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赤目四十八滝心中未遂 の商品レビュー

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108件のお客様レビュー

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  2. 4つ

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2022/11/02

先日、某新聞にこの作家の名前が出ていたので再読。 直木賞ですよね、確か。でも出だしとか芥川賞の間違いですか?と思いました。 その後は多少は直木賞っぽくなりましたが、全体観としては大衆受けは考えず、焦点が極めて小さい、濃厚な心象風景をどうとでも取ってください、的な感じを受けました。...

先日、某新聞にこの作家の名前が出ていたので再読。 直木賞ですよね、確か。でも出だしとか芥川賞の間違いですか?と思いました。 その後は多少は直木賞っぽくなりましたが、全体観としては大衆受けは考えず、焦点が極めて小さい、濃厚な心象風景をどうとでも取ってください、的な感じを受けました。 寺島しのぶが映画でやったとか聞きました。本当なのか知りませんが、そう言われるとさもありなんと思います。こっちの方が、感覚は伝わりますかね?

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2022/10/03

社会の底辺で生きる人達と、そこに身を置かざるを得なくなった主人公の話。 文章が面白過ぎて、全然好きな題材じゃないのに怖い物見たさもあり一気に読んでしまった。 主人公が「生きる世界が違う」と体良く追い出され更に女の後を追いかけて彼の地を離れるまでの冒険譚のような話だった。

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2022/03/26

尼ヶ崎の底辺の人たちの情念。 心中しまーす!と思ってても、他人なので二人が一つにはならない(そりゃそう) フジテレビのノンフィクションでどうしようもない人を見るのが好きだから、そういう雰囲気で好きだった。

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2022/01/31

友人からのお勧め本。図書館に蔵書されていたものの、職員さん以外は入れない所に…禁書か? 著者が車谷長吉で装丁とタイトルも古風。初見ではとっつきにくそうだが、いざ読み始めると何とも言えない翳りの雰囲気に引き込まれた。関西色が強くて全体的に湿っぽい中、迦陵頻伽が艶っぽくて魅力的で逆...

友人からのお勧め本。図書館に蔵書されていたものの、職員さん以外は入れない所に…禁書か? 著者が車谷長吉で装丁とタイトルも古風。初見ではとっつきにくそうだが、いざ読み始めると何とも言えない翳りの雰囲気に引き込まれた。関西色が強くて全体的に湿っぽい中、迦陵頻伽が艶っぽくて魅力的で逆に薄気味悪さを醸し出している。西村賢太を思い出す部分も。 主人公の生き様に共感する所が多々あった。破滅願望って誰にでもあるものなのか。妙に潔く、かっこよく見えたりする。他の作品も読んでみたい。やはり人のお勧めは自分の殻を破るので面白い。

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2021/11/19

上手い。文章が、ストーリーが、人間描写が驚くほど上手い。地下鉄神楽坂駅の伝言板に始まるあっち側とこっち側を意識させる世界観。会社を辞めてアパートの一室でモツを串に刺し続ける「私」。背中に迦陵頻伽の刺青のある隣室の女がある日「うちを連れて逃げてッ」ーこの目に見えない境界線は何なんだ...

上手い。文章が、ストーリーが、人間描写が驚くほど上手い。地下鉄神楽坂駅の伝言板に始まるあっち側とこっち側を意識させる世界観。会社を辞めてアパートの一室でモツを串に刺し続ける「私」。背中に迦陵頻伽の刺青のある隣室の女がある日「うちを連れて逃げてッ」ーこの目に見えない境界線は何なんだろう。そして本当にそこに境界線はあるのだろうか。何がそれを作るのだろう。さらにあっち側にも魅力が垣間見える。近所の焼鳥屋が肉を串に刺し続ける仕事、時給1200円と聞いて、それは違うと思った。

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2021/11/15

壮絶。圧倒されて読みました。 底辺に堕ちたと主人公の生島は思っていたけど、アマに住む他の人たちは「あんたはここにいる人とちがう」と、最後まで仲間みたいなものには入れなかったな生島のこと…それは希望みたいなものかもしれないと思いました。ここに馴染ませてはいけない、と。中には陥れよう...

壮絶。圧倒されて読みました。 底辺に堕ちたと主人公の生島は思っていたけど、アマに住む他の人たちは「あんたはここにいる人とちがう」と、最後まで仲間みたいなものには入れなかったな生島のこと…それは希望みたいなものかもしれないと思いました。ここに馴染ませてはいけない、と。中には陥れようとする人もいるし危ない事にも関わってしまうけど、それでも助けてくれる人もいるし。 こんな世界は表からは見えていないだけで、まだあるんだろうなと思わせられる現実感がありました。アヤちゃんみたいになる人もいるんだろう。。迦陵頻伽の入墨って凄い。 晋平ちゃんも幼いながらに(これは言葉にしてはいけない)を弁えてて悲しくなりました。そうしなければ生きていけないんだな。 噎せ返るほどの情念。心中未遂…哀しい。

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2022/01/29

心が近鉄電車の中にまだ自分もいるような感じで動けない。 夏目漱石もゆうとったらしいけど、やっぱり「書くということ」は“命の交換”なんやと。 命を削りながら、描くというよりは、命と交換するくらいの気持ちでないとあかんということやとおもう。 この小説では「池に沈んだ月を掬い取る...

心が近鉄電車の中にまだ自分もいるような感じで動けない。 夏目漱石もゆうとったらしいけど、やっぱり「書くということ」は“命の交換”なんやと。 命を削りながら、描くというよりは、命と交換するくらいの気持ちでないとあかんということやとおもう。 この小説では「池に沈んだ月を掬い取る」という表現をしているけど、そんなどうなるかわからんようなもんに命をかけるとは、恐れ入るしかない。そして文学とはそうなんやと。 この小説は、書くということで作者が命を差し出す迫力に圧倒される。読後、しばらく心が痺れて動けないでいる。 2022/1/29 再読(コロナ罹患のため療養中に) 人や出来事を丁寧に彫り起こしながら、描いているとおもう。 正に彫刻刀で周りを削りながら、一つの仏像をかたどるようにして。 祈るより拝んでしまいたくなるような作品。 穢れの中にこそ、神聖性がこちらを見つめる何かがある。 いわんや、迦陵頻伽は蓮の咲くドブ池から飛び立つ。 素晴らしい作品でした。

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2021/02/06

近鉄の駅に夏になると貼られる赤目四十八瀧の観光ポスター。毎回気になるのだけれど、旅慣れた京都でも奈良でも大阪でもなさそうな場所で、なんとなくふわふわした「いつか…」のままちょっと心の奥にしまってある現実感のないところ。そこがタイトルだったので手にした本。 久しぶりにこれだけ黒い...

近鉄の駅に夏になると貼られる赤目四十八瀧の観光ポスター。毎回気になるのだけれど、旅慣れた京都でも奈良でも大阪でもなさそうな場所で、なんとなくふわふわした「いつか…」のままちょっと心の奥にしまってある現実感のないところ。そこがタイトルだったので手にした本。 久しぶりにこれだけ黒いマグマのような力のある小説を読みました。 尼崎・やくざ・刺青といった好みのジャンルではなかったけれど、ドロドロとした臓物までさらけ出すように刹那的に底辺を生きる登場人物たちの描写から感じるものが色々ありました。それは感動とかそういうものではなくて、リアルにこういう世界に生きている人たちもいるのだろう、とにかく自分も今日を踏ん張って生きて少しでも今の場所から這い上がらなければ…という生へのリアルさでした。それには自分はここまで落ちていないという安心感もある。そして立ち止まり過ぎていたら、ここに落ちるかも…とう不安でもある。 日常で使う「しかし」という字は「併し」って書くことも知りました。 短めの小説だし、また疲れたら読んでみよう。

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2021/01/25

赤目四十八瀧というのは、三重県名張市の近くにある有名な観光地である。といっても、近くにいながら僕は一度も訪れたことがない。一度は行ってみたいと思っていたが、この作品を読んだら行く気が失せた。それは何故かと問われても説明がうまくできないのだが、背中からぞくぞくするような寂寥感が迫っ...

赤目四十八瀧というのは、三重県名張市の近くにある有名な観光地である。といっても、近くにいながら僕は一度も訪れたことがない。一度は行ってみたいと思っていたが、この作品を読んだら行く気が失せた。それは何故かと問われても説明がうまくできないのだが、背中からぞくぞくするような寂寥感が迫ってくる描写に、妙に不吉な臭いを連想し困ってしまった。 作品の中に、主人公の生島とアヤちゃんが、死に場所を探しながら滝壷を覗き込むシーンがある。これが何とも切ない。最終のバスに乗り遅れて、バス停で呆然と佇むような感覚とでも言おうか、次に何をしたらいいのか分からないもどかしさを感じるのである。 夕闇が迫るとともに観光客の姿もなくなった連瀑を覗き込み、「死ぬことについての意味など何もない」と思いながら、成り行きに任せて心中を決心していく主人公の姿が悲しい。安定した会社勤めを簡単に辞めて、隠れるように移り住んだ薄暗いアパートの一室で、臓物にひたすら串を刺していく毎日。欲もなく、自分を追いつめるように空気の如く生きる生島の姿は、まるで修験者のようでもある。凡庸と欲望に凝り固まった自分には生島の生き方は到底理解できない。“流される”と表現するのが一番合っているような気がするが、ただひたすら流され続ける生島の生き方は、人間を捨てた仮の姿であり、無欲が成せる崇高な姿ではない。魂を抜かれた“抜け殻”と表現するのが合っている。 作品の中で、生島が姫路に生まれ、小説を書いていたというエピソードが出てくるが、このあたりのあらすじは著者の過去を彷彿とさせるものがあり、自らの体験がベースになっている作品と言えるのかもしれない。関西の下町を舞台に、陰をもった人々の暗さをたっぷりと書き込んでいる筆致は、著者の分身とも言えなくもない主人公の生島の育ちの良さを時折垣間見せながら、まるで梅雨空から抜け出せないような暗い関西弁のイントネーションを使って、隠花植物のように暗さに溶け込まさせる。育ちの良さが発する輝きを無理矢理に封じ込めるという絶妙なバランス感覚をうまく表現し、著者独特のシュールな世界を作り出すことに成功している作品であった。

Posted byブクログ

2021/01/22
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

学生のころに一度読んでいて、33歳になり再読。 いつのまにか干支がひとまわりして、主人公と同年代になっていた。 当時は特にラストシーンが衝撃的で、万年床で天井を見ながら、読後感に浸った記憶がある。パンチのある小説だった。好きだった織田作之助を超絶重くしたような印象もうけた。 改めて読むと、技術的な面が目立った。 世界観の構築に必要な文章の組み方、表記・言い回し・比喩・方言ー「併し(しかし)」の多用、副詞の少なさ、身体に密着したアマの方言ーなどと、工夫とカラクリが結構巧妙で笑ってしまった。 愚直でさまよい続ける主人公と、おっさんになって、世の中の仕組みや自分の器の大きさに諦観し、距離を取って冷静にものをみられるようになった成熟した書き手を、厚かましくも自分と重ねた。 併し純粋に物語としても面白いよ、しかし。(前者はおっさんになった車谷長吉氏、後者は破天荒な芸人横山やすし氏の使い方)

Posted byブクログ