と「死」。 一見内容は絵本のような内容だけれど、しっかりと「生」と「死」がバックグランドにありました。
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この人は児童文学の作家さんなのかな?夏の庭のひとだよね? 少し悲しいけど、いい話でした。絵もすごく良かった。 生と死の世界がこうなら救われます。とても。
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いつか、わたしは思い出すだろう、遠い昔、はるかな草原をあなたと旅したこと ―せつなさと希望にみちた始まりの物語。
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胎児と亡くなったそのおじさんが 空間の中にいる。 死後の世界と生前の世界は同一。 ふんわりとした空気感。
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薄い本だけれど、奥深くて何度も読み返したくなる傷と勇気と誕生の物語。やわらかくて少し不思議な世界にどっぷり浸かりたくなります。植田真の挿絵も素敵。
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これから生まれてくる子供が、母親の胎内でもう大分前に死んでしまったおじ(母親の弟)と自分の母親と出会う話です。もっと突っ込んだことを言えば、未来のある子供(=これから生まれる主人公)と未来のない子供(最早死んでしまっている主人公のおじ)と未来がなくなることにおびえている人間(弟...
これから生まれてくる子供が、母親の胎内でもう大分前に死んでしまったおじ(母親の弟)と自分の母親と出会う話です。もっと突っ込んだことを言えば、未来のある子供(=これから生まれる主人公)と未来のない子供(最早死んでしまっている主人公のおじ)と未来がなくなることにおびえている人間(弟を亡くしてしまった主人公の母親)がおたがいの存在の仕方に上手く折り合いをつけて、未来へ向かってゆくまでの物語。 とまぁ私の文章力であらすじを書いてしまえば実も蓋もないのですが。湯本香樹実の少ない言葉と、静かでやさしいまなざしで書かれた文章は秀逸です。佳作だなぁ、と思わせてくれる。いい本です。植田真の線の細い絵が世界によくあってる。 そしてやはり構成が緻密。書くべきことをきちんと押さえてある。子供の本なので、非常に未来のある、未来に暗いものを見ない終わり方をしているのが、引っかからないといえばうそになりますが、子供の本なのでそのあたりは許されてもいいのではないでしょうか。受け入れる準備が出来る前に気づかなくてもいいことはあると思います。それと子供だましは違うかと。かといってエドワード・ゴーリーのような絵本を否定するわけではありません。あれはあれで子供に対して優しいのだと思います。 表現的な話をすれば、全体を通していいのですが、特に冒頭部分が秀逸だと思います。ぼんやりとしていた世界がゆっくりと輪郭を結んでいくさまが本当に綺麗です。
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