デッドエンドの思い出 の商品レビュー
今までの吉本作品に見られる辛い時期をぐっと耐えていると(何かしらの)流れに乗っていい方向を向いている(実際は向きかけた、というあたりで終わるけど)のが多いが、この『デッドエンドの思い出』は悪い状況に追い込まれてしまった時のあがきもがく様が淡々と描かれている。もがけばもがくほどじわ...
今までの吉本作品に見られる辛い時期をぐっと耐えていると(何かしらの)流れに乗っていい方向を向いている(実際は向きかけた、というあたりで終わるけど)のが多いが、この『デッドエンドの思い出』は悪い状況に追い込まれてしまった時のあがきもがく様が淡々と描かれている。もがけばもがくほどじわじわ泥沼に沈んでいくような。著者曰く、『なんでこんな辛いことを書いているのだろう?と思った』というのはとてもよくわかる。今作は主人公達がひどい状況になっている事を認識していないせいで、もがいてしまうというあたりがとても切なかった。とても身近で今この瞬間も”ありえる”と思うのだ。こうやって心が疲れていったりするのだなと思った。当事者は分からないものね。きっと私も、心が疲れてダメになっていく時はこういう心理が積み重なっていくのだろう。しかし最後には希望が待っている。こういった気持ちになったことがある人も今なってしまっている人も、その希望があるからこそ救われるのだ。
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この本の中の「幽霊の家」という話が好き。 表紙の銀杏と青空のコントラストといい、幸福な組み合わせだと思う。 秋に読みたくなる本。
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よしもとばななって、高校時代に読んだのが最後で、多分8年ぶりぐらいに読んだ。 よしもとばななは私の中では村上春樹、とか、山田詠美、とか、なんかそういう現代小説家と同じようなテイストの本を書く人だと思っていたので、あれ?違ったっけ?と思った。 なんか普通な普通な穏やかな流れの話だっ...
よしもとばななって、高校時代に読んだのが最後で、多分8年ぶりぐらいに読んだ。 よしもとばななは私の中では村上春樹、とか、山田詠美、とか、なんかそういう現代小説家と同じようなテイストの本を書く人だと思っていたので、あれ?違ったっけ?と思った。 なんか普通な普通な穏やかな流れの話だった。「幽霊の家」はいまいち。でも「おかあさーん」と「デッドエンドの思い出」は、評判どおりのよさだった。 悲しいっつか切ないんだけどあったかい。
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ばななさん自身、「これまで書いた自分の作品の中で、いちばん好き」と説明するくらいのお気に入りらしい。 私としては長編の方が好きだから気に入るものもあんまりのものもあったけど、確かに中にはばななさんらしい、Hopeのほんわかとした明かりが点ってるものがあったなぁ。
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あとがきに 何ひとつ身に起きたことなど書いていないのに いちばん私小説らしい小説だ と書かれている。過去のつらかったことを全部清算しようとしたのか とも。 確かに出来事としては 辛いことばかり描かれているのだが 読者は一緒になって辛い気分にはならないと思う。少なくとも私はな...
あとがきに 何ひとつ身に起きたことなど書いていないのに いちばん私小説らしい小説だ と書かれている。過去のつらかったことを全部清算しようとしたのか とも。 確かに出来事としては 辛いことばかり描かれているのだが 読者は一緒になって辛い気分にはならないと思う。少なくとも私はならなかった。 なぜかというと どの物語も 辛い気持ちが浄化され 少しずつ凹みが元に戻ってゆく話しだから だと思う。 以前にも他の作品の感想に書いたかもしれないが ばななさんの書く食べ物は たとえそれが ご馳走でもなくありきたりなものだとしても とても温かく美味しそうである。そして それがものすごく魅力的なのだ。 自然の 宇宙の営みの 不思議だけれど当然の成り行きを 跳ね返すことなく自然に躰や心に受け容れていこう、と素直に思わされる ばなな風味な一冊だった。
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淡々としています。好き嫌いは分かれそうだけど…。私はこの人の文章の雰囲気が好きなのですが、この本も一言二言、心に残る言葉がありました。そういうのを見つけられるのは読んだ甲斐があったということかも。時折「これは作者の話なのかしら?」と思ってしまうことも。
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久々に読んだ吉本ばなな。短編集なんだけど、一話目がとても好きだった。自然体だとか縁だとかってこういうことね、と思わせられる一作。
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短編集。 読み終わって思ったのは、さらりとしていた、ということ。 幽霊が出てきたり、毒を盛られたり、遠恋中の恋人が新しい彼女を作っていたり、それでもそれぞれの主人公たちはキャーなんてヒステリックにならずに、ぽっとその状況をうけとめる。(ばなな作品の主人公はほとんどそういう気もする...
短編集。 読み終わって思ったのは、さらりとしていた、ということ。 幽霊が出てきたり、毒を盛られたり、遠恋中の恋人が新しい彼女を作っていたり、それでもそれぞれの主人公たちはキャーなんてヒステリックにならずに、ぽっとその状況をうけとめる。(ばなな作品の主人公はほとんどそういう気もする・・・) 葛藤をあえてどろっと書かないところも、後引く理由かもしれない。 ひさしぶりにばななを読んだけど、やっぱりこのひとの文章が1番すきだ。
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これはなかなかに良い作品。 吉本作品も、方向性が変わってきてからはしばし遠ざかっていたけれど 「この小説を書けて、小説家になって、良かった」 という旨のことを話していたのも、納得。 今までの吉本作品の中でもトップクラス。 いつのまにかお子さんが産まれていたそうで。 ...
これはなかなかに良い作品。 吉本作品も、方向性が変わってきてからはしばし遠ざかっていたけれど 「この小説を書けて、小説家になって、良かった」 という旨のことを話していたのも、納得。 今までの吉本作品の中でもトップクラス。 いつのまにかお子さんが産まれていたそうで。 おめでとうございます。
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著者本人が「いちばん好き」と言うだけあって、読者のわたしも「かなり好き」。よしもとばななさんでいちばんは、やっぱり「ハチ公の最後の恋人」だけど、これもかなり良かった。「王国」も良いし「白河夜舟」も良いし、やっぱ江国香織さんよりも好きだー。
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