夜と霧 新版 の商品レビュー
心理学者で精神科医であったヴィクトール・E・フランクルが自ら体験したアウシュヴィッツ強制収容所での生活を記録した作品。 フランクルはウィーン大学で医学を学び、1941年には同じ病院で働いていた看護婦と結婚、順風満帆な暮らしを営んでいたが1942年、ユダヤ人であるという理由からナチ...
心理学者で精神科医であったヴィクトール・E・フランクルが自ら体験したアウシュヴィッツ強制収容所での生活を記録した作品。 フランクルはウィーン大学で医学を学び、1941年には同じ病院で働いていた看護婦と結婚、順風満帆な暮らしを営んでいたが1942年、ユダヤ人であるという理由からナチスに捕らえられアウシュヴィッツに送られた。彼は、まさに地獄のような収容所生活を耐え抜き、1945年4月の戦争終結によって解放されるが、妻や両親は収容所で命を奪われていたという辛い知らせを受ける。 そんな状況で、失意のどん底にありながら、並外れた精神力で強制収容所の体験を精力的に綴ったのが本書である。 劣悪な生活環境や過酷な労働で体力が落ちるとガス室に送られる恐怖と絶望の中で、彼は生き残った。その背景には、持ち前の不屈の精神力に加え、心理学者として現場で頼りにされたこと、偶然の奇跡が重なったことなどがあった。 被収容者の中で、劣悪で残忍、サディストの資質がある者は、他の被収容者を監督する側に回り「カポー」と呼ばれていた。フランクルは心理学者として彼らカポーの悩みを聞いてやったことで恩義を獲得、優遇されることもあったようだ。 それにしても「無期限の暫定的存在」で未来が見えず、感情が消滅し精神が崩壊、死体の肉を食べるような状況下、ユーモアや洒落を提案したりするフランクルの冷静さには恐れ入った。 クリスマスには家に帰れると思っていた多くの被収容者がそうならなかったことから、彼らの体の抵抗力に危険な作用を生じさせ、この時期に大量死を招いたなどといった分析力や豊かな哲学的知識にも驚嘆させられた。 アウシュヴィッツ内部を描いた小説や手記は多々あると思うが、この本は身を持って実態を伝える迫真力、被収容者の心理描写という点で他の追随を許さない作品であると感じた。
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・人は環境に適応する ・どんなに極地に追い込まれようとも、愛が支えになる ・自分がなぜ存在するのかを知っていることでどのようなものにも耐えられる
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"わたしが恐れるのはただひとつ、わたしがわたしの苦悩に値しない人間になることだ" 行動的に生きることや安逸に生きることだけに意味があるのではない。 およそ生きることに意味があるとすれば、苦しむことにも意味があるはずだ。 苦しむこともまた生きることの一部なら、...
"わたしが恐れるのはただひとつ、わたしがわたしの苦悩に値しない人間になることだ" 行動的に生きることや安逸に生きることだけに意味があるのではない。 およそ生きることに意味があるとすれば、苦しむことにも意味があるはずだ。 苦しむこともまた生きることの一部なら、運命も死ぬことも生きることの一部なのだろう。 苦悩と、そして死があってこそ、人間という存在ははじめて完全なものになるのだ。 生きる意味について問う•生きることからなにを期待するかではなく、 生きることがわたしたちからなにを期待しているかが問題 考え込むことではなく、行動によって、適切な態度にやって、正しい答えが出される
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SL 2024.9.24-2024.9.26 原題の「心理学者、強制収容所を体験する」のとうり、ホロコーストでの極限状態を冷静に、でも体験した者にしか語れない深い洞察で、心理学者として著した作品なんだと思う。 作者の強靭な精神力に感嘆しかない。 長い間読みたい、読まなければと思っ...
SL 2024.9.24-2024.9.26 原題の「心理学者、強制収容所を体験する」のとうり、ホロコーストでの極限状態を冷静に、でも体験した者にしか語れない深い洞察で、心理学者として著した作品なんだと思う。 作者の強靭な精神力に感嘆しかない。 長い間読みたい、読まなければと思っていた作品。ただ今のタイミングはあまり適切ではなかったかもしれない。今のガザ地区へのイスラエルの攻撃を見れば哀しすぎる。不正を働かれた者であっても不正を働く権利などないのに。
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ユダヤ人として実際に収容された医師が、どうその時期を乗り越えてきたかという話。 実話だと思えない位の悲惨な出来事にも関わらず、自我を保ち生きてこれたことが本当に凄い。 辛くなった時に、この人の辛さに比べたらまだまだ‥!と自分を奮い立たせてくれる本。
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極限的な環境で人がどうなるか、自身の経験を下に後世に伝える貴重な話。非常に読みやすく一気によみすすめた。今後、いろいろな経験をするたびに本書を何度か読み返したい(今回、足を痛めて、少し気が滅入った際に手にとりました)。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
衝撃だった。世界史選択でもないけれど当たり前に知っているアウシュビッツ収容所での、被収容者が体験した出来事。事細かに、リアルに、生々しく描かれていて読むのも苦しいくらいだった。精神医学者である主人公の人が、劣悪な環境下にそして無期限に閉じ込められといてもその上で人格が壊れない凄さ、そして学問に対する執念、ほかの被収容者を助けようとする力、全てに賞賛したいと思った。そして被収容者の心理的な部分、がとても興味深かった。生きる意味とは、生きる意味を説明する義務が自分たちにある、そういう考え方はした事がなくて自分の長年の問いにストンと落ちて納得ができた。カポーもまた人間であって、カポーだからといって全ての人間を悪人と決めつけるべきでは無いという考え方も、自分には到底できないと感じた。 極端で、ほとんどの人が生涯味わうことがないであろう劣悪な環境下で、ここまで客観的な文章が書けるだろうか。そこから作者の学問に対する熱意を感じました。苦しむこともまた生きる意味になる、勉強になりました、、。
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強制収容所での実体験をもとに人間の心理的な働きが書かれているが、これは生き方の本と捉えている。想像もつかない状況においても、他者を気遣い、ユーモアを持ち、愛を感じることが人間はできる。スケールが大きすぎる話に思えるが、日常の些細な出来事一つ一つに応用できる、こう生きたいと感じた本...
強制収容所での実体験をもとに人間の心理的な働きが書かれているが、これは生き方の本と捉えている。想像もつかない状況においても、他者を気遣い、ユーモアを持ち、愛を感じることが人間はできる。スケールが大きすぎる話に思えるが、日常の些細な出来事一つ一つに応用できる、こう生きたいと感じた本。
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遠藤周作先生の本で知って以来ずっと読みたかった作品。アウシュヴィッツに収容されていた心理医師の経験。生きる事も苦しむ事をも放棄してしまう状態、その深い意味・考察とは…。 元々興味がある分野だが、見聞きする程に辛さや痛さ…あらゆる感情が蠢く。 感覚・感情が残っている人、客観的な判断...
遠藤周作先生の本で知って以来ずっと読みたかった作品。アウシュヴィッツに収容されていた心理医師の経験。生きる事も苦しむ事をも放棄してしまう状態、その深い意味・考察とは…。 元々興味がある分野だが、見聞きする程に辛さや痛さ…あらゆる感情が蠢く。 感覚・感情が残っている人、客観的な判断が生き抜いて著を残してくれたことさえ奇跡的だったのだろう。それには感謝しかない。
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極限状態に陥ると人間の感情はどんどん失われていく。 そしてどんな環境にも順応していくもの。 時代遅れかもしれないが、根性論や愛の力は衰えの知らないパワーを生み出すのだと改めて感じた。
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