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銀の匙 の商品レビュー

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213件のお客様レビュー

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2010/04/22

何度読んでも変わらない、言葉や情景の美しさ。 家に何冊もあるのに、店頭で見かけるとつい、買ってしまう不思議な本。

Posted byブクログ

2010/04/11

五歳の少年が、なにかの理由で精緻で端正な大人の文章力を身につけてしまった。 そして、その少年が、自分の生活の日常を淡々と文章に綴っていく。 『銀の匙』という自伝小説は、そんなふうに書かれた印象があります。 子供の心をまったく失わずに大人になった青年がいたとして、過ぎ去った子供時...

五歳の少年が、なにかの理由で精緻で端正な大人の文章力を身につけてしまった。 そして、その少年が、自分の生活の日常を淡々と文章に綴っていく。 『銀の匙』という自伝小説は、そんなふうに書かれた印象があります。 子供の心をまったく失わずに大人になった青年がいたとして、過ぎ去った子供時代の日々をどんなにか懐かしく愛おしんだとしても、こんな文章が書けるものでしょうか。 この本を読んでいると、とても不思議な視点で少年の日々を見ることになります。 喘息で体が弱く、泣き虫の幼い少年を、慈しみ、つねに背中に背負い続けて、文字通り下にも置かず、育んだ伯母さん。 伯母さんの背中に負われて祭りを見に行った日、町内のいじめっ子に追い立てられて、「弱い子だにかねしとくれよ」と伯母さんが逃げ惑う。 その出来事を、伯母さんの背中から足を引っ張るいじめっ子を、おびえながら、見下ろしている感覚を味わいます。 明治時代の町内の風景、伯母さんとの遊び、甘い菓子の味、裏庭の木々、すべての事象が子供の背丈で描かれています。 中勘助が描く少年時代には、言い訳も、批判も、反省もありません。 いま主人公である5歳の勘助、7歳の勘助、10歳の勘助、12歳の勘助につねにぴったり寄り添って、その瞬間の思いをそのまま取り出してきています。 作家中勘助が描く対象としてではなく、少年中勘助が、大人になった中勘助の筆力を借りて書いている自伝小説なのです。 彼がその姿勢を貫いているおかげで、私は自分にもたしかにあった「あの瞬間」のことに思い至りました。 幼い頃の記憶は多くの場合、とても曖昧です。誰にとってもそうでしょう。 私も小学校3年生以前の記憶にはモヤがかかっていて、いくら考えてもうまく取り出せません。 脳の働きが未成熟であり、記憶容量も十分でないため、まず優先的に、生きる機能のために「脳」が使われるためでしょう。容量不足で「記憶」は後回しにされてしまうのでしょう。 この小説で、中勘助は、それまで基本生存機能のためにしか使われていなかった「脳」が、基本生存機能以外のことに使われはじめる瞬間、その瞬間を実にクリアに見せてくれています。 小学校に上がったものの、体が弱く、少し激しく動くと熱を出してしまう少年は、「学校に行きたくない」と言えば、家族も無理に行かそうとしない。 そういう境遇であったために、授業にまったくついていけません。 また熱を出されても困ると思っている周囲の人々は誰も彼に「勉強しろ」とは言いません。 しかし、お隣に越してきた美少女けいちゃんと友達になり、楽しく遊ぶ毎日だったのに、一緒に小学校にあがり、同級生という関係になると、 「びりっこけなんぞと遊ばない」 と、突っぱねられてしまう。 そこで、はじめて少年は、自分は勉強などしなくていい特権階級なのではなく、大人たちに、この子に勉強させても無駄だと思われている劣等生だったということに気づくのでした。 それに気づいた瞬間、生まれてからずっと脳の周囲にかかっていたモヤがスカッと晴れたのだと思います。 このあと、脳がフル操業で働くようになり、姉達に勉強を教えてもらい、次の学期には、ビリから一躍、二番になっていたのでした。 『銀の匙』の、過去の自分を描くのではなく、子供の自分に現在の自分の体を貸して書かせているような感覚。 もしかしたら、これが自伝・自分史の理想なのかもしれません。

Posted byブクログ

2010/03/22

子供のころの思い出が呼び覚まされてくる一冊。 なぜ、他人の体験談なのに、誰かに甘えて優しくされる感覚が 懐かしく感じられてせつなくなるのか。 ふとんのなかで、母にしがみついて眠る安らぎを思い出した。

Posted byブクログ

2010/03/06

ほのぼの系。少しだけ昔の時代の日本語と、独特の文体が心温まる雰囲気をかもしだしています。 幼いときって私にもあんなふうに世界が見えていたのかな?いろんなものが、今の何倍増にも鮮やかに見えていたんだろうか。 明治の、何かとちゃんとした手順としきたりによって関係を築いていた感じってい...

ほのぼの系。少しだけ昔の時代の日本語と、独特の文体が心温まる雰囲気をかもしだしています。 幼いときって私にもあんなふうに世界が見えていたのかな?いろんなものが、今の何倍増にも鮮やかに見えていたんだろうか。 明治の、何かとちゃんとした手順としきたりによって関係を築いていた感じっていいなぁと思いました。

Posted byブクログ

2010/02/15

誰か忘れてしまったが、私が嫌いじゃない作家が愛読書として挙げていたので、いつか読もうと思っていた。 偶然手に入ったのは、やはりめぐり合わせというものだろう。 明治45年から大正元年に執筆された作品であるので、作品世界の古さはいなめない。 現代小説ばかり読んでいたので、なかなか...

誰か忘れてしまったが、私が嫌いじゃない作家が愛読書として挙げていたので、いつか読もうと思っていた。 偶然手に入ったのは、やはりめぐり合わせというものだろう。 明治45年から大正元年に執筆された作品であるので、作品世界の古さはいなめない。 現代小説ばかり読んでいたので、なかなか入っていくのに手間取った。 しかし、絶賛されるだけある。 前半の、敏感で繊細な主人公の目からみた世界は、うっとりするほど美しい。 その美しさは、今はなき日本の原風景である。 私くらいの世代をして、昔は良かったなあ、と言わしめるだけの力を持っているように思う。 「年少の時にこの小説を読まなかった者は、情操教育に於いて欠けるところがあると云っても過言ではない」(河盛好蔵)との賞賛もうなづける。 そもそも、名もない学生の殻のついた青年の書いた小説が(自伝ではなく、あくまで小説のようです)、いきなり東京朝日新聞に連載されたと言うこと自体、破格の扱いだ。 いくら、夏目漱石の強力な推薦があったとしても、だ。 また、その後詩人となっただけあって、表現の独自性に舌を巻く。 耳慣れない擬声語、擬態語でありながら、リズム良く耳に響き、描写したい対象物に関する情報が、的確に伝わってくる気がする。 文章や表現の勉強に、気分転換に、ノスタルジーに浸りたいときに、日本人であることに誇りを持ちたいときに。 大事に保管しておいて、何度も読み返したいと思える本です。

Posted byブクログ

2010/01/10

平板な印象もあるけれど、子ども時代の思い出って、これといって特別なものは無いと思う。「子どもである」という状況が、今から見れば特別なのだ。私はこの物語、好きです。

Posted byブクログ

2009/12/13

綺麗な日本語だというのは分かります。実際子供の世界がよく描かれていると思います。 ただ爽快さに欠けることや、ストーリーに起伏がないことから、読み応えがないともいえる。読んでて退屈でした。

Posted byブクログ

2009/12/05

091205 from mixi ----- なかなか開かなかった茶箪笥の抽匣(ひきだし)からみつけた銀の匙.伯母さんの無限の愛情に包まれて過ごした日々.少年時代の思い出を中勘助(1885-1965)が自伝風に綴ったこの作品には,子ども自身の感情世界が,子どもが感じ体験したまま...

091205 from mixi ----- なかなか開かなかった茶箪笥の抽匣(ひきだし)からみつけた銀の匙.伯母さんの無限の愛情に包まれて過ごした日々.少年時代の思い出を中勘助(1885-1965)が自伝風に綴ったこの作品には,子ども自身の感情世界が,子どもが感じ体験したままに素直に描き出されている.漱石が未曾有の秀作として絶賛した名作.改版.(解説=和辻哲郎)

Posted byブクログ

2013/06/18
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

お金持ちの子供の話かと思ったけどエッセイだった。 かつて漱石の随筆か何かで「知り合いに仲の悪い兄弟がいて性格が全然違う、兄は釣りが好きで弟は嫌いだ」というような話をちらっと読んでいたところ、この本を読んで「この兄弟か!」と凄く合点がいったこと、というのが一番記憶に残っています。すごく瑣末。

Posted byブクログ

2009/10/04

言うまでもなく名作。 脆弱な主人公に、徹底的に甘やかしかわいがり愛情を注ぐおばさん。主人公はだんだん成長し、おばさんとは離れ、自信をつけたり他者に抵抗する機会を得て、自立していく。 過去を振り返るというよりも、そのときそのときの主人公の感覚に入り込んだような視点(でもどこかやっぱ...

言うまでもなく名作。 脆弱な主人公に、徹底的に甘やかしかわいがり愛情を注ぐおばさん。主人公はだんだん成長し、おばさんとは離れ、自信をつけたり他者に抵抗する機会を得て、自立していく。 過去を振り返るというよりも、そのときそのときの主人公の感覚に入り込んだような視点(でもどこかやっぱり回想なんですよね。だから小さい頃の描写ほどふわふわしてる。)で書かれてるので、読者も主人公と一緒に成長してく気分になるのですが、おばさんと暮らしていた序盤のことが読者の頭から抜けかけたころ、主人公は再び年老いたおばさんと再会するんですよ。このタイミングが、読者である私にとって絶妙でした。序盤以上に、おばさんの歓待ぶりが泣けた。 私の祖母は山の上に住んでいて、私が行くとわかった日は、何時間も前から山の上の、車道が見える石の上に座って待っててくれたんですよね。そのことを思い出して、それでまた泣けちゃうのかも。

Posted byブクログ