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マンガと「戦争」 の商品レビュー

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14件のお客様レビュー

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2023/07/26

漫画を読んでこなかったことが少し勿体なく感じる。活字なら目には見えない世界を自分なりに自由に描けるから、その方が想像できる分楽しいのは間違いない。自分の作った世界に入り込み、自由な角度と距離感で物語を感じることができる。だからこれまでは映像や漫画には触れずにきてしまった。少し勿体...

漫画を読んでこなかったことが少し勿体なく感じる。活字なら目には見えない世界を自分なりに自由に描けるから、その方が想像できる分楽しいのは間違いない。自分の作った世界に入り込み、自由な角度と距離感で物語を感じることができる。だからこれまでは映像や漫画には触れずにきてしまった。少し勿体無い。 本書は漫画の中で語られてきた戦争像に迫り、漫画家たちが絵を通して伝えたかった真意を掘り起こしていく。筆者はマンガ・コラムニストとして、数多くの漫画に触れてきた人物だ。 始まりは手塚治虫からだが、リアルな世代としては戦中や戦後間も無く生まれてきた人々がその読者だ。手塚治虫はその後の漫画に大きく影響を与えてきた人材として、やはりここから語り始める必要があったのだろう。その後間も無く戦記者が登場するが、戦後GHQ支配の元、日本人に刷り込まれた敗戦意識、アメリカよりも劣等な意識を覆すかの如く、戦中に活躍した戦闘機などが活躍する。これは静かなアメリカへの反抗として、読者の心を躍らせたに違いない。さらに水木しげるに代表される、体験者としての物語。実際の戦場にあってどの様な辛苦があったのかをリアルに伝えていく。戦争経験者は自虐史観や自分1人生き残ってしまった罪の意識の中で多くを語ることがなかった。その様な中で飢えや爆撃に晒されて、虫ケラの様に生き延びる日本兵の姿は強烈な印象であっただろう。 そして東西冷戦期に入ると原子力も漫画に登場してくる。漫画は時代を映す鏡として、線のタッチや吹き出しを用いて人間や戦争の愚かさを読者に静かに伝えていく。時代が進むにつれ、戦争は局地戦から地球規模の災厄になっていく。そうして描かれたのがデビルマンや宇宙戦艦ヤマトだ。戦場を宇宙まで拡げただけでなく、精神世界の中の戦場を描いていく。そして、いよいよナウシカやアキラに描かれていくような、戦争よりも深刻な地球規模の破壊活動=環境破壊に続いていく。ナウシカは小学生の頃にはアニメとしてしか触れなかったが、毎年恒例行事のように繰り返しテレビ放映され、歳を重ねるたびに見方が変わってくる。深く見れば巨匠宮崎駿が漫画を通して伝えたかった事がより鮮明に見えてくる。 漫画の世界は奥が深い。線の太さやコマ割り一つ一つに意味を持たせ、活字だけの世界よりも想像さする事は多いかもしれない。何より筆者の人生の背景を映し出す様に、何を伝えたかったのか、吹き出しや背景、コマ割りから想像していくのは楽しい。 エヴァンゲリオンは大人になってから初めて見た。登場するキャラクターは敵味方を問わず、形や特徴に精神的な世界を映し出している。主人公の内面も複雑で、表情仕草を絵を通して見る事で活字には無い新しい想像の領域へと読者を誘ってくれる。これから漫画に触れる方にまずはおすすめしたい一冊である。

Posted byブクログ

2023/07/01

戦後の日本カルチャーを象徴する漫画を通じて、日本人にとっての戦争を俯瞰するという実験的作品。手塚治虫、ちばてつや、水木しげる、小沢さとる、白土三平、滝田ゆう、林静一、佐々木マキ、ダディグース、さいとうたかを、永井豪、松本零士、大友克洋、宮崎駿、かわぐちかいじ、庵野秀明などの名作が...

戦後の日本カルチャーを象徴する漫画を通じて、日本人にとっての戦争を俯瞰するという実験的作品。手塚治虫、ちばてつや、水木しげる、小沢さとる、白土三平、滝田ゆう、林静一、佐々木マキ、ダディグース、さいとうたかを、永井豪、松本零士、大友克洋、宮崎駿、かわぐちかいじ、庵野秀明などの名作がどんどん出てくる。 楽しい読み物であることは確か。例えば、手塚治虫と水木しげるの戦争漫画に描かれる死は、どちらも愚かなことで生きることを肯定している共通点がある点を指摘しながら、手塚漫画では「(死に対する)不安は生きている証でそれ自体貴重」だと励まし、水木漫画は「戦争は愚かで戦争による死もつまらない」と優しく教えてくれる。 とはいえ、「当時大学生だった私という青年読者についていえば」(P107)という様な作者の回りくどい気取った表現は邪魔でした。

Posted byブクログ

2017/12/17

夏目房之介さんの漫画関係の本はどれも面白かったんで期待してたんだけど。 手塚治虫からエヴァンゲリオンに至るまで、戦争を漫画家がどう捉えて来たか、その時代背景も一緒に分析している。 のだが。 なんか今ひとつ。ご本人もあとがきで書いてる通り、上手く行ってない気がする。

Posted byブクログ

2017/01/09
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

1997年刊行。著者はマンガコラムニスト。マンガで戦争が描かれることが多い一方、手塚治虫ほか戦争体験世代が漫画界を牽引し、あるいは水木しげるのごとく従軍経験を有する者も存した。そして、そんな流れは、戦争のリアリズムを喪失した戦後世代の描き手へ、さらには「戦争」を悲劇の象徴・抽象・記号としてしか認識できない受け手へと変わっていった。その模様を、代表的な作品・著名な作家を踏まえつつ解説する。ただ、戦後史の素描というよりは、時代時代で生み出された作家・作品解説が主テーマのようにも。

Posted byブクログ

2014/08/02

戦後日本漫画の著名な作品、作家を中心に「戦争」がどのように作品中に取り上げられているかを論じている。身体性への着目など、面白い指摘は多いのだが、戦争という大テーマに斬り込むには、やや迫力不足という感がある。180ページの新書では無理もないのだが。

Posted byブクログ

2014/06/25

1997年2月20日、初版、並、カバスレ、帯無し、オリジナルカバー版 2014年6月24日伊勢BF ダブリ、新装版有り。

Posted byブクログ

2014/02/08

戦後に、戦争をマンガでどう描いているかを手塚治虫から説明しているものである。戦争中のものについては他の文献を見る必要があると思われるが、マンガと戦争で論文を書くためには読んでおいたほうがいいかもしれない。

Posted byブクログ

2013/06/14

戦争肯定や反戦を叫ぶ著書ではなく、漫画は如何に戦争を描いてきたかを考察。 戦争といえば第二次世界大戦を指す場合があるが、ここでは限定されない。 世界大戦はもとより、最終戦争や太古の神話の戦争にまで話は及ぶ。 もちろん、総て漫画に関連する話だ。 考察に挙げられる作品(一部抜粋) ...

戦争肯定や反戦を叫ぶ著書ではなく、漫画は如何に戦争を描いてきたかを考察。 戦争といえば第二次世界大戦を指す場合があるが、ここでは限定されない。 世界大戦はもとより、最終戦争や太古の神話の戦争にまで話は及ぶ。 もちろん、総て漫画に関連する話だ。 考察に挙げられる作品(一部抜粋) 手塚治虫「幽霊男」「来るべき世界」 ちばてつや「紫電改のタカ」 水木しげる「決戦レイテ湾 第六部 壮絶!!特攻 (8)」 小澤さとる「サブマリン707」 白土三平「カムイ伝」 さいとう・たかを「ゴルゴ13」 永井豪「デビルマン」 松本零士「宇宙戦艦ヤマト」 大友克洋「AKIRA」「気分はもう戦争」 宮崎駿「風の谷のナウシカ」 かわぐちかいじ「沈黙の艦隊」 GAINAX/貞本義行「新世紀エヴァンゲリオン」 梶原一騎 作品ほか、多くの作品が挙げられている。 もちろん「はだしのゲン」など、挙げられていない重要な作品もある。 筆者は作品を恣意的に選んで、直観の密度を上げる手法を選択。 アニメの印象が強い作品も含まれているが、あくまでも漫画の方の表現を重視している。 僕の世代的な関心と興味でいうと「デビルマン」と「AKIRA」。 背景は正に戦争なのだが、夏目氏の着目点と解説に頓悟する。

Posted byブクログ

2013/05/29

ああ、これは僕らの世代は一度読んでおいたほうがいい本。 つまり、戦争をフィジカルに体験していない世代が、どうやって戦争を知り、さも自分の体験であるかのように情報を蓄積していったか、ということを、僕らが育つ過程でもっとも身近な情報源であったマンガを通して考える、という非常に示唆に富...

ああ、これは僕らの世代は一度読んでおいたほうがいい本。 つまり、戦争をフィジカルに体験していない世代が、どうやって戦争を知り、さも自分の体験であるかのように情報を蓄積していったか、ということを、僕らが育つ過程でもっとも身近な情報源であったマンガを通して考える、という非常に示唆に富む一冊だ。 著者の守備範囲があくまでマンガ評論なので、その点には物足りなさも、当然ある。 僕らの周りにあるサブカルチャー、すなわちマンガだけではなく、アニメやゲームなども取り上げなければ、当然ながら僕らの周りに転がっている戦争を十全に語ることはできまい。 それでも僕がこの本をお勧めするのはマンガという側面から戦争を見ることで、他のメディアにおける捉え方も類推が効くと思うからだ。 ガンダムを見て、単純な善悪では戦争を語れないと知りつつも、戦争そのものを否定するでもなく、そしていざ戦争になれば自分は決してアムロにはなれず、ボールに詰め込まれて真っ先に最前線で散る程度の資質しか持ち合わせていない、ということには目をつむって、それでもなお、モビルスーツ同士の戦いに息をのんだのだ、僕らは。 そういう世代が、社会の最前線に出るようになって、現実の世界で、自分の属する国が戦争できるような方向に舵を切ろうとしている。 戦争を知らない子どもたちは、その子どもたちにも戦争を知らずに済むように、世代を繋ぐ責任があるのではないか?

Posted byブクログ

2012/11/26
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

個人的な経験ですが、”マンガと「戦争」”という題名を見た瞬間、本屋で「紫電改のタカ」が言及されているかどうかを確かめました。しかもラストシーンが、どうなっているか。自分にとって”マンガと「戦争」”という言葉から思いつくものの一番大きな事が、この紫電改のタカのラストシーンでした。小学生で単行本を読んだ私も夏目氏と同じ「もっと深い何か」を感じ、しかもそれはラストのコマの配置から来ていたと、ずっと思っていました。 直接のきっかけは上で購入したのですが、”戦後マンガの「戦争」イメージの変遷を、時代と日本人の変化に接する位相でたどり、現在にまでつなげてみたい”という正にその通りの作業が、成功していると思います。 近代史は、特に太平洋戦争は興味はあるのですが、それ以上に、その時の世間様の気分が、その後にどう変遷したかの方が興味がありました。何しろ、子供までが軍国少年になって「鬼畜米英」と言ってた時代から、一挙に「ギブミーチョコレート」になって「安保反対」になって「改憲」の気分になっている位です。どうしていつそんなになってしまったの、というのが本当に興味深かったのです。 ですので例えマンガ上表現であれ、これまた同じ興味を持った人が、自分とは比較にならない広く深い分析で「脈絡」をつけてくれたこれは記録とも言える、書き物ではないかと思いました。

Posted byブクログ