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赤目四十八滝心中未遂 の商品レビュー

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108件のお客様レビュー

  1. 5つ

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  2. 4つ

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  3. 3つ

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2015/09/22

ひりひりするような文章を、もっと読みたくなる。 かつて読んだことがありましたが、また私の年齢環境想いも違って、新鮮に楽しめました。 最後まで読み進め、瀧での放浪、その後の泥まみれの映像だけ、自分の脳裏に当時しっかりと焼き付けていたようで、そのシーンにあたるところでそうだーそう...

ひりひりするような文章を、もっと読みたくなる。 かつて読んだことがありましたが、また私の年齢環境想いも違って、新鮮に楽しめました。 最後まで読み進め、瀧での放浪、その後の泥まみれの映像だけ、自分の脳裏に当時しっかりと焼き付けていたようで、そのシーンにあたるところでそうだーそうだ、これだとぴたりとあてはまりました。 見てはいないのだけれど、どうしても、映画、寺島しのぶ、というイメージに引っ張られてしまう面は否めない。 あれ、アヤちゃんだったのか、いやそれともこの赫毛の女なのか?と思い読み進め、ああアヤちゃんなのか、と合点の行く始末。 ちなみに他の出演者は誰だったのさと気になって調べてみると、主演は大西滝次郎改め大西信満さんという方―ああキャタピラー主演でまた寺島さんと共演しているんですね―とセイ子ねえさんは大楠道代さんか。 自分の中の世界と、イメージが違う配役であるのと、そもそも独白だらけのこの作品を映像にすることというのはどうやってこの世界を表現していくのか、言葉をそのまま発信していくのか、この言葉に真正面からぶつかっている物語を映像にどう転換していくのか。 それが映画監督、俳優たちの腕の見せ所なのかな、と思います。 私はそれが映画よりも文字から思念する世界の方がより好み、なのでしょう。 言葉で虐げられ、言葉で傷つけられても、それでも言葉に救いを求め、すがって、支えにする自分が居るんです。 こういうひりひりするような文章が読みたいので、他の作品もメモ。 しかし私に圧倒的に足りないのは花に対する知識だと、改めて。 前回塩壷の匙や、吉屋先生の屋根裏の二処女を読むにつけ痛切に感じ、でも植物辞典はちょっと、趣味じゃないから俳句の季語辞典みたいなのを通読してみようかしら。 なにか、おすすめ、あれば教えてください。

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2015/06/18

文体が好き。 どん底で、どん底になりきれない男が、愛した人に手を伸ばせず、宙ぶらりんなどうしょうもなさが、とても良いと思った。

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2015/06/12

自由人の人生は、ひやかし人の人生といえよう 生来の自己評価の低さや それを補うための実存主義的冒険主義 そういったものに根差した鼻つまみ者の悲しみが 自由人にもあるけれど 大学まで出させてもらっておきながら 今は鶏肉を串に刺して生きている、そんな生き方は 単に易きに流れる人のだら...

自由人の人生は、ひやかし人の人生といえよう 生来の自己評価の低さや それを補うための実存主義的冒険主義 そういったものに根差した鼻つまみ者の悲しみが 自由人にもあるけれど 大学まで出させてもらっておきながら 今は鶏肉を串に刺して生きている、そんな生き方は 単に易きに流れる人のだらしなさとすら見てもらえない 底辺に生きる人々の仲間づらして その実、精神的には上から覗き見している偽善者、ひやかし者 そう思われても仕方がないのだった そういう、他人の冷ややかな目線にさらされることが かえって安らぎに思えるというならば 彼は、そう、マゾヒストである 尼崎でのやくざな生活にだんだんなじんでいく主人公を やがて周囲の人々は 心配混じりの親しみで遇するようになるのだが しかし所詮は、綱渡りで生きている人々の群れであり その終焉もあっけなくおとずれる 兄の不始末のカタで、人身売買にかけられた女は 自由に一瞬の夢を見たか 主人公を誘ってあてのない逃避行に出るのだった

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2015/05/31

今月亡くなられた同県の直木賞作家の作品を手にした。 作品中「人が人であることは、辛いことである。その悲しみに堪えるところから、あるいはそれに堪え得ないところから、それぞれ、人の言ノ葉は生まれてくるのだろうが。」と述べているように一文一文一言一言がギリギリと刻みつけられているような...

今月亡くなられた同県の直木賞作家の作品を手にした。 作品中「人が人であることは、辛いことである。その悲しみに堪えるところから、あるいはそれに堪え得ないところから、それぞれ、人の言ノ葉は生まれてくるのだろうが。」と述べているように一文一文一言一言がギリギリと刻みつけられているような感じがした。私小説とはげに凄まじきものなり。

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2015/05/21

映画は、寺島しのぶの出世作(見てないけど)。タイトルから、曽根崎心中のような浄瑠璃をイメージしていたが、昭和53年の尼崎。くすんだ、淀んだ町の底辺の人たちの物語だった。 もともと都会の会社員だった主人公が、自ら世を捨て、流れ流れて尼崎。余計なことはしゃべらず、他人と距離をおき、ひ...

映画は、寺島しのぶの出世作(見てないけど)。タイトルから、曽根崎心中のような浄瑠璃をイメージしていたが、昭和53年の尼崎。くすんだ、淀んだ町の底辺の人たちの物語だった。 もともと都会の会社員だった主人公が、自ら世を捨て、流れ流れて尼崎。余計なことはしゃべらず、他人と距離をおき、ひっそりと過ごす。痛いほど、自分を落としていく。だが、掃きだめの鶴、アヤちゃんに心奪われ、欲情があらわになる。そこから物語は急展開する。 発する言葉は少ない。だから言葉への執着が半端なく、重い。伝えたい思いは、心の中で練られて考えられ、結局はしょられ、言わなかったりで、もどかしく苦しい。 小説から見えるその町は、濁った色で脂っこく臭い。その分、彫り物の鮮やかさ、四十八滝の滝の飛沫が際だつ。怖いほど。 読み終えてから、作者車谷長吉さんが数日前に亡くなったことを知った。死因は誤嚥。切なすぎる。

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2015/04/14

地獄を生きる者と心に地獄を巣食わせる者、それは似ているようで決して相容れないものなのだろう。しかしながら後者が前者を「池の底の月を笊で掬うように」描いた時、そこには万人に開かれた地獄が現前する。全てを投げ捨ててハマに流れ着いた生島は病死した畜生共の臓物を切り刻むことで生を繋ぎ、泥...

地獄を生きる者と心に地獄を巣食わせる者、それは似ているようで決して相容れないものなのだろう。しかしながら後者が前者を「池の底の月を笊で掬うように」描いた時、そこには万人に開かれた地獄が現前する。全てを投げ捨ててハマに流れ着いた生島は病死した畜生共の臓物を切り刻むことで生を繋ぎ、泥の粥をすすって生きる者達と邂逅したその経験を言の葉によって写し出す。口から洩れ出るそれは呪詛かそれとも喘ぎ声か。否、どちらも似たようなものなのだろう。情念と諦観がまぐわい果てていくような本作は、地の底の睡蓮のように咲き乱れている。

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2015/03/15

小説を書くことで生きたい男が身を持ち崩し、まっとうな社会に背を向け隠遁の生活を彷徨うのだが、そこは言語を弄するような観念の世界と真逆なリアルな生き方しかない社会の底辺であって、結局はそこの住人たちから異物として扱われ排斥されていく物語。書くべき人生を持たない主人公が、底辺の社会で...

小説を書くことで生きたい男が身を持ち崩し、まっとうな社会に背を向け隠遁の生活を彷徨うのだが、そこは言語を弄するような観念の世界と真逆なリアルな生き方しかない社会の底辺であって、結局はそこの住人たちから異物として扱われ排斥されていく物語。書くべき人生を持たない主人公が、底辺の社会で生きる住人たちの人生にその書くべきものを見出してしまうことでそこの住人にはなれないのだ。あえてただただ日々の生を生きて見ようとするのだけれども、所詮は異物同士お互いに馴染めないまま、それでもつかず離れず共生している主人公と住人たちの姿に独特の味わいがある。

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2015/02/21

出版されてすぐの頃、職場のおじさんに薦められていたのを、やっと読んだ。読んでみて、あの時の私には手におえなかったろうと思った。子どもは「見たら、あかんッ」小説だと思う。「赤目四十八瀧」という艶めかしい地名、「心中未遂」という真っ暗で甘美な響き。しかしアヤちゃんが選んだ道も生島が選...

出版されてすぐの頃、職場のおじさんに薦められていたのを、やっと読んだ。読んでみて、あの時の私には手におえなかったろうと思った。子どもは「見たら、あかんッ」小説だと思う。「赤目四十八瀧」という艶めかしい地名、「心中未遂」という真っ暗で甘美な響き。しかしアヤちゃんが選んだ道も生島が選んだ道もなんか現実的でみじめ。なところが良かったな。すごい悲しい話なんだけど、一方ではしょーがねぇな、と思ってしまうのは私も「観察者」だからか。

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2015/03/01

病死した牛や豚の臓物を切り刻み、串に刺す手にねばりつく脂。 隣室の老娼婦が慰めを求めてとなえる、絶望的な呪文の声。 骨を噛むような呻き声をあげ、刺青を入れる人たち。 どん底の狭い世界で生きる、アウトローな人々。 動物のように本能のままに、ただ口を糊するために生きている。 その泥...

病死した牛や豚の臓物を切り刻み、串に刺す手にねばりつく脂。 隣室の老娼婦が慰めを求めてとなえる、絶望的な呪文の声。 骨を噛むような呻き声をあげ、刺青を入れる人たち。 どん底の狭い世界で生きる、アウトローな人々。 動物のように本能のままに、ただ口を糊するために生きている。 その泥沼の底に見た、蓮の花のような女。 彼女はより一層の地獄へ堕ちるため、 命さえ投げ出してくれるほどの、誰かの愛が欲しかった。 心中未遂を経て、男はまた人間らしい生活に戻る。 男にとっては、ただの行きずりの出来事だったのだろう。 男達の業を絡めとり全てその身に抱えた女は、二度と浮かび上がれない。 しかし、自分に命を賭した男がいたという事実は、 生命の奥底の温かい灯となり、彼女を救うのだ。 哀しいまでに潔い、女の覚悟が胸を衝く。

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2014/08/25

【本の内容】 「私」はアパートの一室でモツを串に刺し続けた。 向いの部屋に住む女の背中一面には、迦陵頻伽の刺青があった。 ある日、女は私の部屋の戸を開けた。 「うちを連れて逃げてッ」―。 圧倒的な小説作りの巧みさと見事な文章で、底辺に住む人々の情念を描き切る。 直木賞受...

【本の内容】 「私」はアパートの一室でモツを串に刺し続けた。 向いの部屋に住む女の背中一面には、迦陵頻伽の刺青があった。 ある日、女は私の部屋の戸を開けた。 「うちを連れて逃げてッ」―。 圧倒的な小説作りの巧みさと見事な文章で、底辺に住む人々の情念を描き切る。 直木賞受賞で文壇を騒然とさせた話題作。 [ 目次 ] [ POP ] 一行一行に宿る業のなんと深いことだろう。 内容以前にこれほど文章に感じ入った本は他にない。 最後まで心臓をわしづかみにされ、恐ろしいものに睨まれて、目をそらすことができなくなったように一気に読んだ。 朽ちたベニヤの板に刺さったカミソリの刃、暗い土管の穴からのぞくギロリと光る眼、閉じるたびに蝶番の取れるボロい木枠の戸。 苦しい。 生き地獄という文字が近くで点滅する。 縛られたロープで底なしの丘の上から吊るされてビュンビュン振り回される。 初めは読み難いと感じていた文章に気づくと飲まれていた。 しかも首のあたりまでどっぷり浸かっていた。 何かが引っかかるわけでもない。 本を開けばまた、読み難い悲惨な文が目に飛び込んでくる。 やっぱり難しくておかしな文章じゃないか。 そう思うのに頭の上まで浸かってしまう。 白い女の透き通るような首筋、他者を頑なに拒む子どもの命を懸けた怒号、節の異常に発達した男の土気色の指先。 人間は化物になり、時は容赦なく吹き溜まりを掃き去る。 黒い穴の中からギロリと光る木刀のような視線。 くっ付いては離れない粘着質な息遣い。 私はこの化物の臓腑の中に、どっぷりとはまった。 [ おすすめ度 ] ☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度 ☆☆☆☆☆☆☆ 文章 ☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー ☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性 ☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性 ☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度 共感度(空振り三振・一部・参った!) 読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ) [ 関連図書 ] [ 参考となる書評 ]

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