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娼婦の部屋・不意の出来事 の商品レビュー

3.8

13件のお客様レビュー

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この作者独特のアンニ…

この作者独特のアンニュイな世界に浸れます。本としては好きですが、近くにこんな男性がいたら厄介だなぁと思います。

文庫OFF

2024/06/21

初期の13編を集めた短編集。前回読んだ『原色の街・驟雨』よりさらに著者の作品の振り幅の大きさが堪能できて良かった〜完全にハマりそう、全集にも手を伸ばしかねない。他者との距離感を定める過程で自己を確立していく人物の話が多かった印象。その隔たりは、XY軸だけでなく、Z軸にも及ぶ。立場...

初期の13編を集めた短編集。前回読んだ『原色の街・驟雨』よりさらに著者の作品の振り幅の大きさが堪能できて良かった〜完全にハマりそう、全集にも手を伸ばしかねない。他者との距離感を定める過程で自己を確立していく人物の話が多かった印象。その隔たりは、XY軸だけでなく、Z軸にも及ぶ。立場が異なる男女が共に海に落ちる「原色の街」、現実世界を遠く見下ろし浮遊する「漂う部屋」と同様に、「童謡」の「「もう、高く跳ぶことはできないだろう」」や、「出口」の「彼は男も自分と同じ平面に立っていることに考えを向ける余裕が無かった。迂闊と言わなくてはならぬ……」とか。この辺もっと掘り下げたいなぁ。 「娼婦の部屋」表題作、 同じ平面にいた娼婦をいつしか下に見る男。色町から逃れられない理由があたかも全て女の側にあるような書き方が気に入らなかった。昔の職場で、風俗嬢の写真をネットで見ながら契約社員の誰それではないかと騒ぎ立てていた同僚達を思い出す。彼らのような人間こそが女の退路を断つのではないか。「寝台の舟」女学校の教師が男娼の下へと通う。感想は保留。「鳥獣虫魚」世界のありとあらゆるものが「変形と褪色をおこ」す中で、「人間の形をして、人間の顔をした一人の女」に出会う。しかし彼女の身体には欠損がありー。昔似たようなことを言っていた人を思い出す。珍しく「不変」を感じる一作だった。「漂う部屋」と併せて読むと感慨深い。「青い花」自殺未遂をした妻を一人残し、逃げるようにして青春時代を過ごした高原に迷い込む。そこでは死んだはずの女が生きていてー。自殺未遂の描写があまりにも鬼気迫っていて、ぜっっったい実体験に基づいてるだろ、と確信してしまった。介抱する面倒臭さが頭を擡げるところとかリアル過ぎる。あまりの凄まじさに二度読んだ。「海沿いの土地で」旅先で見たサーカス団員の関係性を押し当てる男二人。男男が登場しても、男女の話に終始する。「手毬」実演の客引きをしている元娼婦との思い出。短いながらも笑いと悲哀が詰まっている。「風景の中の関係」大好きな短編 「夏の休暇」の父親視点。完璧なまま終わって欲しかった作品に続編が出た時の苦しみにのたうち回った。しかも愛人視点の「島へ行く」もあるよう、読みたくないけど読みたい。「童謡」長期入院中の少年と彼を見舞いに来た友人。氏が描く子供は恐ろしく敏感で、聡い。「出口」密室に出口を見出す男と、鰻屋の兄妹。ゴシック風味の短編、とても好きなのでもっとこういう雰囲気の作品を読みたい。「花束」友人の死をダシに使う「しつこい」男。ありとあらゆる形の拒絶が描写されていて痛快。好き。「紫陽花」戦後の三角関係、身近な人の毒。そんなにピンと来なかった。「食卓の光景」高級中華店にて。物事が自分の身の丈に合っているかどうか、あまり考えたことがないのでこちらもピンと来ず。「不意の出来事」女のヒモであるヤクザに約束の金を用意しようとするが…。自尊心を守るためにいきなりアクセル踏み込んでて笑った、一人疾駆する男に対する気怠い女の対比が良い。 好きな作品を選ぶとすれば「童謡」「花束」か。巧みだと思ったのは「鳥獣虫魚」「青い花」「手毬」「出口」。

Posted byブクログ

2022/04/21

女性との冷めた関係を好むのは、臆病な自分が安心を求めるからか。ただ、どの主人公も悶々とせず涼やかである。女の情夫がやくざと聞いてもうろたえはしない。それはストーリーが淡々と進むように感じさせるが、先行きを想像させる結末に短編とは思えない余韻を得る。初めての著者の小説だが、他も読み...

女性との冷めた関係を好むのは、臆病な自分が安心を求めるからか。ただ、どの主人公も悶々とせず涼やかである。女の情夫がやくざと聞いてもうろたえはしない。それはストーリーが淡々と進むように感じさせるが、先行きを想像させる結末に短編とは思えない余韻を得る。初めての著者の小説だが、他も読みたい。2022.4.21

Posted byブクログ

2018/10/20

驟雨や原色の街より面白い。何度も娼婦稼業に戻る女、娼婦についていくと実は男娼で勤務先をやめて薬物中毒とオカマにハマる男、実は傷ついた肉体を持つ女との関係とすぐそばの死、ゴシップでタレントを揺する安い記者とヤクザと女の三角関係。陰気臭い話だが淡々と描かれて良い。

Posted byブクログ

2018/07/08

この直前に読んだ『原色の街・驟雨』より少なくとも当方にとっては全然上、評価も当然ながら上とならざるを得ず。 娼婦との関係という、少し厳しく言ってみれば私的な、小さな世界でストーリー展開していたのが、上手く昇華した感じ。まぁ熱狂的なファンからすると嫌なのかもしれないけれど、必要なス...

この直前に読んだ『原色の街・驟雨』より少なくとも当方にとっては全然上、評価も当然ながら上とならざるを得ず。 娼婦との関係という、少し厳しく言ってみれば私的な、小さな世界でストーリー展開していたのが、上手く昇華した感じ。まぁ熱狂的なファンからすると嫌なのかもしれないけれど、必要なステップアップという感ありです。つまり、性別問わず、育ちを問わず、誰もが自然に感情移入できるというか。まぁ上手いですよ、逆にそこが気になる位かもしれず。

Posted byブクログ

2016/09/25

この歳になって、やっと吉行淳之介をじっくり 読めるようになったろうか 僕にとって 娼婦とか吉原とか赤線とかって 谷崎や吉行や太宰の小説がイメージされる 歌舞伎町とかもそんなイメージで 思っていたが、実際はもっとデジタル的な 感じになっているかもしれない。 あるいは依存症とかメ...

この歳になって、やっと吉行淳之介をじっくり 読めるようになったろうか 僕にとって 娼婦とか吉原とか赤線とかって 谷崎や吉行や太宰の小説がイメージされる 歌舞伎町とかもそんなイメージで 思っていたが、実際はもっとデジタル的な 感じになっているかもしれない。 あるいは依存症とかメンヘラと言われるものに。 風俗に以前の情緒を求めてはいけない気がする。 まあ、でも溝口健二監督の映画『赤線地帯』とかは なんかしたたかさとか計算的なものを感じるから 一概には言えないのかな まあ現在でも風俗嬢と親身に話してみれば してることは昔と同じなのだから 昔と同じ情感はあるのかもしれない システムがデジタル的である、というべきか 吉行の描く娼婦は 今でこそベタな感じだが 多分かかれた当初は新鮮だったろうと思われる。 たぶん、吉行の眼が僕達のスタンダードな眼差しに なったというのが正解なんだと思う。 「傷ついた二匹の獣が、それぞれ傷口を舐めながら 身を寄せ合い体温を伝え合ってい」た 私の「眼の中で色褪せていく娼婦の町」 「秋子の部屋は、安息の場所ではなくなった」 ひとつひとつに定番を感じるのだ。 ああ、永井荷風の『墨東奇譚』を読も 以下藤田宜永の解説文より  売春婦と客は、愛情や恋心で繋がっていることはない。 金銭取引が成立した上で肌を交わらせる。 しかし、売春婦にしろ客にしろ人間だから、 気が合うことも起こりえるし、 そうなれば、人間的繋がりも発生する。 しかし、土台はあくまで金銭的繋がり。 よって、感情の垂れ流しに、一種の歯止めが かかっている関係といえる。  女に感情を垂れ流すのを恐れる男にとっては、 安心して“交流”できるのが“街の女”なのである。 …  恋することに対して、とても臆病になり、 肉体関係のみを、女との“人間的”繋がりと考えている 男の心が変容していく…。 吉行の娼婦を扱った小説の主人公は全員、 このパターンを踏んでいると言っても過言ではない。 

Posted byブクログ

2014/10/13

吉行淳之介の小説は、肉体とか性を通さないと生をつかめない登場人物に不条理を表現させているイメージなので、一見すると無機的なのかと思いきや、不思議な形で感情が介在している感じがします。そのバランスがなんだか癖になります。 この短編集では、『鳥獣虫魚』という作品がひときわ好きです。登...

吉行淳之介の小説は、肉体とか性を通さないと生をつかめない登場人物に不条理を表現させているイメージなので、一見すると無機的なのかと思いきや、不思議な形で感情が介在している感じがします。そのバランスがなんだか癖になります。 この短編集では、『鳥獣虫魚』という作品がひときわ好きです。登場人物たちの不安定に何かを求める感じと、色彩豊かじゃないのに鮮烈な色合いの感じが、すごく後を引きました。

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2014/08/01

吉行淳之介の初期の傑作短編13編を集めた作品集。ちょっとした情景描写や登場人物の挙動の行間に含むものがある。ただそこには人間性のどす黒い闇が直接的に描かれているわけではない。それどころかある種の非人間的な清々しさすら漂っている。しかしそれでいて不思議と心を捉える人間臭さが立ち篭め...

吉行淳之介の初期の傑作短編13編を集めた作品集。ちょっとした情景描写や登場人物の挙動の行間に含むものがある。ただそこには人間性のどす黒い闇が直接的に描かれているわけではない。それどころかある種の非人間的な清々しさすら漂っている。しかしそれでいて不思議と心を捉える人間臭さが立ち篭めている。「不意の出来事」はやはりその中でも傑出している。

Posted byブクログ

2011/10/19

某フェミニストの批判を切欠に手に取ってみた。 初期作品集だからか思ったほど過激でなく、エゴも鼻につかないレベルに見えたのだが。

Posted byブクログ

2009/10/07

一番好きなのは「鳥獣虫魚」。 「なにを見ても石膏色に見える」 というほどに重たく沈みきった心の主人公と 似顔絵描きの女の関わり合いを描く。 淡々としているのだけれど、読んでいると、 どこか橙色のあかりがぼうっと灯るような そんな感覚になるから不思議。

Posted byブクログ