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ヴェーダーンタ思想の展開 の商品レビュー

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2019/10/28

第10章に、ヴェーダーンタの体系的思想を著した『ヴェーダーンタ・サーラ』(サダーナンダ著、15世紀末ごろの人物とされる?)の訳出と注釈がある。pp.211-359がその第10章。初出が1962年(平楽寺書店『言文対訳 ヴェーダーンタ・サーラ』)で、そのうち邦文にあたる部分を載せた...

第10章に、ヴェーダーンタの体系的思想を著した『ヴェーダーンタ・サーラ』(サダーナンダ著、15世紀末ごろの人物とされる?)の訳出と注釈がある。pp.211-359がその第10章。初出が1962年(平楽寺書店『言文対訳 ヴェーダーンタ・サーラ』)で、そのうち邦文にあたる部分を載せたそうだ。西洋のインド哲学者にもよく読まれた綱要書らしく、個人的にも六派哲学系の関連書をあたっていてもピンとこなかった要点がよくまとまっていた。 読んでいると、「空海の秘蔵宝鑰から諸仏崇拝と十住心論と諸法無我を除いてブラフマン一元論を挿げ替えたらだいたいこの教理にならないかなあ」という気分になった。雑な感想かもしれない。しかしよく空海の真言密教に対して言われる「仏教の再バラモン(ヒンドゥー)教化」という乱暴な要約は、特に六派哲学のうちヴェーダーンタ諸哲学との比較の中で検証される課題になるのだろうか、というふうには思えた。 あと、ヴァッラバ派の堕落のくだり(第13章5節)は、中世にもカルト化はあるものだなというか、ウォーハンマーの邪教みたいな流れだな……ショッギョムッジョ、と思った。 現代のヒンドゥー系寺院でもシャンカラ派ベースの哲学が優勢であるという発言や、当時の中村元のみる若手インド哲学者にとってもすでにダルマキールティ(月称)が研究対象として人気であるとか、そういう相場感の伝わってくるくだりも面白かった。 「六派哲学に何があるかわかったから、次はヴェーダーンタ学派がなんなのかしっかりめに知りたい」という時にかなり使える邦文献だと感じた。対して、同著者の初期ヴェーダーンタ思想に関する研究四冊本は、これよりは読みづらく、手に取るのは遅めでもよかった。

Posted byブクログ