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柿の種 の商品レビュー

4.2

55件のお客様レビュー

  1. 5つ

    20

  2. 4つ

    16

  3. 3つ

    9

  4. 2つ

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2013/05/30
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

なんべんも読み返してしまう。 「日常生活の世界と詩歌の世界の境界は、ただ一枚のガラス板で仕切られている。 このガラスは、初めから曇っていることもある。 生活の世界のちりによごれて曇っていることもある。 二つの世界の間の通路としては、通例、ただ小さな狭い穴が一つ明いているだけである。 しかし、始終ふたつの世界に出入していると、この穴はだんだん大きくなる。 しかしまた、この穴は、しばらく出入しないでいると、自然にだんだん狭くなって来る。 ある人は、初めからこの穴の存在を知らないか、また知っていても別にそれを捜そうともしない。 それは、ガラスが曇っていて、反対の側が見えないためか、あるいは……あまりに忙しいために。 穴を見つけても通れない人もある。 それは、あまりからだが肥り過ぎているために……。 しかし、そんな人でも、病気をしたり、貧乏したりしてやせたために、通り抜けられるようになることはある。 まれに、きわめてまれに、天の焰を取って来てこの境界のガラス板をすっかり熔かしてしまう人がある。」 寺田寅彦は「吾輩は猫である」に登場する水島寒月のモデル。

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2013/05/22

なんて素敵な本なんだろう。科学とは。生きるとは。 こういうふうに純粋に、学問のひろがりを味わってたのしむことが、やはり心の忙しくなりやすい現代ではなかなか叶わないから。 科学を志すひとにもそうでないひとにも、いちど手にとってもらいたい。 科学の原点とは何であったか、見失わずに科学...

なんて素敵な本なんだろう。科学とは。生きるとは。 こういうふうに純粋に、学問のひろがりを味わってたのしむことが、やはり心の忙しくなりやすい現代ではなかなか叶わないから。 科学を志すひとにもそうでないひとにも、いちど手にとってもらいたい。 科学の原点とは何であったか、見失わずに科学と向きあっていけたらと願う。

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2013/01/06

p.29 この説明が仮に正しいとしても、この事実の不思議さは少しも減りはしない。不思議さが少しばかり根元へ喰い込むだけである。 p.92 にぎやかな中に暗い絶望的な悲しみを含んだものである。 科学と文学と感覚の不可分さがシックリ腑に落ちる。

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2012/12/09

ごくごく短い文章。戦前?というか関東大震災のころの作家。科学者でもあったので、科学的なものの見方と、もっとわりきれない深いものを見る見方、両方出てきて面白い。

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2012/11/07
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

この方の文章、好きだなぁ。学者さんらしいというか、日常の諸々の雑記みたいなものなんだけれど、感情だけでは語らない理性的なところがあって面白い。大正から昭和にかけての世相なんかも読み取れて、歴史で習ったような時代がリアルに感じられます。 もっと色々読んでみたいです。 ※元々なんでこの著者の名前を知ったんだったかなぁ、と考えてみたら、"ご近所の博物誌"という、わかつきめぐみさんの描いた漫画の作者コラム欄で紹介されていたんだった。もう20年近く前に読んだ漫画から今につながっているんだなぁ。

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2012/10/18

再読。 この本がきっかけで、寺田寅彦を知りました。 科学者から見た世界は、不思議さと鋭さと温かさに満ちている気がします。

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2012/09/03

随筆のお手本のような1冊。 こんな平易な文章で 何気ない日常を切り取って 鮮やかな印象を残す。 本来の意味での「観察」を怠らない 注意深く 好奇心旺盛な双眸が 「 くもりなき 瞳」というべきものだろうか? p.60 そのなつかしそうな声をきいたときに、私は、急に何物かが胸の中で...

随筆のお手本のような1冊。 こんな平易な文章で 何気ない日常を切り取って 鮮やかな印象を残す。 本来の意味での「観察」を怠らない 注意深く 好奇心旺盛な双眸が 「 くもりなき 瞳」というべきものだろうか? p.60 そのなつかしそうな声をきいたときに、私は、急に何物かが胸の中で溶けて流れるような心持ちがした。

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2015/02/02

無粋な人ならば、あまり日常のことに気を留めない人ならば通り過ぎるところを興味深く観察しているのが良い。あ~確かに!ってなる。 科学者が文学者であることに納得がいった。 機知に富んだ話に休憩をはさむように猫の話が出てくるのがまた良い。 気になったこと:ナシ赤星病の話がある気がする...

無粋な人ならば、あまり日常のことに気を留めない人ならば通り過ぎるところを興味深く観察しているのが良い。あ~確かに!ってなる。 科学者が文学者であることに納得がいった。 機知に富んだ話に休憩をはさむように猫の話が出てくるのがまた良い。 気になったこと:ナシ赤星病の話がある気がする。

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2012/03/14

「柿の種」寺田寅彦 随筆集。特になし。 @電子書籍 52 冊目。 実は、寺田寅彦初読です。 昭和初期の著者の日常を、鮮やかな視点で綴る“珠玉の”随筆集。 まず何より、文章が読みやすい。これは本当に凄いこと。 そして、独特の感性で事物を捉える、科学者然としたanalysis。 加...

「柿の種」寺田寅彦 随筆集。特になし。 @電子書籍 52 冊目。 実は、寺田寅彦初読です。 昭和初期の著者の日常を、鮮やかな視点で綴る“珠玉の”随筆集。 まず何より、文章が読みやすい。これは本当に凄いこと。 そして、独特の感性で事物を捉える、科学者然としたanalysis。 加えて、文学的な香りの漂う、詩的な雰囲気が素晴らしいです。 漱石門人であり、物理学者であり、俳人である寺田寅彦、ずっと読もうと思っていたのは正解でした。 一編だけ、引用します。 “一に一を加えて二になる。 これは算術である。 しかし、ヴェクトルの数字では、1に1を加える場合に、その和として0から2までの間の任意な値を得ることができる。 美術展覧会の審査には審査員の採点数を加算して採否を決めたりする。 あれは算術の他に数字はないと思っている人たちのすることとしか思われない。” おすすめ。(5)

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2012/11/20

のんびり、ゆったり。 そんな生活をしていた作者の鋭い感性と科学者としての洞察力が溢れていました。 関東大震災のことが書いてあって、予想外に救われた気分になりました。震災後の自然の回復力のところ、読んでいてじんわり目頭が熱くなりました。

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