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ぼくらはみんな生きている の商品レビュー

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32件のお客様レビュー

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2011/03/20

副題は、「18歳ですべての記憶を失くした青年の手記」。 大阪芸大1年生のときのスクーター事故で、前頭葉を損傷。18歳以前の記憶をすべて失ってしまった坪倉優介さん。 言葉はわかっても、それが意味すること、概念はまったく理解できなくなっていました。 「食べる」という言葉は理解できて...

副題は、「18歳ですべての記憶を失くした青年の手記」。 大阪芸大1年生のときのスクーター事故で、前頭葉を損傷。18歳以前の記憶をすべて失ってしまった坪倉優介さん。 言葉はわかっても、それが意味すること、概念はまったく理解できなくなっていました。 「食べる」という言葉は理解できても、「食べる」という行動は忘れていました。 「お腹が減る」感覚もない優介さんは、放っておかれると二三日食事をしなくても気がつかない。 食べはじめると、いつ食べ終わればいいのかわからなくて、苦しくても食べ続けてしまうのでした。 18歳にして、新たな脳の神経回路を繋ぐことが必要でした。 赤ちゃんからの学び直しです。  かあさんが、ぼくのまえになにかをおいた。けむりがもやもやと出ているのを見て、すぐに中をのぞく。  すると光るつぶつぶがいっぱい入っている。きれい。でもこんなきれいなものを、どうすればいいのだろう。 優介さんの目には、ご飯がこんなふうに映っていました。 お母さんにチョコレートをもらったときは、こんなふうに感じました。  口の中にほうりこむ。すぐにペチャンコになって、口の中いっぱいに味がひろがっていく。  かあさんが、「すごくあまいでしょ」ときいてくる。この味は、あまいというのか。  もっとほしい。もっとたべてみたい。そう言ったけれど、かあさんに「今日はこれでおしまい」と言われてしまった。だから、しかたなくあきらめる。  でも、あまいという味をわすれることができない。 失われた18年間を思い出そうとはしました。でも、まったく思い出せません。 事故から5年、もどかしくもあり、切なくもある優介さんの学び直しが、ほとんど完了したと思わせるエピソードが描かれています。 たまたま帰った実家の近くで、高校時代の友人にばったり出会い、「高校時代の仲間と一緒に飲むから」と、居酒屋に連れていかれます。 二人が加わって、四人で飲みますが、実は誰一人として思いだせません。  すると、そこにいる一人が、ぼくに、「優介は何してるんや」と聞いてくる。だからぼくは「学生」と答えた。  友だちは「あれえ、学生。まだやってるんか」と言う。他のみんなもうなずいて、「何か、長くないか」と聞く。  そうか。この人たちは、ぼくにどんなことがあったのか知らないのだ。  ぼくは、一瞬さみしくなったけれど、事故のことを全部話して、同情を買うのはごめんだった。  だから、まだ学生をやっている話に自然になると、  「いやあ、おれも勉強不足だからなあ」と笑ってごまかした。 このくだりで、私は優介さんのお母さんであるかのような感動を覚えました。 事故で脳がリセットされてしまい、赤ちゃんからはじめた優介さんが、名前を思い出せない友人たちと飲みながら、曖昧さを残したまま、大人びた会話が交わせるようになるなんて。 優介さんも、優介さんの脳細胞も、すさまじい成長をとげたのでした。

Posted byブクログ

2011/07/16

サブタイトルは「18歳ですべての記憶をの失くした青年の手記」。現在は草木染作家として活躍している著者の、記憶喪失となる事故直後からリハビリ時期、そして自立に至るまでの12年間について書かれた手記である。つい最近、テレビでも取り上げられ、朝日新聞から「記憶喪失になったぼくが見た世界...

サブタイトルは「18歳ですべての記憶をの失くした青年の手記」。現在は草木染作家として活躍している著者の、記憶喪失となる事故直後からリハビリ時期、そして自立に至るまでの12年間について書かれた手記である。つい最近、テレビでも取り上げられ、朝日新聞から「記憶喪失になったぼくが見た世界」と改題されて文庫化されている。脳科学が発達しても、なお解明出来ない記憶の不思議があるものだ。 著者は、大学へ入学して間もない1989年6月に、スクーターを運転しての帰宅途中にトラックに激突し、10日間の昏睡状態に陥る。外傷は少なかったものの、クモ膜下出血を起こしており、目覚めた時点でそれまでの記憶を全て失っていることが判明する。通常の記憶喪失は、それまでに学習して知識として身につけた記憶(陳述記憶)の一部だけを失うことが多いのだが、著者の場合は、食事の仕方など体験して体で覚えた記憶(手続き記憶)までもを失っていたのだ。言葉も感覚もまるで赤子の状態に戻ってしまった著者は、家族の助けを借りて一から人間としての生き方を学び始める。著者は3歳児のような学習意欲と世の中を素直に見ようとする純な心で、次第に新しい自分らしさを発揮することに成功していく。事故前までの、髪の毛を突っ立てていたやんちゃぶりが嘘のような変身ぶりだ。結局、事故以前の記憶を取り戻すことはなかったものの、美しいものへの興味とそれを染色で表現しようとする努力のおかげで、自然を愛するやさしい心と新たな記憶を持つことになる。芸術を学ぶ大学へ無理にも復学させた両親の勇気が見事に実を結んだわけだ。 各章の文末にひっそりと寄せられている「母親の記憶」が、著者の折々の歩みを記録していて、著者の心の動きをしっかりと裏付けて感動的。

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2010/08/17

「18歳ですべての記憶を失くした青年の手記」なんて言葉が表紙にある。「ああ、記憶喪失か」って思って読んでみたのだけど、これって僕がイメージしてる「記憶喪失」ってのと少し違った。記憶をなくすってことが、たとえば自分の名前を覚えていないってことだってイメージはある。「ごはん」が「きら...

「18歳ですべての記憶を失くした青年の手記」なんて言葉が表紙にある。「ああ、記憶喪失か」って思って読んでみたのだけど、これって僕がイメージしてる「記憶喪失」ってのと少し違った。記憶をなくすってことが、たとえば自分の名前を覚えていないってことだってイメージはある。「ごはん」が「きらきらと光って煙みたいものの出ている白いやわらかそうなつぶつぶ」としてしか見えない。それが食べるものであるってことを教わる必要がある。  つまり、生まれたばかりの子供がやるような、世界の再構成を18歳から始めて、大学に行き草木染め作家になった人の手記である。  再構成ってことをいろいろ考えさせられたし、言語表現ってこともいろいろと考えた。でも意地悪にいえば、多分出版社がねらっていたであろうような形では「感動」しなかった。あ、時々挿入されるお母さんの文章、こっちは涙が出た。新しいものを作ったり見つけたりする人よりも、はらはらしながらそれを見守ってる人の方に感情移入する年になったってことなのかな。

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2009/10/04

手に取ったきっかけは、ブックオフで100円だったこと。 作者は大学生のときにバイクで事故をおこして 記憶を失くす。 「記憶喪失」とは、人を思い出せない、過去にしてきたことを 思い出せない。 そういうことだと思っていました。 でも作者は、生きていくうえで必要な小さい頃か...

手に取ったきっかけは、ブックオフで100円だったこと。 作者は大学生のときにバイクで事故をおこして 記憶を失くす。 「記憶喪失」とは、人を思い出せない、過去にしてきたことを 思い出せない。 そういうことだと思っていました。 でも作者は、生きていくうえで必要な小さい頃から学んだこと すべてが無くなっているのです。 食べること・飲むこと・寝ること。そんなことから。 「どうして夜になると寝るの?」 「キラキラしたやつ=100円玉」 ひとつひとつ疑問を感じて、理解して、折り合いをつけていく。 その心の動きを綴ってあるのですが、 生まれて大きくなっていく子供は こんな視点で世界を見ているのかなと感じた。 「昔の自分」がわからないことが不安だった彼が、 今では「今はもう、昔の記憶が戻ることが怖い」という言葉が印象的。。 2007読了  BOOK OFF¥105

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2009/10/04

この本は確か中学生くらいのときにはじめて読んだはず。 何よりドラマとかのイメージしかなかった記憶喪失という認識を変えられた一冊だった。 記憶喪失って記憶が一部分なくなるんだと思ってた。 しかし彼は全てを忘れてしまった。 みんなのことも自分のことも、食べ方もトイレのいき方も、言葉ま...

この本は確か中学生くらいのときにはじめて読んだはず。 何よりドラマとかのイメージしかなかった記憶喪失という認識を変えられた一冊だった。 記憶喪失って記憶が一部分なくなるんだと思ってた。 しかし彼は全てを忘れてしまった。 みんなのことも自分のことも、食べ方もトイレのいき方も、言葉までも。 周りの悲しみも本人の戸惑いも想像を絶するものだったと思う。 普通に生きていること 昨日を知っていること 明日がくること 当たり前がこんなに大切なことなのだと知りました。

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2011/12/21

精神のせいじゃなく、純粋に事故のせいですっとんじゃった記憶を「やりなおす」のは本当にイチからで、言葉とか常識とか、それ以前にこれは食べ物なのかとか、そういうところから始めなきゃならない。 多分そうとう無理して頑張ったんだろうと思う。 でも、すべてが知らないもので、それを綺麗だと...

精神のせいじゃなく、純粋に事故のせいですっとんじゃった記憶を「やりなおす」のは本当にイチからで、言葉とか常識とか、それ以前にこれは食べ物なのかとか、そういうところから始めなきゃならない。 多分そうとう無理して頑張ったんだろうと思う。 でも、すべてが知らないもので、それを綺麗だと思うような、新しく知っていく喜びがそこらじゅうに満ちているような場面があるから辛いばかりじゃなく読める。 日常ってこういうものだ。

Posted byブクログ

2009/10/04

18歳で交通事故にあい、記憶を無くしてしまった青年の手記。自分の事、家族の事、物を食べるということ、お金の概念、すべてを覚えなおしていく。最初は記憶をなくしたことを悲観的に考えていたけど、最終的には記憶が戻らなくてよく、また、記憶がなくなってよかったこともあると前向きに生きていく...

18歳で交通事故にあい、記憶を無くしてしまった青年の手記。自分の事、家族の事、物を食べるということ、お金の概念、すべてを覚えなおしていく。最初は記憶をなくしたことを悲観的に考えていたけど、最終的には記憶が戻らなくてよく、また、記憶がなくなってよかったこともあると前向きに生きていく姿に心がうたれた。

Posted byブクログ

2009/10/07

家族は、どんな思いで、記憶をなくした息子を、大学に通わせ、一人暮らしをさせ、やりたいという事を、すべて、受け入れたのだろう。生きているだけで、素晴らしい事がたくさんあるという事を、思わずにはいられない。

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2009/10/04

記憶なくしたらすっごい色々忘れちゃうんやなー。って思った。ただ身近なことだけ忘れるんやと思ったてたから。

Posted byブクログ

2009/10/04

― そう思うと、なにかが背すじを通っていく。それを声に出したい。「かあさんだよ」・・・それをきくと、ひっかかっていたものが、なくなっていく。胸があつくなる。かあさん。ぼくのかあさん ― 大学1年の6月、バイク事故にあった坪倉優介さんはそれまでの18年間のすべての記憶を失くした。言...

― そう思うと、なにかが背すじを通っていく。それを声に出したい。「かあさんだよ」・・・それをきくと、ひっかかっていたものが、なくなっていく。胸があつくなる。かあさん。ぼくのかあさん ― 大学1年の6月、バイク事故にあった坪倉優介さんはそれまでの18年間のすべての記憶を失くした。言葉も、字を書くことも、ごはんの食べ方も、そして家族の意味さえも・・・。それからの新しい人生、新しい記憶が愛しく感じられるようになるまでの彼の軌跡。

Posted byブクログ