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ロボット の商品レビュー

4.1

69件のお客様レビュー

  1. 5つ

    20

  2. 4つ

    26

  3. 3つ

    12

  4. 2つ

    1

  5. 1つ

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2018/12/29
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

1920年、今から約100年も前に書かれた戯曲。ロボットという言葉が初めて登場した作品であるが、兄にアイディアを求めて作った新語で、チェコ語の「賦役」を意味するrobotaのaをとったもの。 舞台はロッスムユニバーサルロボットの、人造人間製造工場。ロッスムという研究者が海洋生物の研究のために、島へとやってきて、生きた化石を化学的に作ろうとする過程で、1932年にまるで生きたものであるかような物質を発見したのが始まり。彼は人間の持つ組織と同じものを具えたものを作ったが、3日程しか生きなかった。 その後甥のロッスム技師が来て、人工的な労働者として必要なものだけにし、魂など無駄なものは取り除いたロボットを作成した。 物語はその工場にヘレナという人道連盟の女性が訪ねてくるところから始まる。彼女は世界中に広まるロボットたちの置かれる環境を改善したいと考え、生産工場を訪れた。しかし、ロボットには感情が無く労働条件を人間と同等に整備することは無駄だと説かれる。15年前には1万ドルしたが、今やそれが120ドル。安い労働力の製造コストを上げるだけだと。人間の労働は無くなり、物の値段は下がり続けるが、アルクビストは労働や疲労の中にも徳があったと言う。 労働を肩代わりさけるためには、人間の成長スピードは遅すぎて、幼少期などは時間のロスだと説明される。 第2幕は10年後。 バルカン半島でロボットが70万人以上を殺害する戦争状態に。 建築技師のアルクビストは、技術の進歩に恐怖を覚え、目の前に煉瓦を積んでいくことで心を落ち着けるという。そして神に対し、心労や労働に人々が戻るよう祈っている。働く必要がない楽園では、女性が子供を産むこともなくなり、子孫が増えなくなる。 ロボットのラディウスは、ガル博士がより高い知能を与え、人間がロボットのように有能で無いことに憎しみを覚えている。このラディウスがロボット組織の指揮官となる。 やがてロッスム社のある島にも大量のロボットが押し寄せ、ロボットの組織から人類を絶滅させることを命令される。 そんな中、ガル博士がロボットの刺激反応性を変え、人間よりも秀でたものにしてしまったことを告白する。実はヘレナがロボットに心を与えたくてガル博士に依頼していた。 いよいよロボットが襲撃を始め、ロッスム社の役員たちは殺害される。アルクビスト建築士だけは、ロボット同様に手を動かして働くことができるとのことで、命を救われる。 第3幕では、ロボットたちがロボットの生産ができないとこに気付き、アルクビストに製造方法を教えてくれるよう迫る。しかし、アルクビストにその知識はない。そこで、ロボットの一体を解剖することになるが、ダモンには恐怖心が、ヘレナとプリムスには互いを庇い合う感情が芽生える。この2体は、互いに想い合っていることに気付き、またアルクビストはそれを聖書の神が人間を作ったときになぞらえ、祝福する。物語は、アルクビストが愛による主の救いで、生命が不滅であることを宣言して終わる。 歴史を読めば、人間の本には、人間でありたいのなら殺し合い、支配しなければならないとロボットは学んだという。 人間の行いに対する戒め、労働の尊さ人生の不自由さの意味を問う内容だと感じる。 現代のロボットとは意味合いが違うが、人工知能やシンギュラリティが議論される昨今にも通ずる、問題提起をしている作品だと思う。

Posted byブクログ

2018/11/04

1989年初訳、2012年第21刷。その時に買って6年間ずっと積ん読状態だった。本棚の奥にあったわけではない。いつも朝食や夕食を摂る時に側にあり、テレビを見る時に側にあったのに、手に取らなかったのである。読めば数時間で読めるこの本のことを薄々は知りながらも、手に取らない、この悪癖...

1989年初訳、2012年第21刷。その時に買って6年間ずっと積ん読状態だった。本棚の奥にあったわけではない。いつも朝食や夕食を摂る時に側にあり、テレビを見る時に側にあったのに、手に取らなかったのである。読めば数時間で読めるこの本のことを薄々は知りながらも、手に取らない、この悪癖は、思うに人間だけに身についたものかもしれない。 ほんの気まぐれに手に取り、やはり一気に読んだこの本にはこの様に書いている部分がある。年寄りのロッサムは、ロボットを人造人間の様に作ろうとして失敗する。それを継いだ若いロッサムは、こう思うのである。 ​ ドミン 人間の組織構造を一目見てとるや否や、これはあまりにも複雑だ。よい技師ならもっと簡単に作れると分かったのです。そこで組織を作り変え、何を取り除けるかあるいは簡単化できるか実験を続けたのです。要するにグローリー様、退屈ではございませんか?​ ​​​​ヘレナ ​いいえ、それどころかとても興味がありますわ。​​​ ​ドミン それで若いロッサムが申しますには、人間というものは、例えば喜びを感ずるとか、バイオリンをひくとか、散歩に行くとか、そもそもいろいろ多くのことー本来はむだなことーをする必要があるのです。(略)若いロッサムは1番経費のかからない労働者を発明しました。それには簡単化しなければなりませんでした。労働のために直接役に立たないものはすべて捨ててしまいました。それによって人間をつくることをやめにして、ロボットをつくったのです。(24p)​ AIと人間の違いが、おそらく此処にあるだろう。今からおよそ100年前(1920年)、チャペックはそのことを予言した。蓋し、おそるべし。 このあと、人間の魂を入れてつくったロボットが反乱を起こす。人間は滅びる。ロボットの魂の秘密は、何処にも明らかにされない。ロボットさえもわからず、やがてロボットさえも滅亡する一歩手前で、ロボットが涙を流す。「ロボットの涙」これが象徴的に現れたのはロボットが生まれた直後だったのだ。映画「ブレード・ランナー」で「涙」が重要な意味を持ったのは記憶に新しいことである。人間は、なんと進歩していないことか。 2018年10月読了

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2018/10/28

【由来】 ・図書館でたまたま目についた。 【期待したもの】 ・ロボットというテーマもそうだし、ロボット世界初ってのもそうだし、チャペックって、浦沢直樹のモンスターの影響か、気になる作家なので。 【要約】 ・ 【ノート】 ・戯曲。最初の10ページほど読んでみたが面白そう。 ...

【由来】 ・図書館でたまたま目についた。 【期待したもの】 ・ロボットというテーマもそうだし、ロボット世界初ってのもそうだし、チャペックって、浦沢直樹のモンスターの影響か、気になる作家なので。 【要約】 ・ 【ノート】 ・戯曲。最初の10ページほど読んでみたが面白そう。 【目次】

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2018/09/10
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

 人間より強力な機械はあり、人間より早く正確に計算するコンピューターはあった。しかしコンピューターがチェス、将棋、囲碁で人間より強くなり、プロ棋士でさえコンピューターに学ぶようになると、価値観が変化する。囲碁ソフト同士が対戦を繰り返し、更に学習して強くなる現在である。  今より100年近く前、今に近い状態(電子機器の発達によって)のロボットを想定し得た事は、作家の頭脳が優れていたのだ。  人間を補助するための電子機器なら良いが、連結して反抗を始める時が来るかと、怖れる者の僕は一人である。  この戯曲は長編で、上演に適しているかどうか判らない。僕の読むところ、人類が滅びロボットも滅ぶ、暗黒物語である。

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2018/03/22

ヒトの生活を楽にするために作られた人工人間。その人工物が意思を持った時、ヒトを乗り越え生き物になっていく。1920年発行のロボットという言葉が初めて使われたお話。著者の先見性に感心した。

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2018/01/28
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

この作品の本質は、シンギュラリティとか、人間とロボットの違いとか、そういう類のことではないように思いました。欲と物質と生産、愛と信仰と非生産、といったキーワードを中心に、人間とロボットが、どちらも生きとし生けるものとして、アダムとイヴの時代から近代までの観念をショートトラックでたどり直している、とでもいうのでしょうか…。 生産のベクトルの究極に、子どもを産めないという非生産の人間世界がおかれているのは少しショッキングでした。 登場人物の設定も興味深いです。特に紅一点のヘレナ。ギリシャ神話のヘレネーに由来していそうな気がしますが、そのヘレナが、ロボットの暴動においても破滅においても、鍵を握っているということ。一読しただけでは読み取りきれない深さがあると思いました。

Posted byブクログ

2018/01/21

日経新聞(2018.1.4)の春秋で引用されていた戯曲で、 興味をもったので、読むことに。 ロボットがチェコ語のrobota(賦役)が語源であるということも初めて知りました。 春秋でも紹介されてましたが この中の登場人物、建築士のアルクビストの言葉が やはり印象的に残りました...

日経新聞(2018.1.4)の春秋で引用されていた戯曲で、 興味をもったので、読むことに。 ロボットがチェコ語のrobota(賦役)が語源であるということも初めて知りました。 春秋でも紹介されてましたが この中の登場人物、建築士のアルクビストの言葉が やはり印象的に残りました。 「君が言ってることはあまりにも楽園みたいに聞こえる。かつては奉仕することの中に何か良いものがあったし、恭順さの中に偉大なものがあった。よく分からないが労働や疲労の中に徳のようなものがあった」 何もかもがロボットで代行される世界。 何もしなくてよくなったニンゲンは 何を幸せとして生きるのだろう…。 そんな極端な世界にならないことを 祈るばかりです。

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2018/01/02

人造人間定番ストーリーでフーンと思いながら読んでいたのだけどラストが思いがけないエモさでびっくりしちゃった…旧約聖書にまで食い込んでいく古典らしい気概のある作品で予想外の印象深さである

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2017/10/19

1920年に「ロボット」という語を生んだ有名な戯曲。チェコ語の"robota"(労働)から取られているというのも有名なエピソード。 これだけ幅広く世の中に浸透した語なのですんなりと入ってくるが、作中に「ロボット」という語が出てくるたびに「よく考えたらこの本が初...

1920年に「ロボット」という語を生んだ有名な戯曲。チェコ語の"robota"(労働)から取られているというのも有名なエピソード。 これだけ幅広く世の中に浸透した語なのですんなりと入ってくるが、作中に「ロボット」という語が出てくるたびに「よく考えたらこの本が初出なんだなぁ・・・」と、しみじみとさせられる。プロットも「感情を持ったロボットの人間に対する反乱」という現代から見たら非常にベタなものだが、これももちろんこの作品がオリジナル。 最後の一幕は「新約聖書2ラウンド目」という感じでとても良い。 AIが世間の耳目を集めている今だからこそ改めて読みたい一冊。

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2017/06/18

 「ロボット」という単語を生み出したことで知られる戯曲。話の筋はかなり単純なものだ。ある学者によって開発されたロボット達は産業の担い手として世界中に普及するが、あるきっかけで人間に反乱を起こし、ほとんどの人類を殺してしまう。しかし新しいロボットを生産する方法も失われたためロボット...

 「ロボット」という単語を生み出したことで知られる戯曲。話の筋はかなり単純なものだ。ある学者によって開発されたロボット達は産業の担い手として世界中に普及するが、あるきっかけで人間に反乱を起こし、ほとんどの人類を殺してしまう。しかし新しいロボットを生産する方法も失われたためロボット達もまた滅亡に向かう。  ラストはネタバレになるので控えるが、正直言って「そりゃないだろう」と感じる終わり方だった。この感想は21世紀に生きる者だからこそなのかもしれないが、いやほんと、そりゃないだろう。  戯曲は上演されたものを観て評価すべきかもしれない。5年前にshelfが上演した「R.U.R. a second presentation」という作品はこの戯曲をベースにしているが、そのまま上演したものではなかった。そのまま上演してもあんまり面白くないかも知れない気がするが、だからどこもやらないのか。

Posted byブクログ