翔ぶが如く 新装版(九) の商品レビュー
政府軍の進撃を早からしめた理由のひとつは、各地で降伏した薩軍の小部隊が、降伏するとともに政府軍の道案内をつとめ、薩軍の配置などを教えたからであった。べつに政府軍が強制したわけでもなく、「降伏したからには、官兵として働きたい」と、かれらが積極的に望んだからであり、その口上はさらに情...
政府軍の進撃を早からしめた理由のひとつは、各地で降伏した薩軍の小部隊が、降伏するとともに政府軍の道案内をつとめ、薩軍の配置などを教えたからであった。べつに政府軍が強制したわけでもなく、「降伏したからには、官兵として働きたい」と、かれらが積極的に望んだからであり、その口上はさらに情緒的で「万死を冒して前罪を償いたい」というものであり、一種、奇妙というほかない。このことは日本古来の合戦の慣習であったであろう。降伏部隊は鉾を逆にして敵軍の一翼になるというものであり、駒を奪ればその駒を使うという日本将棋のルールに酷似している。ついでながらこの古来の慣習はその後の明治陸軍の弱点として意識されつづけ、日露戦争のときも捕虜になった日本兵は日本軍の配置を簡単にロシア軍に教えた。とくに敵中へ深く入りこむ騎兵斥候が捕虜になる場合、騎兵の特質上味方の配置を知っているために、かれらが口を割ることによって日本軍の作戦がしばしば齟齬した。この体験が、昭和以後、日本陸軍が、捕虜になることを極度にいやしめる教育をするもとになったといっていい。
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ついに政府軍と薩軍が衝突する。薩軍は高い士気を武器に政府軍を押していくが、弾薬や食料などの必需品が政府軍のそれらよりも乏しく、徐々に勢いを後退していく。桐野を中心として、戦い、退却を繰り返していくが、ついに小部隊が政府軍に旗をあげることとなった。西郷の気分はどんなものだったのだろ...
ついに政府軍と薩軍が衝突する。薩軍は高い士気を武器に政府軍を押していくが、弾薬や食料などの必需品が政府軍のそれらよりも乏しく、徐々に勢いを後退していく。桐野を中心として、戦い、退却を繰り返していくが、ついに小部隊が政府軍に旗をあげることとなった。西郷の気分はどんなものだったのだろうか。
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戦も終局が見えてきた。 西郷率いる薩軍が、政府軍によって徐々に後退させられていく。 その中で、戦に命を賭す、士達が感動的だ。 何かに命を懸けられるというのは、強いエネルギーを秘めているだろう。 もちろん、今は命を賭してとは言えないだろうが、それに近いものをもって打ち込んでいくべ...
戦も終局が見えてきた。 西郷率いる薩軍が、政府軍によって徐々に後退させられていく。 その中で、戦に命を賭す、士達が感動的だ。 何かに命を懸けられるというのは、強いエネルギーを秘めているだろう。 もちろん、今は命を賭してとは言えないだろうが、それに近いものをもって打ち込んでいくべきだろう。 行動を起こすときに、最も大きな障害は自分自身の保守感だ。 これなら、と思えるものに心酔できれば、自分で足を引っ張ることもなく突き進めるだろう。 昔の日本人気質、武士道をもって日本の美徳としたいものだ。
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このころになると、序盤数多く登場していた大久保利通などはほとんど名前が出ず、西郷を中心とした、といっても案外忘れ去られてしまうのですけれども、西郷さん中心というよりも、九州(とくに熊本)を中心に舞台は展開されてゆきます。人というよりも地、という感じで、薩軍の西郷さんと、政府軍の山...
このころになると、序盤数多く登場していた大久保利通などはほとんど名前が出ず、西郷を中心とした、といっても案外忘れ去られてしまうのですけれども、西郷さん中心というよりも、九州(とくに熊本)を中心に舞台は展開されてゆきます。人というよりも地、という感じで、薩軍の西郷さんと、政府軍の山県有朋さん、という。
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まず、西南戦争がどの様なものだったか知らない人。僕の様にうっすらとしか知らない人は是非この本を読んで下さい。長いですけど、西南戦争の意味と西郷隆盛が分かります。西南戦争は序盤こそ薩摩有利でしたが、徐々に明治政府軍に押され始めます。その明治政府軍の模様や設立した背景など、細かく時代...
まず、西南戦争がどの様なものだったか知らない人。僕の様にうっすらとしか知らない人は是非この本を読んで下さい。長いですけど、西南戦争の意味と西郷隆盛が分かります。西南戦争は序盤こそ薩摩有利でしたが、徐々に明治政府軍に押され始めます。その明治政府軍の模様や設立した背景など、細かく時代背景と共に書かれており、手に取るように分かります。さて、西郷は以前傍観者の様な立場で過ごしています。司馬遼太郎さんが言うには、維新を成功させた西郷は策略などあらゆるものに気を使い、実行し、成功に導いた。しかし、西南戦争では、まるでそれから逃げるように傍観的だった。これはどういう意味を指すのでしょうか? 西郷隆盛の心情がなんとなく分かる気がしました・・・。単に大将として兵を率いたのではなく、兵に率いられた、そんな気さえします。
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この時代、人望というものを外して、佐川官兵衛も理解できねば、西郷も理解できず、その他、諸地方で方向を見出しかねるままに渦を巻いているエネルギーの核になっているひとびとも理解できない。 人望家たちが人望を吸引している、というよりも、世間一般に人望家を待ち望んだり、恋い慕ったりする異...
この時代、人望というものを外して、佐川官兵衛も理解できねば、西郷も理解できず、その他、諸地方で方向を見出しかねるままに渦を巻いているエネルギーの核になっているひとびとも理解できない。 人望家たちが人望を吸引している、というよりも、世間一般に人望家を待ち望んだり、恋い慕ったりする異常な偏好が存在した、と見るほうが、なだらかであろう。(p.104)
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