銀の匙 の商品レビュー
書斎の引き出しに昔からしまってある一つの小箱。子安貝や椿の実・・・こまごましたものがいっぱい詰めてあるが、そのうちに一つの珍しい形の銀の匙のあることを、かつて忘たことはない。 病弱で臆病だった幼少期から、多感な青年に成長する日常を、細やかに描写した自伝的小説。 創作ではあるのだ...
書斎の引き出しに昔からしまってある一つの小箱。子安貝や椿の実・・・こまごましたものがいっぱい詰めてあるが、そのうちに一つの珍しい形の銀の匙のあることを、かつて忘たことはない。 病弱で臆病だった幼少期から、多感な青年に成長する日常を、細やかに描写した自伝的小説。 創作ではあるのだろうが、かなり著者の人生が投影されている小説なのだろう。 とくに起伏もなく、この主人公、特に幼少期はぐずぐずと泣いてばかりだし、時代的なこともあるかもしれないが、青年期の女性への態度も自意識が高すぎて、どうも好きになれない。 でも、情景描写はとても微細で、特に『お恵ちゃん』との件などは面白く読めた。
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何が起こると言うわけでもなく、確かに変化していく少年の日々が描かれている。 流れる水を見ているようにぼんやり読んだ。
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読み始めると読み耽ってしまう幼少期の細かく綺麗な心理描写。 いま咲くばかり薫をふくんでふくらんでる牡丹の蕾がこそぐるほどの蝶の羽風にさえほころびるように、ふたりの友情はやがてうちとけてむつびあうようになった。 私はまた唱歌が大好きだった。これも兄のいる時には歌うことを許されなか...
読み始めると読み耽ってしまう幼少期の細かく綺麗な心理描写。 いま咲くばかり薫をふくんでふくらんでる牡丹の蕾がこそぐるほどの蝶の羽風にさえほころびるように、ふたりの友情はやがてうちとけてむつびあうようになった。 私はまた唱歌が大好きだった。これも兄のいる時には歌うことを許されなかったのでその留守のまをぬすんでは、ことに晴れた夜など澄みわたる月の面をじっと見つめながら静な静な歌をうたうといつか涙が瞼にたまって月からちかちかと後光がさしはじめる。
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子供の頃の思い出を子供そのままの瑞々しい感性で綴った私小説。病弱な幼少時代の前編と就学後の後編からなるが、いずれも人見知りで感受性豊かな筆者の体験は何処か懐かしい。毎年読み返すたびに「すべてのものはみな若く楽しくいきいきとして、憎むべきものはひとつもない。」そんな風景が当たり前で...
子供の頃の思い出を子供そのままの瑞々しい感性で綴った私小説。病弱な幼少時代の前編と就学後の後編からなるが、いずれも人見知りで感受性豊かな筆者の体験は何処か懐かしい。毎年読み返すたびに「すべてのものはみな若く楽しくいきいきとして、憎むべきものはひとつもない。」そんな風景が当たり前であった過去を思い出し、大人になって失ったものの大きさを振り返る。
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子どもの公文国語に銀の匙が出題されていたことがきっかけで読んだ。橋本武先生が灘中で3年かけて教えたことは有名なエピソードであるが、それだけ深みのある作品なのだろう。幼少期の男の子の成長物語が明治の子供達の状況と合わせて丁寧に描写されている。美しく郷愁を誘う文体。主人公の男の子は、...
子どもの公文国語に銀の匙が出題されていたことがきっかけで読んだ。橋本武先生が灘中で3年かけて教えたことは有名なエピソードであるが、それだけ深みのある作品なのだろう。幼少期の男の子の成長物語が明治の子供達の状況と合わせて丁寧に描写されている。美しく郷愁を誘う文体。主人公の男の子は、少し泣きすぎで、喝を入れるお兄さんの気持ちもわかる。伯母さんの最後は可哀想に思った。
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灘校で中学3年間をかけて『銀の匙』1冊を読みこむという授業 ということで読んだのだが正直よく分からなかった私には きれいな日本語ということだろうなのだろうけど 昔の日本の風景ということ以外入ってこなかった
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2020.7.22 体が弱いことからこの時代にしては甘やかされて(実際にしょっちゅうお菓子やらおもちゃやらを買ってもらえているのでそれなりにお金がある家と思われる)育ったのに、そんなに傲慢にならず感受性豊かに育った主人公の話。 前半は子どものころ面倒を見てくれた伯母とのやりと...
2020.7.22 体が弱いことからこの時代にしては甘やかされて(実際にしょっちゅうお菓子やらおもちゃやらを買ってもらえているのでそれなりにお金がある家と思われる)育ったのに、そんなに傲慢にならず感受性豊かに育った主人公の話。 前半は子どものころ面倒を見てくれた伯母とのやりとりがほとんどだが、文体が流麗で景色がありありと浮かぶ。現代語訳ではないけれど昔すぎないのでよく読めば意味は十分わかる。当時の流行り物やかけあいもおもしろく笑ってしまうところも多々あり、原文だからこそ伝わるものもあると思った。 日清戦争あたりの描写や「兄」に代表される、画一的でダイバーシティを良しとしない、「戦時下の日本」のような日常にたいして、男なのに星を見たりきれいな貝を拾ったり仏教的な慈しみに関心を示してしまう主人公。生まれた時代が遅すぎたか(平安時代だったら良かったのに)、または早すぎたか(2015年以降なら良かったのに)と思った。 とくに「あらすじ」はないけれど、読むとはまってしまいほろりとする、不思議な作品だった。
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中勘助の幼少期からの回顧録。物語を読めば分かるが、様々なことを経験し成長していく姿が美しい日本語で描かれている作品。
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私は平成生まれで、当然この物語で 描かれている時代については無知である。 しかし、懐かしい。 描かれる人々、風景、モノ、会話、その全てに 懐かしさを感じた。 おそらく、強く日本を感じるのであろうと 思われる。 自伝的な内容で、主人公の幼少から青年期までが 描かれている。 自分...
私は平成生まれで、当然この物語で 描かれている時代については無知である。 しかし、懐かしい。 描かれる人々、風景、モノ、会話、その全てに 懐かしさを感じた。 おそらく、強く日本を感じるのであろうと 思われる。 自伝的な内容で、主人公の幼少から青年期までが 描かれている。 自分に重ね合わせながら、淡い心象描写や 美しい文体に惚れ惚れとする。 力強さはないが、日本文学の良いところ がありありと感じられる、素晴らしい本だと思う。 読むべき。
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1度途中で挫折したけど なんだか急に読みたくなって再読した。 伯母にずっとくっついていた事や、いくじがない性格が自分と似ていて共感する部分が多かった。 駄菓子を売っているじじばばが近所にいたり、 初めて学校に行く日の事を思い出し子供心を取り戻したような気持ちに。 ずっと手元に置...
1度途中で挫折したけど なんだか急に読みたくなって再読した。 伯母にずっとくっついていた事や、いくじがない性格が自分と似ていて共感する部分が多かった。 駄菓子を売っているじじばばが近所にいたり、 初めて学校に行く日の事を思い出し子供心を取り戻したような気持ちに。 ずっと手元に置いていたい一冊になった。
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