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ケーキ!ケーキ!東京 の商品レビュー

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2011/11/04
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※このレビューにはネタバレを含みます

数あるスイーツ本のなかで最も素晴らしい本書。時々引っぱり出しては見ている。 本書は、東京のケーキを知るための最高のガイドブックだと思う。80店舗の、厳選した96個のケーキを紹介している。96のケーキはひとつひとつをカラーイラスト化。内部が見えないケーキには断面図が添えられている。そして、ケーキを構成している各部位の素材や製作技術・手法などについて、「味の秘密」が読者に伝わるようにと、緻密な分析・解説を載せている。この分析・解説によって、本書はそのケーキがなぜ美味しいのかを教えてくれる教科書となっているのである。 著者・並木 麻輝子さんは、フランス・パリの料理・菓子職人養成校ル・コルドン・ブルーに留学、菓子と料理の両方の上級課程を修了した経歴を持つ。つまり、作る側のプロの視点を持っているために、真の美味しさの秘密に迫れるのである。人気シェフたちと同等レベルの教育を受けたことは、並木さんが取材者としてもシェフたちの信頼を得る助けとなったようだ。 そんな並木さんの96個のケーキ厳選作業はすごい。 本書制作の1年間で、約2000個のケーキを食べ尽したそうだ。最終選定が決まった段階で初めて店に取材を申し込み、素材、手法、技術などについてもらすことなく、シェフ・パティシエに確認をしたという念の入れようである。この大変な制作作業のおかげで、読者は、そのひとつのケーキに関してのほぼ全てを知ることができるのである。 だから、本書読み、実際に食べ、これまでに私もお気に入りケーキをたくさん見つけることができた。 ◆サロン・ド・テ・アンジェリーナの「モンブラン」⇒フランスの正統派モンブラン。 ◆和光チョコレートショップ ルショワの「ピエール・ジョゼフ」⇒コニャックの芳香が刺激的なチョコ専門店のケーキ。 ◆ミッシェル・ショーダンの「ガトーエスメラルダ」⇒濃厚でビターな極上のチョコレートケーキ。 ◆洋菓子舗ウエスト銀座本店の「シュークリーム」⇒誠実な名品。 ◆ピエール・エルメ パティシエの「イスパハン」と「ミルフィーユ」⇒一度は食べたい、天才シェフの傑作。 ◆しろたえの「レアチーズ」⇒ロングセラーのレアチーズケーキ。 ◆パティシエ・シマの「クレーム・シマ」⇒これが、日本にクレーム・ブリュレを広めた。 ◆東京洋菓子倶楽部ドルチアの「シュークリーム」⇒下町人気店のバリバリッシュークリーム。 ◆ミュゼ・ドゥ・ショコラ・テオブロマの「サンフォアキン」⇒ショコラのエキスパート・土屋シェフの逸品。 ただ惜しむらくは、本書は出版年が2000年と古いこと。紹介されている店のパティシエが現在では独立し、ご自身の店を開いていたりする。 たとえば、<ホテル西洋 銀座>のシェフは、稲村さんとあるが、稲村省三さんは現在、上野の山に大人気店<パティシエ イナムラ ショウゾウ>を開かれている。 九段南の<シェ・シーマ>は木村シェフとなっている。木村成克シェフは現在、千歳烏山で<LA VIEILLE FRANCE>を開かれている。 そのようにデータとしては古くなってしまったため、本書のケーキの中には今では食べられないものもあるだろう。残念だが、仕方がない。買いに行くなら、ネットで調べよう。 フランスをはじめ、ヨーロッパ100都市を食べ歩き、本にまとめてきた食のジャーナリストの並木さんが、「東京のケーキはいま世界一のレベルにある」と書いている。ケーキ好きにとって、東京はいま「幸せの都」だそうだ。本書を頼りに、多くのケーキ好きがその幸せを共有できるかもしれない。いままでのケーキ観が一変するかもしれない。試しても損はない。 わがままなお願いだけれども、是非、本書の最新版を出してほしい。

Posted byブクログ