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黒人アスリートはなぜ強いのか の商品レビュー

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2009/10/04

黒人の肉体的優位性を社会的環境(nurture)ではなく、遺伝的特性(nature)に求める言説は米国社会においてはタブーである。このような言説は、かつて黒人差別の歴史の中で展開されてきた”肉体的優位性>野生に近い存在>知的劣位性”という思想を依然として内包するものとみなされるか...

黒人の肉体的優位性を社会的環境(nurture)ではなく、遺伝的特性(nature)に求める言説は米国社会においてはタブーである。このような言説は、かつて黒人差別の歴史の中で展開されてきた”肉体的優位性>野生に近い存在>知的劣位性”という思想を依然として内包するものとみなされるからである。これに対し、著者は黒人の肉体的優位性について遺伝的特性としての性格を全く排除することは合理的な思考ではなく、過去に影響された社会的抑圧を離れた冷静な議論を行うべきことを主張する。取材は丹念で厚みがあり、示されるデータと論理展開には説得力がある。白人の著者が米国社会において本書のような作品を書くことについて様々なプレッシャーがあったであろうことは容易に想像できるのだが、その徹頭徹尾ジャーナリスティックな姿勢は敬服に値する。邦題は原題の"タブー"というニュアンスが抜け落ちており、もう一工夫あってもよかったかもしれない。

Posted byブクログ