知られざる技術大国イスラエルの頭脳 の商品レビュー

川西剛(著者)

2015/02/06

ユダヤ賛辞に終始するユダヤ本が多い中、この本は現場でリアルにイスラエル企業と仕事をしてきたビジネスマンならではの視点で書かれた本。著者は東芝のエライ人で、何度も『お客さん』という言葉がでてくるのが印象的だった。イスラエル企業は研究開発はすぐれているがエンドユーザーのことを全然考えていないことが多く、そこが世界一厳しいクレームに鍛えられた日本企業に比べて未熟なところだと痛烈に批判している。東芝の本部長がいうと説得力がある。

2012/04/29

イスラエルは天然資源に乏しいうえに人口が少ない。強力な輸出産業になるものがない。ペンと紙だけで勝負できる頭だけあればよい情報通信やソフトウェアのような頭脳集約型ハイテク産業が花開いた。
国家としての最優先課題は軍事技術の発達。戦況の帰趨を決するのはC4I：指揮、統制、通信、コンピュータ、諜報活動。
RSA暗号を開発したのはユダヤ人。
ネットセキュリティにおける暗号化の最大の役割は認証と秘匿。

イスラエル社会は合理の極みともいえるハイテク産業と非合理の極みともいえるユダヤ教の戒律が同居する不思議な社会。
イスラエルの技術力は非常に高い。

2009/10/04

・イスラエルでは、人口の三〇パーセント以上が一三年以上の教育を受け、労働者人口の一七パーセント以上が学位を取得している。修士号、博士号を取得し、科学分野の書籍を上梓している人の数は、総人口の一五パーセントにものぼると言われるほどだ。

・ハイテク情報の収集には、シリコンバレーよりイスラエルに行ったほうが、むしろ効率的なほどだ。なぜなら、同じ一週間滞在する場合、シリコンバレーではせいぜい五〜六社しか訪問できないが、イスラエルなら一〇〜二〇社は楽に訪問できるからだ。

・イスラエルのハイテク・ベンチャーに共通するのは、アイデアやコンセプトは素晴らしいが、それを事業化する能力に欠ける、という点である。国内市場が小さく、量産型のモノ作りを経験していないため、マーケティングが決定的に苦手なのである。
日本はこの逆で、ゼロからの開発は不得手だが、量産型のモノ作りならお手のものだ。モノ作りに関して、日本が世界トップランクに位置していることは間違いない。

・「人間、死んだ気になれば何だってできる」というのは、間違いなく人生の真実だ。この強烈なやる気が、イスラエルには今も充満している。

・成功例というのは、日本でも米国でもイスラエルでも一割か二割で、似たようなものだろうと思う。問題は、八〜九割の失敗をどうやって許すかなのだ。

・イスラエルは国内市場が小さいので、頭脳の優秀性においては驚異だが、製造でライバルになることはない。しかも台湾は、人口は二〇〇〇万人ほどだが、そのむこうに中国という潜在的な巨大市場を抱えている。