堕ちた天使 の商品レビュー
ロシアの人気作家、ボリス・アクーニンの大人気シリーズ(らしい)。 ファンドーリンという若干うだつのあがらなさそうな青年警官が活躍する歴史探偵小説。 日本で言うところの時代小説だとおもう。 うだうだしながらも1日で読み終わったしてしまった。
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自分がミステリーモノでなくなって暫く経つように思うが、ボリス・アクーニンを知ってミステリーの楽しさ、それはコナン・ドイルを読書遍歴の根源とする自分にとって読書の楽しさそのものとも言えるけれども、を久しぶりに堪能することができることが単純にうれしい。そんな自分のミステリーに対する不...
自分がミステリーモノでなくなって暫く経つように思うが、ボリス・アクーニンを知ってミステリーの楽しさ、それはコナン・ドイルを読書遍歴の根源とする自分にとって読書の楽しさそのものとも言えるけれども、を久しぶりに堪能することができることが単純にうれしい。そんな自分のミステリーに対する不真面目さを棚に上げておいて言うのもおこがましいが、ファンドーリン・シリーズを途中から読み始めた者はきっと、このシリーズ第一作の「堕ちた天使−アザゼル」を読まずにはいられないだろうと思う。 もちろん、シリーズ3作目・4作目の中で度々触れられていたファンドーリンの過去、その謎が解けてすっきりすることは間違いなし。しかし、そんなことよりも、シリーズ第一作のこの本からボリス・アクーニンがとてつもなく大きな絵を描いていたことに驚いた。そして悔しく思うのは、このシリーズの未読の作品がいつくもあるというのに、原作で読むこともままならず、じっと露語からの邦訳を待つしかないということなのだ。(いっそのこと英訳で読むかとも思う) それにしても、ファンドーリンの人物像が余りに大きく違うことに驚く。もちろんファンドーリンが過去に何か大きな教訓を得て、そのことによって成長したのであろうことは仄めかされていたけれども、最初から快刀乱麻の如く活躍するホームズとの対比を待つこともなく、ヒーローとしての登場の仕方としては随分と微笑ましいところのある好青年振りである。その影で、そんな好青年が知る由も無い巨大な「悪」が蠢く構図。この息の長いロシア音楽のフレーズを思い出させるような枠組みを見て、ボリス・アクーニンの文学者として力量に想いが至る。 しかも、このカギ括弧付きの「悪」は古典的な探偵ものにありがちな勧善懲悪の「悪」ではなく、タイトルが暗示するように、善を補完するようなもの、それはすなわち現在の為政者が、あるいは社会構造が肯定する「善」と対峙し、より人間的な側面を保護する存在としての「悪」である。 そんなボリス・アクーニンの意図する深い思いを底流に感じながら、ファンドーリンの成長していく様を眺めるとこのシリーズの人気が改めて解るような気がしてくる。 しかしファンドーリンと日本のつながりについて、この一作目は何も教えてくれなかった。ああ、結局何とかして2作目を読まなければならない気持ちが残ってしまうのが、悔しくもありうれしくもあり、というところである。
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