文章読本 の商品レビュー
文化勲章を受けることになつた丸谷才一さん。 わたくしも若い頃は、勲章なんてまことにくだらぬものよと考へてゐましたが、いざ丸谷氏が受章しますと「別にいいぢやん」とつぶやく自分がゐます。 インタビューを受ける丸谷才一さんは、相変らずの大きな声で元気よく語つてゐました。歴史的仮名遣ひで...
文化勲章を受けることになつた丸谷才一さん。 わたくしも若い頃は、勲章なんてまことにくだらぬものよと考へてゐましたが、いざ丸谷氏が受章しますと「別にいいぢやん」とつぶやく自分がゐます。 インタビューを受ける丸谷才一さんは、相変らずの大きな声で元気よく語つてゐました。歴史的仮名遣ひで書くと本が売れないつていふんだよ、なんて。 故井上ひさしさんに「掛け値なしの傑作」と言はしめた丸谷版『文章読本』であります。 これは名人芸の域で、読んでゐるうちにその内容にうつとりし、上手な文章を書きたいなんで心持はどこかへ行つてしまふほどです。 第二章の「名文を読め」と第三章の「ちよつと気取つて書け」(カッコイイ)で、おほむね文章作法の要諦が示されてゐるのではないでせうか。他の章は実に贅沢な文章論と申せませう。 ところで、いはゆる名文とは何か。本書では以下のごとく説明されてゐます。 「有名なのが名文か。さうではない。君が読んで感心すればそれが名文である。たとへどのやうに世評が高く、文学史で褒められてゐようと、教科書に載つてゐようと、君が詰らぬと思つたものは駄文にすぎない。逆に、誰ひとり褒めない文章、世間から忘れられてひつそり埋れてゐる文章でも、さらにまた、いま配達されたばかりの新聞の論説でも、君が敬服し陶酔すれば、それはたちまち名文となる。君自身の名文となる」 それには広範囲に渡る多読が条件となる旨を付け加へてゐます。 本書の刊行後、この部分を吉行淳之介さんに対談で突つ込まれてゐました。くだらぬ文章を名文と思ふ危険性に言及したと記憶してゐます。丸谷氏は押され気味でしたが、そのやりとりは面白かつた。 しかし少なくともわたくしにとつて、本書は「敬服し陶酔する」に十分な一冊と申せませう。 http://genjigawakusin.blog10.fc2.com/blog-entry-261.html
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古今の名文から豊富な実例を上げて、どこが優れているのか、詳しく解説して下さっている。 名文家の文章には、素人目には気づかずに素通りしてしまいそうな精妙な工夫がこらされていて、目からウロコの連続だった。
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丸谷先生が良い文章をその豊富な知識のぱんぱんに詰まったトランクを開いてひとひらひとひら我々読者の眼前に広げてくれるご本だよ! すげー面白かったです。
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文章の最も基本的機能は伝達にあることを述べた第四章「達意といふこと」、この章が好きだ。その引用文がいい。現行憲法と明治憲法を比較して、現行憲法は確かに下手な翻訳調でありとても名文とは言えない文章であるが、とにもかくにも意味を伝えるという点で文章の資格を備えているのに対し、明治憲法...
文章の最も基本的機能は伝達にあることを述べた第四章「達意といふこと」、この章が好きだ。その引用文がいい。現行憲法と明治憲法を比較して、現行憲法は確かに下手な翻訳調でありとても名文とは言えない文章であるが、とにもかくにも意味を伝えるという点で文章の資格を備えているのに対し、明治憲法は美文調だが伝達という機能を初めから放棄した駄文、いや駄文とも言えない呪文の亡国憲法だったとする明解な論旨。気分がすっきりしますね。 ほかにも、読んでいて気分のよくなる引用文がいっぱい。私の好きなところは第八章「イメージと論理」。大内兵衛『法律学について』の一説、吉行淳之介の『戦中少数派の発言』がいい。それにもうひとつ。第十章「結構と脈絡」のなかの堀口大學の『お七の火』、幸徳秋水の『兵士を送る』が好きだ。
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2010/02/14-02/19 年末、西武の古本市で105円。 完全に頭に入れるには、通勤時に音楽を聴きながらでは無理。でもなんだか良かった。
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おばあちゃんちの本棚を見ていたら初版じゃあないけれど、かなり埃をかぶったこの本が出てきた 昔の本て面白いね、カバーの裏にはいまじゃあんまりみない布がはってあるし、それをさらにビニールで覆っているし っがつになってるのとか古い感じ表現をみて、京極夏彦の作品を連想した 昔はこれが普通...
おばあちゃんちの本棚を見ていたら初版じゃあないけれど、かなり埃をかぶったこの本が出てきた 昔の本て面白いね、カバーの裏にはいまじゃあんまりみない布がはってあるし、それをさらにビニールで覆っているし っがつになってるのとか古い感じ表現をみて、京極夏彦の作品を連想した 昔はこれが普通だったのかと思うと、とても不思議
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旧仮名遣いで書かれているので、若干読むのに時間がかかった。 しかしやはり噂通り、ものすごい国語の本だった。 自分はこれを機に日本語の古典にもっと接近していこうと思う。 日本の文章は我々若い世代が守っていかねばなるまい。
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谷崎氏のものよりも、より詳しく具体的に文章に対する考え方や取り組み方が書いてあります。文章がもっと上手くなりたいという人や、文章をより深く味わいたいという人にお勧めです。
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