編年体大正文学全集(第1巻) の商品レビュー
一年を1冊に、大正時代の文学をまとめたアンソロジー。第一巻は明治末期・大正元年である1912年発表の作品(小説、戯曲、児童文学、評論、詩歌)を収録。(一部、明治末頃の作品も含まれてますが) 作家ではなく「年」を軸に纏めると、その当時の流行や風潮みたいなのが見えてきて面白いですね...
一年を1冊に、大正時代の文学をまとめたアンソロジー。第一巻は明治末期・大正元年である1912年発表の作品(小説、戯曲、児童文学、評論、詩歌)を収録。(一部、明治末頃の作品も含まれてますが) 作家ではなく「年」を軸に纏めると、その当時の流行や風潮みたいなのが見えてきて面白いですね。(森鴎外の「かのように」と志賀直哉の「大津順吉」、谷崎の「悪魔」が同じ年か!みたいなのに気づく面白さもある) 巻末の編者でもある中島国彦先生による解説がこれまた、「1912年」という時代、文学、精神の特徴論になってて読み応えあり。(あの時代の「生」というキーワードの持つニュアンスを「生命」と「生活」で触れてる辺りなど、へぇと思う所あり) 収録作の中で面白かったものいくつか ・魯鈍な猫(小川未明)→この作家の初期作品になりますが、これがゴリゴリの労働者文学のハシリっぽい奴で。ああここから「黒煙」の創刊に流れていくのね、という気配が濃厚。 ・計画(平出修)→大逆事件の弁護士だけあって、この作品の内容も社会主義活動家の夫婦の隠遁生活のアレコレで味わい深い…。 ・評論「絵画の約束事」論争→白樺誌上で繰り広げられた、杢太郎と武者小路と山脇3人の評論が順番に載っててヤイノヤイノやってるのが楽しめます。 ・描写再論(岩野泡鳴)→自然主義文学とか平面描写とかで田山花袋と岩野泡鳴が角突き合わせてたんだな…ってのがよくわかる一篇。 ・その他→萩原朔太郎の萩原栄次宛書簡や、厨川白村の近代文学十講なども、当時の流行の思想、価値観が垣間見られるモノで内容がとても興味深い。
Posted by
- 1