1,800円以上の注文で送料無料

殺人者の顔 の商品レビュー

3.6

75件のお客様レビュー

  1. 5つ

    10

  2. 4つ

    29

  3. 3つ

    23

  4. 2つ

    5

  5. 1つ

    2

レビューを投稿

2021/09/08

 スウェーデンのミステリー作家ヘニング・マンケルの''ヴァランダー刑事''シリーズの初刊です。現在邦訳作品は、創元推理文庫から12作発表されてます。  ヴァランダーは、スウェーデン南部(胡蝶蘭の様に垂れ下がった島がスウェーデンとしてその先っ...

 スウェーデンのミステリー作家ヘニング・マンケルの''ヴァランダー刑事''シリーズの初刊です。現在邦訳作品は、創元推理文庫から12作発表されてます。  ヴァランダーは、スウェーデン南部(胡蝶蘭の様に垂れ下がった島がスウェーデンとしてその先っぽ)のスコーネ地方のイースタという小さな街の警察署の刑事です。  事件は、イースタの西にある田舎町の農夫が隣家の友人農家宅で人が死んでいると通報が有った。隣人の農夫は惨殺されその妻はロープで首を絞められていた。犯人は強盗目的と思われるが、老夫婦には狙われる様なお金は持っていなかった。  容姿は中年のそのままで趣味はクラッシックオペラ、妻からは離婚を宣言され別居中で未練タラタラ、父親は痴呆症、娘も寄り付かない悲惨なプライベートだが、捜査に手抜きは無く不眠不休で犯人を探す執念は凄いヴァランダー刑事。  惨殺された農夫は戦後、闇の商売や違法な商売で相当の金を蓄えた上に絞殺された妻以外に子供を産ませた女が居る事が判明した。金目当ての犯行か、  この事件は1990年に起こった設定です。既に難民(ポーランド等の東欧)流入が社会問題化しており、田舎町イースタでも例外でなく大きな問題だった。この物語はスェーデンの難民問題を背景に様々な事件が発生し難民もスェーデン人も加害者であり被害者なのだ。  スェーデンは日本の1.2倍位の国土に1,000万人が暮らしてます。分母が小さいのに積極的に移民受け入れをし首都ストックホルムでは人口の2割が移民で人種の坩堝と化してます。  本作では、難民、移民を排斥するとか受け入れるとかの政治的な話題は一切有りません。  派手さは無く淡々と物語は進行しますが、駄目な中年ヴァランダーから目が離せない面白さが有ります。

Posted byブクログ

2021/05/09

名推理があるわけでもなく、見込み違いや捜査の停滞もあり、ザ警察小説という感じ。特捜部Qシリーズが巻を追うごとに長く、筋の事件と関係ない事件やエピソードが増えて食傷気味になってきたので、今度はこちらに期待しよう。

Posted byブクログ

2021/05/07

あーいやだ、いやだ……。 いやになるほどの孤独な中年男性の生活。 出て行った妻へたたみかけるように詰問する姿、前頭葉の老化による感情コントロールの低下に刑事という職業の癖が加わり相手を不快にする……そりゃ逃げるわ〜。 そのくせ、「褐色の女性」との妄想や、女性検察官へのちょっかい...

あーいやだ、いやだ……。 いやになるほどの孤独な中年男性の生活。 出て行った妻へたたみかけるように詰問する姿、前頭葉の老化による感情コントロールの低下に刑事という職業の癖が加わり相手を不快にする……そりゃ逃げるわ〜。 そのくせ、「褐色の女性」との妄想や、女性検察官へのちょっかい……。 妻や娘のことも、父親のことも、逃げるようにしてお酒に埋没したり、お腹ができたことを気にしながら、サラダをいやいや食べる姿など、ゾッとする。 数十年会ってない友人に突然しつこく電話したり、慌てて隠れた時にぶつかった怪我も「殴られた」とうそぶく……。 いったいこの人のどこが良いのか? ところが、読み進めていくうちに不思議なリズムが出てきて、次第にこの主人公と「共に居る」ような感覚に陥ちてゆく。 その結果、「シリアスなドタバタ感」という奇妙な面白さが生まれ、なんだか愛おしくなってくる。 私は、結構好きだと思う。

Posted byブクログ

2021/04/27

一冊も読んだことが無いのに本屋さんでずらっと並んでいる背表紙を何度も見ていたせいか作家のフルネームと『白い雌ライオン』というタイトルが記憶に残っていたシリーズ、知人の読書家に「すごーく面白い」と聞いたのと、最近北欧の作品を固めて読んでいることもあり遂に読み始めました。日本語版発売...

一冊も読んだことが無いのに本屋さんでずらっと並んでいる背表紙を何度も見ていたせいか作家のフルネームと『白い雌ライオン』というタイトルが記憶に残っていたシリーズ、知人の読書家に「すごーく面白い」と聞いたのと、最近北欧の作品を固めて読んでいることもあり遂に読み始めました。日本語版発売から20年経過していますが、自分が主人公ヴァランダーの境遇や感情を理解しやすい年齢になっているので今のタイミングで読んで正解でした。移民の問題や制度が目指したものと実際の運営状態の解離、都市部と農村部の違いなどが、衝撃的な事件とその捜査の合間に丁寧に語られます。中年刑事の常?としてヴァランダーは妻に捨てられて惨めで荒んで、食生活は乱れ不健康に太っているものの、刑事としての矜持と勘をもって諦めずに捜査にあたります。記者会見用の原稿を書いたり捜査のシフトを組んだり引継ぎ報告書を書いたりという他の作品ではあまり見られない刑事の地味な仕事ぶりも出て来たのが新鮮でした。内容が濃い割には短く、スッと読めました。完結しているシリーズなので一気読みが出来るのが嬉しいです。

Posted byブクログ

2021/03/27

ヴァランダー刑事シリーズの一作目、読もう読もうと、思いつつ、やっと読み始めてやっぱりはまった❗ これは、シリーズ全部読むやつ!!嬉しくて楽しみ! 移民問題、離婚、子供の問題、親の問題、etc.そりゃもう、事件だって重ねて起こるし、彼(主人公)と、共にどっと疲れるけど、人間の日常っ...

ヴァランダー刑事シリーズの一作目、読もう読もうと、思いつつ、やっと読み始めてやっぱりはまった❗ これは、シリーズ全部読むやつ!!嬉しくて楽しみ! 移民問題、離婚、子供の問題、親の問題、etc.そりゃもう、事件だって重ねて起こるし、彼(主人公)と、共にどっと疲れるけど、人間の日常って、やっぱり綺麗事だけではないもんね。 さぁ、何処迄も一緒に解決して行きます!

Posted byブクログ

2020/11/02

 ヘニング・マンケルの本を生前一冊も読んでいなかったくせに、昨年読んだ、ノン・ミステリー、ノンシリーズの単独作品『イタリアン・シューズ』の書きっぷりが一発で気に入ってしまって、ついにはまり込んでいる最近である。  訳者の柳沢由美子さんは、アイスランドのやはり小説名手であるアーナ...

 ヘニング・マンケルの本を生前一冊も読んでいなかったくせに、昨年読んだ、ノン・ミステリー、ノンシリーズの単独作品『イタリアン・シューズ』の書きっぷりが一発で気に入ってしまって、ついにはまり込んでいる最近である。  訳者の柳沢由美子さんは、アイスランドのやはり小説名手であるアーナルデュル・インドリダソンの作品のほうで、その名訳に唸らされていたので、マンケル作品でも信頼が置けて、ぼくには心地のよい日本語文章としてすんなり入ってゆけるのだ。北欧ミステリーで目立つ自然描写や季節変化については、やはりこの人の訳が一番空気感を味わえると思う。  さて、刑事ヴァランダー・シリーズは海外ドラマとしてもプライムやWOWOWなどで楽しむことができるので、ぼくはそちらを先に体感してしまった口なのだが、先にシリーズの最終作を先日読んだばかりということで、時間をかけても一作目から順番に読んでゆき、その後にまたドラマを見ることで二重三重の娯しみを期待している。  本作は、シリーズのスタート作として相応しい、非情なまでのバイオレンスと、当時スウェーデンの抱える移民問題と外国人排斥の不穏な動きなどの社会的環境とを見事にクローズアップさせる捜査シチュエーションの中で、例によって主任捜査官としての刑事というだけでなく、ヴァランダーが個人として抱える家族や恋愛の物語をも軸にしつつ、語られてゆく。  万能ではなくむしろ弱さだらけのように見える人間主人公の個としての人生物語と、複数の事件捜査が併行して語られる。込み入って取り散らかされたような、彼の時間をきめ細かに追いつつ、事件にもスピード感を持たせるという語り口が、本シリーズの際立った特徴なのだろう。ヴァランダーの持つ長所も欠点も、どちらも物語に付随する問題として読者は付き合っていかざるを得ないのである。  複雑に関係する二件の事件。その裏側を読み解く愉しみに加えて、ヴァランダーは娘リンダの不安定と、高齢によるアルツハイマーが疑われ始めた父親の環境変化、己の孤独とその対策、等々、読者の側とも共有できそうな多様な問題に解決を与えてゆかねばならない。だからこそ刑事ヴァランダーは人間ヴァランダーなのである。  ページを繰り始めると次々に彼を襲う多忙な出来事に悲鳴をあげたくなるくらい、彼も読者も多忙になる。最終ページを閉じてほっとするこの瞬間の満足度は、いったい何だろう、ヴァランダーと一緒に、すべてを解決してゆこうとする疲労、その対価であるカタルシスが、どうやらこのシリーズには仕込まれているらしい。  まだ一作目。本シリーズを楽しむ時間はこれからまだまだたっぷりある。

Posted byブクログ

2020/09/08

1990年代のスウェーデンが舞台の刑事ヴァランダーシリーズ第1作。 一応ミステリー小説にカテゴライズされるのだろうけど、これミステリーじゃない! 殺人事件の捜査が柱にありつつ、謎解きがメインじゃない人間ドラマ。 登場人物たちの内面の葛藤や生活、そして事件捜査としての"自...

1990年代のスウェーデンが舞台の刑事ヴァランダーシリーズ第1作。 一応ミステリー小説にカテゴライズされるのだろうけど、これミステリーじゃない! 殺人事件の捜査が柱にありつつ、謎解きがメインじゃない人間ドラマ。 登場人物たちの内面の葛藤や生活、そして事件捜査としての"自分の仕事"に対する姿勢がとても魅力的。 ヨーロッパらしい自立した考えの大人が議論を交わす形で社会的背景と国家の問題を印象深く盛り込んでもいる。過激な思想の押し付けがなくスマートなので、余計に考えさせられる。 翻って、アクションシーンはハリウッド映画も真っ青の大迫力! ミステリーの概念吹っ飛んだ。 これまで読んできたミステリーはアメリカが舞台のものばかりだったので、北欧というのもとても新鮮だった。

Posted byブクログ

2020/08/19
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

クルト・ヴァランダーシリーズ第1作。 順を追わずにいくつか読んでいるこのシリーズだが、未読作品も読んでみたくなり手を取った。 クルトの私生活描写が生々しい。奥さんに愛想をつかされ、娘には異国の恋人ができ(それを知らされず)、乱れた食生活で太り、酔っ払い運転で部下につかまり、酔った勢いで美人女性検事の腰を抱きかけてどつかれ…、なんという駄目っぷり。 認知症気味の父親とのぎこちないやりとりや、その父親の今後を姉と相談するシーンなどは、駄目なわけではないが、高齢者福祉社会に住む中年男の悲哀感もたっぷりで、妙なところに親近感がわく。 でも仕事になると、猛烈に働くねんなぁ。決して天才肌の名探偵ではないが、綿密にしつこく念入りに事件を捜査し、決して諦めない。行き詰ろうと、迷宮入りしそうになろうと、予測が外れようと、その場では落ち込んで苦しんでも、執拗に粘っこく解決への糸口を探す。 そんなモーレツな業務をこなし、わずかなプライベート時間を家庭の諸事と酒と美人検事にちょっかいかけることで潰してしまうクルト。過労死するんちゃうかと心配になる。 と、本筋から外れた楽しみもできる本作だが、もちろん警察小説としても読み応え十分。ミステリーという意味では、謎解きが弱く、どんでん返しも荒っぽいが、犯罪捜査に取り組む警察の描きっぷりは見事である。 なるほど、これはシリーズ化するはずで、この後傑作も生まれるわけだ、と納得のシリーズ第1作だった。

Posted byブクログ

2020/06/26

意外な展開を期待してたのでちょっと物足りない。。 携帯がない時代の刑事は大変だな。 何故残虐な殺され方をしたのかがスッキリしない。 怨恨の線を匂わせてたけど結局お金のありかを拷問して吐かせたってことなのか。 次作も読むかは迷う。

Posted byブクログ

2021/01/13

刑事ヴァランダーシリーズ第一作目。北欧発の作品だけあって、移民政策に排斥運動といったデリケートな社会問題に鋭く切り込んでいるが、テーマが先行し過ぎて警察小説としては些か盛り上がりに欠け、作中での問題提起も突発的で散乱しており、まだどうにもこなれていない印象が強く残る。展開そのもの...

刑事ヴァランダーシリーズ第一作目。北欧発の作品だけあって、移民政策に排斥運動といったデリケートな社会問題に鋭く切り込んでいるが、テーマが先行し過ぎて警察小説としては些か盛り上がりに欠け、作中での問題提起も突発的で散乱しており、まだどうにもこなれていない印象が強く残る。展開そのものはスピーディーで読み易いが、単巻でこの情報量だと上下巻のシリーズ後作は一体いかほどの密度だろうか。直情的なのに内省的なクルトのキャラクターは面白いし、イースタ署のチームワークも見所だが、このシリーズを追うべきか否か未だ目下思案中。

Posted byブクログ