都市空間の怪異 の商品レビュー
筑波大学名誉教授、宮田登 著。 妖怪に伴う音。 大学院の「民俗学演習IA」の参考書として使用。各地の目撃例を収集し、時代ごとに具体例を次々に紹介する。考察や議論は控えめにして、とにかく多様な現象と体験談に触れることができる。 妖怪の奇妙な音を、記録し表現したオノマトペを取り上げ...
筑波大学名誉教授、宮田登 著。 妖怪に伴う音。 大学院の「民俗学演習IA」の参考書として使用。各地の目撃例を収集し、時代ごとに具体例を次々に紹介する。考察や議論は控えめにして、とにかく多様な現象と体験談に触れることができる。 妖怪の奇妙な音を、記録し表現したオノマトペを取り上げたのが特長的で、興味深い。類型化できるものから、とんでもなく不思議な表現「ジャンビジャンビ」まで記録に残る。 小豆研ぎのように漫画でお馴染みのキャラクターも登場して親しみやすい。水木しげるの模写元になった図画が挿入され見て楽しめる。その他、映画、小説、雑誌、落語などなど各種メディアからの題材が豊富である。 学園都市として、筑波大学の学生宿舎に出没する霊がまとまっているのも特筆すべき点である。学校でのエピソードとして、小学生の“菌移る”言説を、日本の伝統的な民俗として穢れの伝播で説明したりと、身近な現象をぐっと学問的な考察に引き込む。 読んでいて疑問を抱く所がありモヤモヤを感じたのだが、出版前に著者が他界した事情があったようで巻末に加えられた20ページを超える解説者の追補によって疑問も解消された。 目次 ○妖怪と人間との交流 1.妖怪の音声 2.妖怪からのメッセージ ○妖怪と幽霊 3.幽冥界 4.幽霊と妖怪 5.幽霊の描かれ方 ○都市と妖怪 6.都市の怪異 7.東京の魔所 8.異界との交流 9.鏡花と妖怪文化 ○近現代社会の妖怪 10.若者の霊魂観 11.都市空間の妖怪 ○解説 12.宮田登の妖怪論
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●:引用、→:感想 ●小学校3年の時の体験で『小学三年生』という雑誌で花子さんの記事を読んだという。自分の学校にも花子さんがいないか、体育館とか女子トイレにいるかもしれないと思い、友だちを集めて先導して実験してみた。(略)しかし、みつからなかった。もう飽きてやめた頃には、花子さんがこの学校のどこそこに出るという噂だった。高校2年生の時、学校で誰かがトイレをノックするという怪談を聞いた後、いつもと違う階のトイレを使った。すると、扉をコツコツ叩く音がするので驚いたが、すぐに扉が傷んでいることに気がついて、友だちと笑いあった。ところが、2,3日すると、そのトイレに霊が出るという噂が学校中に広まっていた。 →「超常現象の科学ー人はなぜ幽霊が見えるのか」 ●著者は民俗学者として広く知られているが、じつは出身は日本史である。近世の民衆思想史から出発して民俗学に分け入ってきた。その知識の中核には、近世の厖大な随筆類から得た近世の江戸の町民たちの信仰生活に関する豊富な知識があり、その知識を巧みに活用しつつ、民俗的なテーマを多角的に深めてきたのである。すなわち、著者は、こうした知識を十分に手に入れたうえで、民俗学者が調査を通じて直接採集した近現代の庶民生活文化の知識を渉猟し、両者の知識を合わせながら議論を展開したのであった。彼にとっての「都市」とは、何よりもまず「近世の江戸」という「都市」であった。(略)そして本書に引きつけていえば、「妖怪」もまた「江戸の妖怪」であったのである。 ●宮田登はいろいろと配慮して、あまり断定的な言い方をしない研究者であった。 ●宮田の議論の展開の仕方は、つねに類似した事例を次々に繰り出して、若干のコメントをそれぞれに付すといった程度のあいまいな考察で、はっきりとした結論を出さない。 →「妖怪の民族」、本書を読んで、分かったような分からないような印象を受けた理由が分かった。 ●このような物語構造をとる近世の都市の怪異伝承に知悉していた宮田が、現代の都市における怪異のフォークロアやホラー小説などにも関心を寄せていたのは、現代の物語もまた、表面的には現代的な装いをとっているが、その基本構造は近世のそれとあまり変わっていないという思いがあったからである。たとえば、宮田はアメリカ映画の『ポルターガイスト』や鈴木光司の小説『リング』を面白がっていた。これは、そこに近世的怪異・妖怪現象と通底するものを見いだしていたからである。なるほど、たしかに、たとえば『リング』などは、近世の「皿屋敷」や「池袋の女」の現代版とみることも可能である。
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記録だけ 2009年度 12冊目 『都市空間の怪異』 宮田 登 著 株 角川書店 角川選書 311 平成1311月30日 212ページ 1300円 『都市空間の怪異』を楽しむ。 いつもより角張った文章だと...
記録だけ 2009年度 12冊目 『都市空間の怪異』 宮田 登 著 株 角川書店 角川選書 311 平成1311月30日 212ページ 1300円 『都市空間の怪異』を楽しむ。 いつもより角張った文章だと思っていたが、著者が亡くなられてから企画書やメモなどを元に、本書をまとめられたとのこと。 なるほど。 内容は面白かった。 辻占いは、現在の堺市が初めらしい。 安倍晴明が摂津の国と和泉の国の境の辻で占いを始めたのは最初とのこと。 それにしても 安倍晴明はあちこちに足跡を残して織るなぁと、感心する。 宮田登氏や本多勝一氏に度々出てくる『エンガチョ』と出てくる言葉は、私の時代或いは故郷では『ベンショ、ベンショウ。鍵 のんだ』だったな。 懐かしいな。 祟りという言葉は、タツから来ているそうだ。 感じに書くと、なるほど「立」に「示す」 日本人はこの祟りにはきわめて執着が深いそうだ。 祟りや執着といえば 私の場合はすぐに『鉄輪』を思い浮かべてしまうな(笑み) 世の男性諸君、女性を敵に回すのは、それ相応の覚悟を。 思いの外 怖いですぞ〜、なんちゃって。(笑み)
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正直に言って、宮田登という人がいなくなってしまったことが私は悲しい。最後まで未完な人だった。最後の最後の本となるのがこの本。まあ、そこに深い意味はないのだけれど。 彼のフォルクロアに対する深い関心には感動するし、その広い知識も素晴らしい。しかし、彼には後20年欲しかった。そう思う...
正直に言って、宮田登という人がいなくなってしまったことが私は悲しい。最後まで未完な人だった。最後の最後の本となるのがこの本。まあ、そこに深い意味はないのだけれど。 彼のフォルクロアに対する深い関心には感動するし、その広い知識も素晴らしい。しかし、彼には後20年欲しかった。そう思う。 この本は彼の本の中でも相当に仕上がりがいい本だと思う。それは本人の意図を通す努力が最後に行なわれているからだ。本当に些細なことにまで興味を感じてしまう彼はいつも主張が薄れてしまうような文章を作ってしまう。そこが毎度難点だった。この本はそこが少し救われている。それは彼の深い友であった小松和彦さんの力が作用しているように思う。小松さんは主張のゆるがない文章をもって同じフォルクロアの世界を描いている。今回、本の末尾に小松和彦による文章が加えられている。これが世界をきちんと提示してくれているのが何よりもこの2人の関係を判らせてくれる。 確かに主張がきっちり描けないのは欠点である。でも、それを含めて私は宮田登という人の文章が好きだった。 どこまでも持ち上げられている柳田邦男の世代の陰にありつつ、深い仕事をしてきた人だと思う。
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