うるわしき日々 の商品レビュー
歳を感じさせない筆致…
歳を感じさせない筆致で描かれた作品。息を付く閑なく、読者は圧倒的な興奮を味あわされることだろう。
文庫OFF
引き込まれること間違…
引き込まれること間違いなし!老夫婦が苦心するおはなし
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小島信夫の独特の文体のまま、老人の浮かんでは消える頭の中がそのまま文字となり、読者を振り回す一冊。 後期は本当に読みづらいが、シリアスと滑稽は健在で面白く感じてしまうのが不思議。
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不確かだったり、曖昧だったりする過去の記憶や意識を整えることなく、そのまま忠実に描かれているように感じる。ラストのボルヘスの引用のように、過去に体感したイメージそのものを思い出すことは理論上不可能であるということについての悲しさ、記憶=人生そのものと考えた場合の忘却していくことの...
不確かだったり、曖昧だったりする過去の記憶や意識を整えることなく、そのまま忠実に描かれているように感じる。ラストのボルヘスの引用のように、過去に体感したイメージそのものを思い出すことは理論上不可能であるということについての悲しさ、記憶=人生そのものと考えた場合の忘却していくことの儚さを感じてしまった。ドラマティックな展開は少なく、さりげないやり取りのシーンが多いせいか、作品全体の印象はどこか朧げである。このように朧げな読後感しか残らない構成こそがこの作品のテーマのようなものを象徴しているとも言えるのではないか。
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今考えると、小島信夫が大手新聞の朝刊にこの小説を連載していたという事実じたいが恐ろしい。『抱擁家族』の続編で、八十歳を越した小説家がアルコール依存症の息子と健忘症の妻との間で右往左往する話だが、例によって物語の結構は「作者であるところの小島信夫」によってぐちゃぐちゃにされている。...
今考えると、小島信夫が大手新聞の朝刊にこの小説を連載していたという事実じたいが恐ろしい。『抱擁家族』の続編で、八十歳を越した小説家がアルコール依存症の息子と健忘症の妻との間で右往左往する話だが、例によって物語の結構は「作者であるところの小島信夫」によってぐちゃぐちゃにされている。虚実を隔てるべき門はつねに少しだけ開いていて、そこから魔物が出入りするように、雑多な情報が現れては消えてゆく。その出入り方も不気味だが、すべての情報は「小島信夫」の脳内を通過しているために微妙なずれが生じ、その微妙なずれが波状に重なり合いながらこちらへ押し寄せて来る感じがたまらない。最後はまるで主人公が自分の小説に復讐されているかのような終わり方だが、それもやはり「小島信夫」によって演出された罠であることにやがて気づき、この小説家の狡猾さと枯れない意地みたいなものに素直に感動してしまった。
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