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ワイズ・チルドレン の商品レビュー

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2022/04/27

アンジェラ・カーターの作品は、「明日の理科の実験では劇薬を使いますから体調を整えてきてください」と言われるようなものであって、「さー、どっからでもかかってきなさいよ」と戦場において盾を持ちながら進んで行くような緊張感が襲ってくる。今回はそういうスリルもなく、難解さ、読者突き放し、...

アンジェラ・カーターの作品は、「明日の理科の実験では劇薬を使いますから体調を整えてきてください」と言われるようなものであって、「さー、どっからでもかかってきなさいよ」と戦場において盾を持ちながら進んで行くような緊張感が襲ってくる。今回はそういうスリルもなく、難解さ、読者突き放し、いつも自分が感じている感想が出てこなくて、下品エロ女子会の世界に(心が)便秘っぽくなってしまいました。でもやっぱ言葉選びは最高にイケてんだよな。遺作みたいだが、歳とって丸くなったのかな?

Posted byブクログ

2015/12/30

10/26 読了。 有名なシェイクスピア俳優メルキオール・ハザードの私生児として生まれながら認知されなかった双子の姉妹ノーラとドーラ。母親は2人を産むと同時に亡くなり、姉妹は下宿屋を営む「グランマ」に育てられた。グランマの教育方針により菜食主義のヌーディストに育った双子のもとに、...

10/26 読了。 有名なシェイクスピア俳優メルキオール・ハザードの私生児として生まれながら認知されなかった双子の姉妹ノーラとドーラ。母親は2人を産むと同時に亡くなり、姉妹は下宿屋を営む「グランマ」に育てられた。グランマの教育方針により菜食主義のヌーディストに育った双子のもとに、ある日突然メルキオールの双子の弟ペリグリンがやって来る。ペリーは2人の養育費を支払い、メルキオールに代わって本当の父のように可愛がってくれた。ノーラとドーラの13歳の誕生日、遂に実の父であるメルキオールと相対するが、完全に無視を決め込まれて2人は打ちひしがれるのだった。ペリーが一文無しになったのをきっかけに、双子は歌と踊りで生計を立て始める。父と同じショービズの世界に飛び込んだ2人だったが、シェイクスピアという王道中の王道を行くメルキオールと違い、双子は生涯裏通りのスターだった。そんなこんなで75まで生き延びてきた2人のもとに、メルキオールの100歳記念パーティーへの招待状が届く。とびっきりのオシャレをして出かけたパーティーで、芸能一家と無数のカメラによる半狂乱のショーが始まる! さいっこう!!!!!!!「夜ごとのサーカス」をそのまま引き継ぐような形で、ショービズの中心が舞台から映画、そしてテレビへと移り変わった経緯や、ファッション変遷のスピード感を書き込むことにより、20世紀という時代のカーニバル性を描き出している。75でミニスカ履いちゃうおしゃべりばあちゃんの自分語りをずーっと聞くのがこんなに楽しいなんて小説ならでは。双子は遺伝するというけど、ひとつの小説に5組も双子が出てくるの見たことないし、スワッピングに近親相姦、やりたい放題である(笑)。 1番のテーマは「父と娘」。タイトルのWise Childrenは「父親を知る子は賢い子ども」という諺から。メルキオールの姓はハザード(危険;偶然、運)だが、ノーラとドーラはグランマの姓であるチャンス(運;可能性;機会、好機)を名乗り通す。最終的に2人が辿り着いた結論は「父親とは子がつくりあげた幻想である」。冷酷ゆえに魅力的だったメルキオールも、常に優しく甘やかしてくれたペリーも、父親の"影"に過ぎなかった。父という幻を追う行為をショービズ、特に映画の技法と重ね合わせ、ポップカルチャーのアイコンを散りばめて煌びやかに飾った、楽しくて愛おしい小説。これが遺作だなんて、カーターにはもっともっと書いて欲しかった…。 関連本:アンジェラ・カーター「夜ごとのサーカス」、皆川博子「薔薇忌」

Posted byブクログ