白い巨塔(第5巻) の商品レビュー
技術がありながらも手術しないほうが良かったとはどういうことなのだろうか。 やり直せるなとしたら、どこまで遡るのだろうか。 (以下抜粋) ○財前教授は余人が見付けることの出来ぬような早期癌をたった二枚のフィルムで発見し、 患者の生命を助けようとしたため、 現在の医学常識では考...
技術がありながらも手術しないほうが良かったとはどういうことなのだろうか。 やり直せるなとしたら、どこまで遡るのだろうか。 (以下抜粋) ○財前教授は余人が見付けることの出来ぬような早期癌をたった二枚のフィルムで発見し、 患者の生命を助けようとしたため、 現在の医学常識では考えられぬような早期胃癌の肺への転移という不可抗力に近い問題で、 診療責任を追及されている、 これほど、過酷で矛盾した話はないといえよう(P.69) ○学術会議会員になることが、学者としてプラスか、マイナスかは僕自身の人生観が決めることで、 プラスだと思えばこそ打って出たのだ、 そして立候補した限りは、たとえ対立候補を引き下ろしてでも当選してみせる(P.82)
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さんざん自分勝手な振る舞いをしてきた財前教授だけどどうにか助かってほしいと思わずにはいられなかった。 開腹した時の衝撃はどれほどだっただろう。 最期になって、担当医師の診察を信頼出来ない不安や術医に経過を診てもらえる安心を感じた財前教授はどんな気持ちだっただろう。 名作。この本に出会えてよかった。
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裁判でのやり取りが極めて医学用語でやり取りされており、作者の相当な取材による情報量に圧倒される。下された判決は今まで読み進めてきた内容からとても納得できる内容で、作者はここに相当気を配ったものと思われる。 後半、財前が悪いと知ったメンバーが、その派閥の垣根を超えて財前を救うために...
裁判でのやり取りが極めて医学用語でやり取りされており、作者の相当な取材による情報量に圧倒される。下された判決は今まで読み進めてきた内容からとても納得できる内容で、作者はここに相当気を配ったものと思われる。 後半、財前が悪いと知ったメンバーが、その派閥の垣根を超えて財前を救うために尽力する様には胸を打たれます。それにしても里見の執よう過ぎる裁判での原告側に対する助力が不自然。自分の証言が、偽証となった一審のこと事を悔やんでのことか。確かに原告の遺族は辛すぎる判決ではあったが。癌と言う病魔が身近に関わるようにならない、なっても医学の進歩で回復するような世になる事を念じるように読み終えました。財前のもう一人の不倫相手(名前失念)の伏線は結局使わず仕舞いですねぇ。
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医者のミスかどうか、医者の倫理、を裁判で問う。ワンマン社長が急に亡くなり、残された家族の生活と執刀した教授の生活の差、大学病院の封建的な仕組み風土、教授を取り巻く思惑、それぞれの弁護士の思い等、丁寧に描かれている。一審は財前教授方の勝訴、いざ控訴審は…佐々木側の勝訴。しかし、財前教授は、すでに末期癌。センセーショナルな結末。
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最高の完結。柳原は真実を話し、財前は枕元の東教授と和解ともとれる信頼を寄せながら、亡くなった佐々木氏への懺悔のような譫言を言いながら亡くなる。人物描写がとても深い。悪役の財前も里見を尊敬したり母を慕う心を持っている。得意になってメスを振るっていた財前が無力な患者になって怯えたり医師にすがる姿、自分の病状を知ろうと画策する姿は考えさせられる。この巻は続編らしいが、白い巨塔という言葉がやっと出てきて、2回とも非常に印象深い。当初、佐々木氏遺族の敗訴で完結してたなんて信じられない。 欲を言えば、東佐枝子は「東教授のお嬢さん」ではなく、医者かせめて仕事しててほしかった。あと華子は柳原についてきてほしかったが、やりすぎると作り話にもほどがあるからこれてよいのか。
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あの人は凄い人やわ、心の厳しさというか、何か侵し難いものがあるわ 医者の診察によって患者がどれほど心を安らかにするものであるかを、身にしみて知った。 明らかに肝性昏睡が始まりかけているのだった そこに人間の弱さというか、救われようのない業のようなものが刻印されているようだった 屍は生ける師なり 自ら癌治療の第一線にある者が、早期発見できず、手術不能の癌で死すことを恥じる 医療は神の祈りであることを忘れ、白い巨塔の野望に敗れた財前の魂を洗い浄め、鎮めるような荘厳なミサが、夜明けの清澄な光と一つに溶け合って、里見を揺り動かした
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医事裁判、控訴審の判決後、財前教授が病に倒れるのだが・・・周囲の彼に対する対応を読みながら目頭が熱くなった。社会派小説金字塔
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濃密な5冊だった。 裁判の行方もそうだけれど、後半の後半、財前の急速な癌の病状の悪化の描写が無常だった。地位と権力と保身に全力だった財前は決して悪人ではなかった。
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社会的には里見先生のような医師に思い入れを持ち、共感すべきなのかもしれない。にも関わらず、読みながら財前教授を応援してしまった自分を恥じるべきなのだろうか。 身近なテーマであるが故に、多くの読者が感じるところとはまだ別な思いが残ったのかもしれない。医師はプロであるが、神ではない...
社会的には里見先生のような医師に思い入れを持ち、共感すべきなのかもしれない。にも関わらず、読みながら財前教授を応援してしまった自分を恥じるべきなのだろうか。 身近なテーマであるが故に、多くの読者が感じるところとはまだ別な思いが残ったのかもしれない。医師はプロであるが、神ではない。「社会的責任」とは何か? 財前教授が死の最後、自らの体を剖検に託す姿に心を打たれた。医師としてのプライドに。ただ、それでもやはり、医師も一人の人間にすぎない。
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悪どい策略などを、駆使し学術学会選挙や、医療裁判をくぐり抜けてきた財前。 どう落とし前をつけるのから気になったけど、まさかこうなるなんて。 ある意味美しい幕の引き方だったのではと思う。 里見の財前に対する友情と医師として、対立していた財前に親身に医療を行う姿勢に感動した。
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