こころの声を聴く の商品レビュー
対談集だから、いろんな人の”こころの声を聴く”ことができる本かと思いきや、これがびっくり、自分の”こころの声を聴く”ことができる本なのだ。 あるいは、世の中の”こころの声を聴く”こともできるかもしれない。 多田富雄の免疫の話が面白かった。
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心理療法家・河合隼雄の対談集。 遠藤周作、多田富雄との対談がじつに興味深かった。 多田の『免疫の意味論』はぜひ読んでみたい。 とくに目を引いたのが、多田富雄(免疫学者)との対談の中で、多田が、”電力会社のコントロールシステムは実によくプログラムされている。が、しかし、夏に電力消費が突然上がると、どうしようもなくなる。完全にプログラムされたシステムは、危機状態、つまり、”想定外”の前では脆弱だ”という指摘をしていた箇所。今の日本の話ではないか! 多田の発言に続く、河合の発言がさらにいまの状況そのままを捉えている。 『ああいう時の弁解はいつも決まっていまして、あらゆる状況を想定してつくっておったけれども、思いがけないことが起きましたって(中略)人間が頭で考えるあらゆる状況でないものが起こることによって、バランスがとられていることが実際に人間の身体のなかでずっと起こっているんですよね』 想定外なんて、宇宙の中の地球に生きている以上、必ず起こる。完全・完璧なシステムなんて、この世にはありえない。人間の知っていることなんて、いくらもない。最も身近な、わたしたちの身体の中でさえも、いまだに不可思議で満ち溢れているのだから。 その不可思議で、不安定で、予測できない中で、これまでもわたしたちは生きのびてきて、これからも生きていくのだ。 ここでの免疫の話では、人間のコントロールできない(それも自分の身体のなかの!)仕組みの話をしていて、わたしたちの身体は「完璧にコントロール」されているわけではなく、むしろその時の条件に対して、反応しており、一見、何の備えもない「危うい」状態のようだけれども、そのあやふやな感じが、危機的状況には好都合である、ということ。 備えあれば憂いなし、というが、逆に、ガチガチに備えてしまうことで、自らの逃げ場を無くしてしまうこともありうる、身動きしづらくなることもある。3年後、5年後、10年後……自分の将来設計をばっちり決めて、その通りに生きるのだと決めてしまった人がある日突然、病気になる。今回のような自然災害に見舞われる。現実に、そういう事態が起こっているなかで、「あいまい」になる、良い意味でいい加減になる、というのは、大切な力になってくる。 **** 河合隼雄の話によくでてくるのが、人は「自分が生きていくための物語(ストーリー)」を持っている、必要としている、ということ。心理療法家の仕事は、患者のストーリーをつくっていくことだといっている。最初は朧気に、次第に着実に、物語をつくる、ということの意味がわかりかけてきた。 覚えておきたいキーワード:自己・非自己の境界、”十歳”、物語、細胞の自殺
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それぞれの道を、それぞれの思考のもと歩み続けている人達が話す言葉は、 多様な示唆に富み、簡潔に要所を突き、本当におもしろい。 考えることの大切さも、自然と教えてくれる。 顔ぶれだけでなく、そういう意味でも稀少な、素晴らしい対談集。
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久しぶりに河合隼雄が読んでみたくなり 探していたところ、ものすごい対話集を発見。 山田太一、安部公房、谷川俊太郎、遠藤周作などと 対話してるので読んでみた。 河合隼雄という人は本当に魅力的な人で 以前、「こころの処方箋」を読んだときにも思ったけど 文章を読んで「あー、この人に会...
久しぶりに河合隼雄が読んでみたくなり 探していたところ、ものすごい対話集を発見。 山田太一、安部公房、谷川俊太郎、遠藤周作などと 対話してるので読んでみた。 河合隼雄という人は本当に魅力的な人で 以前、「こころの処方箋」を読んだときにも思ったけど 文章を読んで「あー、この人に会ってみたい」と思わせる人だと思う。 懐が広いというか、人をうわべだけで判断しないというか、 物事の本質を見ようとしている人だと思う。 この本の最初に書かれている 「読書のよろこび、語り合うたのしみ」を読んだだけでも この人は信頼のできる人だと思ってしまう。 本は、個人的には前半の対話がとても心に響いた。 たとえるならば、「人生の知恵」がたくさんつまってる感じ。 物事をこのように見たり、考えたり、 切り捨てたり、大切にしたら、人生をより楽しく、 つまらないことに煩わせられることなく有意義に 過ごせるのではないかと思った。 河合隼雄の本は、これからもまだまだ読んでみたい。
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河合隼雄さんといえば、文化庁長官もつとめられ、 また日本に分析心理学や箱庭療法を持ち込んだ、ユング心理学の 第一人者としても知られています。 そんな著者が、作家や詩人、医者や学者との対話を通じて、 人間の、日本人の無意識の領域を探っていく道行きを収録しているのですが、 河合氏は臨...
河合隼雄さんといえば、文化庁長官もつとめられ、 また日本に分析心理学や箱庭療法を持ち込んだ、ユング心理学の 第一人者としても知られています。 そんな著者が、作家や詩人、医者や学者との対話を通じて、 人間の、日本人の無意識の領域を探っていく道行きを収録しているのですが、 河合氏は臨床心理の経験からか、初対面の対話者とさえも ずばっと、という感じではなく冗談交じりにしずしずと 深い無意識の領域を感じ取らせる対話をすることに成功していると思います。 対話者の顔ぶれも様々なのですが、殊に私が興味を惹かれたのが、 遠藤周作、多田富雄、村上春樹の各氏との対話。 そして「とりかえばや」についての書簡の往復、という形で掲載されている 富岡多恵子氏との対話。 また、毛利子来氏との対話「子供の成長、そして本」は、 子ども、そして本のことを日常的に考えている身として どきっとさせられる、非常に示唆に富んだものでした。 この本自体も内容が面白いのはもちろんなのですが、各話者との 対話の題材に取り上げられている作品も面白そうなので、 早速「これから読んでみようリスト」に書き加えました。 色々なことを考えさせられながら読んでいたので、通常の私の 読書のペースから言うと倍くらい読了に時間がかかったのですが、 それだけの価値はある内容だと思います。
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2009/12/16図書館で借りる 2009/ 対談集です。 山田太一: 安部公房: 安部公房は川端康成と三島由紀夫に会うまでその存在を知らなかったという(笑) 谷川俊太郎: 白洲正子: 沢村貞子: 遠藤周作: 多田富雄: 富岡多恵子: 村上春樹: 毛利子来:
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081021(a 081103) 090404(a 090524) 090405(n 090810) 100625(a 100809)
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安部公房さんと対話されていることにびっくりしました。 作家とは人の心理を無意識で感じ取り作品として残す。資格の無い心理学者なのかもなぁ〜と思いました。
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