1,800円以上の注文で送料無料

ぼやきと怒りのマリア の商品レビュー

3.5

2件のお客様レビュー

  1. 5つ

    0

  2. 4つ

    1

  3. 3つ

    1

  4. 2つ

    0

  5. 1つ

    0

レビューを投稿

2018/10/23
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

やっっっっ……と読み終えた感。 癖のある人のくせのある文章を読むのは、ここまで時間がかかるとは、と思うぐらい時間がかかった。 森茉莉のリアルな感情を読めたのはよかったが、これにつきあわされた編集者が大変だとも思った。 ・幸田文を『怪女史』と称した→P262 ・室生犀星を『父』の如く慕っていたとの記述→P354

Posted byブクログ

2009/10/04

森茉莉−希代の言葉使いにして、耽美小説の祖。ブリアリとドロンがよりそっている一葉の写真を見ただけで、そこに漂う何かに触発され、彼女はあの名高い男色小説『恋人たちの森』を書いてしまった。しかもそれはまだ1960年だったのだ。まさしくJUNEものの元祖といえよう。その緻密で浪漫の香り...

森茉莉−希代の言葉使いにして、耽美小説の祖。ブリアリとドロンがよりそっている一葉の写真を見ただけで、そこに漂う何かに触発され、彼女はあの名高い男色小説『恋人たちの森』を書いてしまった。しかもそれはまだ1960年だったのだ。まさしくJUNEものの元祖といえよう。その緻密で浪漫の香り高い小説、コミカルで鋭い批判精神のあるエッセイ、それらを生み出す苦しみやどたばたを、何年間も陰で支えた編集者がいたわけだ。おおよそ想像はついていた。森茉莉のエッセイに覗く、甘やかされて育ち、世間知らずなまま2度の結婚生活を経て、現実生活の些事を片づけるのが苦手なさま、他人への猜疑心がノイローゼみたいに膨らんでいく考え方。また、自らの幼児性や妄想を自覚しつつそれを大事に温めて小説の糧にしているらしい彼女の芸術的性格。上手にコントロールしながら書かせるのは容易ではなかっただろう。この本では、小説の書き始めの頃から、『甘い蜜の部屋』の10年間までの裏側が覗かれる。森茉莉の性格的どろどろだけでなく、小説の一語一句に、彼女がどれほど心血を注いでいたか、理想を追求していたかが如実に現わされ、さすがに彼女は真の創造者であったと感じさせられる。そしてまた、編集者と作家の特異な関係、初期の頃の、編集者がほめてくれればまた頑張って書き、ほめてくれないといって悲観し、まるで編集者のために書いているような、編集者によって自分の世界を規定し、全人格を委ねきっている時期から、自分を理解してくれない、自分より他の作家と仲良くしていると、嫉妬し反発し、感情的な行き違いを迎える時期、更にもっと落ち着いて距離を持ち、たまには皮肉のひとつも云ってよこす時期まで、まるで母子関係の発達を見るような関係の変化が読み取れ、これもまた興味深い。森茉莉が『甘い蜜の部屋』で小説家としては燃え尽きてしまい、その後は軽いエッセイで余生を送ったのは残念だが、これほどの産みの苦しみを見てしまっては文句はいえまい。文句を云ってももう新作は読めないんだけどね。

Posted byブクログ