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舞踏会へ向かう三人の農夫 の商品レビュー

4.5

19件のお客様レビュー

  1. 5つ

    8

  2. 4つ

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2024/05/21
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

柴田さんのエッセイを読んでからもう3ヶ月たっちゃった。試験も終わった(正式の結果通知が来ないんだが)んでのんびりとこの本。ドイツ人写真家アウグスト・ザンダーが1914年に撮った1枚の写真『舞踏会へ向かう三人の農夫』をたまたま見かけた若きパワーズはその瞬間に未来への扉がすぱんっと開いちゃったのね。ドラえもんの『どこでもドア』ってのは本当にあるんだわ。 その足で会社を辞め2年間かけてこの本を書いたらしい。24歳ですって天才かよ。何が凄いって構想力よ。たった1枚の写真から妄想の風呂敷をどばーっと広げて2段組400ページ強の時空を超えた物語を仕立て上げた。この表紙にもなっているけれど特にこうなんかある写真とは思えないんだけれどパワーズには啓示だったのですね。 1914年にぬかるんだ畑の中を3人の若者がこの格好をして出かけて行く先はどこなんだろう? 戦争なんだわ。なるほど写真ってそう見るのかぁ。じゃあ1914年って他に何がある? ヘンリー・フォードでありサラ・ベルナールであると。なにこれ本当の話? そんなことはどうでもいい。この3人の農夫を待つ未来にパワーズが込めた想いとは……。しかし懲りもせずまた戦争が始ま(って)る。 《その麻痺状態は、いまの時代に支配的な要素であるように思えた。それはいまや、避けることのできないひとつの条件なのだ。「私は薬漬けだ」と人が言うとしても、まさに薬漬けになっているがゆえに、本人はその状態を除去したいとは思わない。彼の世代はモルヒネを打たれた患者のように、感覚がなくなるというのがどういうことか、自覚的には感じられなくても、すでに知っているのだ。彼らにとって、記憶にカタルシスは伴わず、歴史には認識が伴わない》

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2022/09/17

これは、あれだ、頑張って最後まで読んだ自分を褒めてやりたい、ていうやつだ。 ページの厚さ以上に文字多すぎですから。しかもあっちゃこっちゃ内容が飛びまくるし、もう試されてる感。 でもって内容はと言われると、まぁ色々ありすぎて、ね。なんだけど、アドルフ、すわ第二次大戦とユダヤ人ネタか...

これは、あれだ、頑張って最後まで読んだ自分を褒めてやりたい、ていうやつだ。 ページの厚さ以上に文字多すぎですから。しかもあっちゃこっちゃ内容が飛びまくるし、もう試されてる感。 でもって内容はと言われると、まぁ色々ありすぎて、ね。なんだけど、アドルフ、すわ第二次大戦とユダヤ人ネタか!と思いきやの第一次大戦からのヘンリー・フォードやらザンダーやら、知らぬ話が続々とやってくるので、それなりには面白いのですよ。途中の作者の思い入れのある哲学的な文章を乗り越えていければ。

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2018/09/01

膨大な量の中,話があちらに飛びこちらに戻り,ある点がどんどん拡大されていくかと思えばすっと収斂する.また登場人物も1914年の3人の農夫,現代の私と業界紙に努めるメイズを中心として入り乱れ錯綜し非常に分かりにくい構造.読むのにはなかなか苦労するが内容は面白く,時に披露される哲学的...

膨大な量の中,話があちらに飛びこちらに戻り,ある点がどんどん拡大されていくかと思えばすっと収斂する.また登場人物も1914年の3人の農夫,現代の私と業界紙に努めるメイズを中心として入り乱れ錯綜し非常に分かりにくい構造.読むのにはなかなか苦労するが内容は面白く,時に披露される哲学的な考察は読み応えがあった.特に自伝についての論旨などはメルロ=ポンティを想起したりして興味深かった.またメイズのフォードの遺産にかかるあたりのユーモアも楽しかった.

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2018/08/14

表紙につられて読んでみました。 いやあ、なかなか、手強かった。まず、文字が多いのと登場人物が多く、時代も変わることで理解するのに手間がかかってしまいました。特に方向性がわからないと理解し辛いようです。 でも、すごい内容です。 戦争の不条理、遺産の笑い、どれもおもしろかったです。

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2015/06/09

1914年に撮影された一枚の写真から展開して、作者の全てを注ぎ込んだかのような小説。3人の農夫の人生、現代に生きる若者達。遠く離れた彼らが写真家、赤毛の女、株屋、車のフォード、掃除婦、親族…とたくさんの人々と少しずつ知合いながらやがて細い糸のようにつながっていく。不器用にも思える...

1914年に撮影された一枚の写真から展開して、作者の全てを注ぎ込んだかのような小説。3人の農夫の人生、現代に生きる若者達。遠く離れた彼らが写真家、赤毛の女、株屋、車のフォード、掃除婦、親族…とたくさんの人々と少しずつ知合いながらやがて細い糸のようにつながっていく。不器用にも思えるつながり方はやがてきらきらとした思考や出会いとなる。みっしりと作者の知識、考察、思想もつめこまれて大変な読みごたえだった。英語や文化に詳しければ言い回しとかジョークもとても絶妙なんだろうなぁと自分の理解力のなさを残念に思いながら読んだ。

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2014/05/11

難しかったー!でも小説と批評が地続きになってるような感覚はタイプだし、その批評も登場人物からの視点であり、同時に作者の批評でもあるとすると、この作品を包む状況って、歴史とか芸術の話まで含めた広い感覚があって良かったなー!

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2014/01/25

現役北米作家のなかで最重要、という評価はうなずける。知力が駆け巡るかのような独特な文章。気になる文章を傍線引いていくとしたら、どれだけ書き込むことになるのだろうか?ストーリーの妙も凡百ではない。

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2013/07/25
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

 主人公の私はある日、電車の乗り継ぎで立ち寄ったデトロイトの博物館で、「舞踏会へ向かう三人の農夫」と題した古い写真に出会う。そしてその瞬間から、20世紀全体という時間軸と、アメリカとヨーロッパを包含する広大な場所を舞台に、この3人は誰で、なぜその写真が撮られたのかという謎を解く、長い物語が始まる。  私、3人の農夫(アドルフ、ペーター、フーベルト)、そして当初は写真との関わりが見えないピーター・メイズ。時代や場所を行き来しながら進行する彼らの物語を追いかける行為(つまり本書を読むこと)は、読者にとってはあたかもジグゾーパズルのピースを1つひとつはめていくような作業だ。そして最後のピースがはまったとき、読者はパズルの表面に、「20世紀という名の、混じり気なしの暴力行為」が浮かび上がるのを見届けることになる。  小説という道具立てを使い、「(独立した)存在というものはありえない。個々の存在物はすべて、あくまでそれと宇宙全体との絡み合いから理解されねばならない」という哲学者ホワイトヘッドの箴言を引きながら、人間とは何かという問いに答える新機軸を、著者は本書で提示して見せている。

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2013/05/08

久々に、脳に栄養の物語と思いました。出だしは行ったり来たりが難解で、それがあとになるとどんどん巡る。 小さいころ遊んだ、プラスチックの穴の空いた物差しみたいなやつ、鉛筆を穴に入れてギザギザをぐるぐるすると色んな模様ができるやつ、あれみたい。

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2013/01/11

過去と現在が複雑に絡み合い、交錯、錯綜し、混沌としながらも調和するという、なんとも不思議な物語です。ストーリーを説明しろと言われても私には無理。ただひたすら夢中で読みました。何度も読み直したくなる物語です。

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