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ドン・キホーテ 前篇(訳者:牛島信明)(三) の商品レビュー

4.1

17件のお客様レビュー

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彼の狂気が、けだるく…

彼の狂気が、けだるく弛緩した田舎の現実を勇壮な「現実」に変え、目覚ましい「冒険」を現出させる。

文庫OFF

2024/08/27

・冒険を求める憂い顔の騎士殿には一向に冒険が訪れないのに、出会う人たちからは次々と数奇な冒険というか人生の旅が語られるのがとても美しい皮肉構図でセルバンテスの頭の良さを感じる。すごい…。 ・騎士殿の狂気の暴挙についてはもはや同情の余地はないですが、定期的に作中の人物たちに笑い物に...

・冒険を求める憂い顔の騎士殿には一向に冒険が訪れないのに、出会う人たちからは次々と数奇な冒険というか人生の旅が語られるのがとても美しい皮肉構図でセルバンテスの頭の良さを感じる。すごい…。 ・騎士殿の狂気の暴挙についてはもはや同情の余地はないですが、定期的に作中の人物たちに笑い物にされるところは読んでいてかなり可哀想になる。もしかして時代的なもので、狂人ってもしかして所謂宮廷道化師と同じようにむちゃくちゃやってもいい存在なんですか…? ・前の巻で不義不貞の限りを働いたドンフェルナンドと同一人物なのかとずっと疑ってるくらいに改心後の善人描写がすごい。カルデニオの間違いじゃないんですよね?それだけこの時代の「貴族≒美丈夫=善人」という固定観念が強いんでしょうか…。

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2022/10/26

前篇の最終巻ということで、どう終わるのか期待しながら読んだ。ドン・キホーテもサンチョもどんどん知的になっていく。 オルテガに共通する貴族性に関する記述もあって楽しめた。 38 さらに言えば、真の貴族性というのは美徳のなかに在るものですからー

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2022/06/01

冒険の本筋よりも作中作や登場人物が語るエピソードが多めですが、それらが抜群に面白いです。特に恋愛が絡む話は、やはり時代を超えた普遍性がある気がします。 出会った人々がドンキホーテの様子を見て驚く→人柄を説明されて納得→茶化して楽しむ、という流れが定番化されていくのが可笑しいです...

冒険の本筋よりも作中作や登場人物が語るエピソードが多めですが、それらが抜群に面白いです。特に恋愛が絡む話は、やはり時代を超えた普遍性がある気がします。 出会った人々がドンキホーテの様子を見て驚く→人柄を説明されて納得→茶化して楽しむ、という流れが定番化されていくのが可笑しいです。 相変わらずのサンチョですが、やけに的確で現実的な指摘を主人にしたかと思うと、やはり根本のところでは妄想に憑かれていて、なんとも憎めないウザ可愛さがあります。 後編も非常に楽しみです。

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2021/10/21

旅の途上でいろんな人とのつながりができていく様はRPGのようですが、全然ファンタジーではなくだいたい主人公が突っ込んでいって叩きのめされます。 ドン・キホーテの無謀な行動や言動がとても可笑しいんだけど、本人は大真面目で真っ直ぐだからなんか尊敬の念も湧いてきたりもする。 登場人物が...

旅の途上でいろんな人とのつながりができていく様はRPGのようですが、全然ファンタジーではなくだいたい主人公が突っ込んでいって叩きのめされます。 ドン・キホーテの無謀な行動や言動がとても可笑しいんだけど、本人は大真面目で真っ直ぐだからなんか尊敬の念も湧いてきたりもする。 登場人物がなんだかんだみんないい人でどこか可愛げがあっていいですね。

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2021/03/24

2021/3/22 大冒険に出かけるかと思いきや、前篇の約1200pで描かれる出来事はただのお出かけ。またサンチョはドン・キホーテと8ヶ月の旅をしていると豪語するが、ある研究によると僅か18日だそう。場所的、時間的な虚実の差も面白い〜

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2020/05/03

第五十章の「人はその本性が寛容であろうとも、貧しくてはその美徳を、つまり雅量を他人に対して示すことができぬし、また、感謝の念も、ただ心の中で思っておるだけのものであれば、それは実践のない信仰と同じで死物に過ぎぬからでござる。」というドンキホーテのセリフが心に残りました。

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2019/11/26

セルバンテス 「 ドンキホーテ 」 前篇終了 ドンキホーテは、騎士道物語のパロディとしては 痛々しくて笑えない。英雄叙事詩的なキリスト教説話として読んだ。何度袋叩きにあっても めげない姿は英雄だと思う。 妄想と現実を 英雄として生きようとするドンキホーテの悲喜劇的な人物像...

セルバンテス 「 ドンキホーテ 」 前篇終了 ドンキホーテは、騎士道物語のパロディとしては 痛々しくて笑えない。英雄叙事詩的なキリスト教説話として読んだ。何度袋叩きにあっても めげない姿は英雄だと思う。 妄想と現実を 英雄として生きようとするドンキホーテの悲喜劇的な人物像を キリスト教の倫理観と対比させ、スペインの中世史とリンクさせたところにドンキホーテの深さがあるように思う。 再読なので、ドンキホーテが何を象徴しているのか意識しながら読んだ〜キリスト教異端者、修道騎士団、スペインそのもの、キリストそのもの、宗教の狂信性 に とどまったが、他のドンキホーテ論を読んで 別の解釈が知りたい 羊飼い、司祭、床屋などの仕事にキリスト教的な意味があるかもしれない。後篇は キリスト教文化やスペイン史をもう少し整理してから読む。 ワーグナーの騎士文学観 *空想と現実の分裂を和解させるための文学 *現実の生活が淫猥で破廉恥なものとなった〜はじめから生の喜びを拒否したキリスト教をたよりにしていたから *騎士文学=狂信の偽善であり、ヒロイズムの気違い沙汰

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2015/07/16

前扁(1)がドン・キホーテ ビギニング、前扁 (2)がスピンアウト作 サンチョ・パンサである とすれば、本書はドン・キホーテを出自村から追随 してきた牧師と床屋(何か職業において象徴的だ) アラウンド・ドン・キホーテの物語ということに なる。 彼らの手によって捕縛されたドン・キ...

前扁(1)がドン・キホーテ ビギニング、前扁 (2)がスピンアウト作 サンチョ・パンサである とすれば、本書はドン・キホーテを出自村から追随 してきた牧師と床屋(何か職業において象徴的だ) アラウンド・ドン・キホーテの物語ということに なる。 彼らの手によって捕縛されたドン・キホーテは出自 村に連れ帰られることとなり、ドン・キホーテの物 語は一旦終わる(著者セルバンデスが出兵→傷痍→ 徴税官に就職→横領→懲役といった著作活動以外の 場で忙しかったため)。 後扁が始まるまでの間、アベジャネーダが著した贋 作ドン・キホーテが生まれたのも、このドン・キ ホーテ帰村を当時の読者がひどく嘆いたことに寄る ところは大きい。

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2014/07/27

後篇全3巻、読み終わったー。 前篇は自分を遍歴の騎士と妄想したドン・キホーテとその残念な従士サンチョ・パンサが行く先々で騒動を引き起こす快活な物語だった。批評性を持ち合わせているものの基本は愉快な話であった。 ところが後篇に入ると状況はがらりと変わる。二人がふたたび旅に出て、騒...

後篇全3巻、読み終わったー。 前篇は自分を遍歴の騎士と妄想したドン・キホーテとその残念な従士サンチョ・パンサが行く先々で騒動を引き起こす快活な物語だった。批評性を持ち合わせているものの基本は愉快な話であった。 ところが後篇に入ると状況はがらりと変わる。二人がふたたび旅に出て、騒動に出会うことに同じ。しかし、前篇において騒動の震源であった彼らは、この後篇では哀れな被害者となる。後篇に登場する人々は皆、「ドン・キホーテ前篇」を読み、ドン・キホーテの妄想癖とサンチョ・パンサの調子の良さを知っている。だから二人の非常識な行動を楽しもうと、人々は策を弄し罠を仕掛け二人を騙し陥れる。二人は周囲の人々の好きなように弄られ翻弄される。もちろんドン・キホーテもサンチョ・パンサも自らが騙されていることには気づきもしない。 ここまでくると、善良な魂を持つのはドン・キホーテとサンチョ・パンサの方ではないかとすら思えてくる。前篇でも狂気と正常との境界はごく曖昧であったが、後篇に至っては狂気と正常とは逆転してしまう。 そして終盤、一騎討ちに敗れたドン・キホーテは失意のまま病の床につく。そこで突然彼は正気に戻り、自らの遍歴が妄想の賜物であったことに気づく。やがて自らの狂気を強く悔いながら死ぬ。あまりに哀れなドン・キホーテの最後。 前篇後篇あわせて2500ページの長大な作品だが、読むだけの価値はある掛け値なしの傑作。日本語訳もこなれていながら格調高いし(訳の精度はわからないけど)、ドレの挿絵もいい。ほんと面白かった。

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