フエンテス短篇集 アウラ・純な魂 他四篇 の商品レビュー
最後の訳者解説がすばらしい。全体を通して一番強烈だったのは「アウラ」か。時間の概念が古代メキシコの神への畏怖とともに狂ってくる傑作
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メキシコの作家カルロス・フエンテスの短篇6篇--表題2作の他に「チャック・モール」・「生命線」・「最後の恋」・「女王人形」--を収録。 各篇とも夢現や美醜といった相反するものが渾然一体となる作風。翻訳者の木村榮一氏の解説によると、メキシコ国外で誕生した作者はメキシコとは、メキシコ人とは何かというアイデンティティーの問題と常に向き合っていたらしく、それ故か収録作は“メキシコ的”なものを題材にしたものが多い印象だ。 お気に入りは「チャック・モール」と「最後の恋」。前者はマヤ文明の雨の神チャック・モールの気配と蘇りが、後者は主人公の老醜が露わになる結末が少し怖かった。
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「アウラ」怖いよ。。「チャック・モール」この後どうなってしまうのか不気味。「女王人形」おぞましい。不思議な読書体験でした。
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フエンテスって言う巨匠の看板が敷居を高くし、敢えて手に取らないように回避してきたつもりでした。出だしの「チャック・モール」からしてぜーったい読んだことあるんだけどという記憶に始まり、こんなにもスバラッシイ作品を見逃していたことを悔やむ。全然敷居高くないし、中二ってないし、解りやす...
フエンテスって言う巨匠の看板が敷居を高くし、敢えて手に取らないように回避してきたつもりでした。出だしの「チャック・モール」からしてぜーったい読んだことあるんだけどという記憶に始まり、こんなにもスバラッシイ作品を見逃していたことを悔やむ。全然敷居高くないし、中二ってないし、解りやすく読みやすい。(読みやすいっていう定義が難しい)メキシコの作家って、ごってごてルアーとかリールでバス釣りしてるんじゃなくて、子供が小さい舟に乗ってわかさぎを釣るような「釣れなかったらまた明日来ようぜ」みたいな、粋な人柄を感じる。
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メキシコの作家、フエンテスの短編集。 えも言われぬ怪奇趣味は、部分的にはサキを彷彿とさせる。が、あっと驚くオチにヤラレル、というよりは「何なんだ?読み間違いか?」という違和感を絶え間なく感じさせられるような読後感。 土産物屋で買ってきた古代アステカ文明のちょっとした石像。苔をす...
メキシコの作家、フエンテスの短編集。 えも言われぬ怪奇趣味は、部分的にはサキを彷彿とさせる。が、あっと驚くオチにヤラレル、というよりは「何なんだ?読み間違いか?」という違和感を絶え間なく感じさせられるような読後感。 土産物屋で買ってきた古代アステカ文明のちょっとした石像。苔をすっかり洗い落とすと徐々に生気を帯び始める・・・(「チャック・モール」)。ちょっとした偶然から二度と会うはずのなかった幼馴染の少女を十数年ぶりに訪ねると・・・(「女王人形」)。・・・ 読んでいるときに襲ってくるいわば「解消しない不安定感」はまさしく時間軸の不安定さに由来する。我々は根拠がありそうでない「現実認識」「時間感覚」の中で生きている。しかし、「自分は自分である」というゆるぎない(しかし浅薄な)自信は、何かをきっかけにあっけなく損なわれるかもしれない。 しかしメキシコっていったいなんなのだ。なぜここまで濃厚に「死の匂い」を纏っているのだ。ラテンアメリカ文学、と一口に言っても、どうも南米大陸のそれとは何かが違う気がする。 最表題作の「アウラ」は「雨月物語」の強い影響下にある作品だという。村上春樹も雨月物語の夢幻性に強い関心を寄せている。両者の世界観はおそらく通底している。 うーん、ラテンアメリカ文学、興味深い。
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2008年12月16日~17日。 短編が六本。 そのどれもが面白い。 特に最後の「アウラ」は僕にとって絶品。 それと翻訳が良かったように思う。 いい意味でクセがなく、非常に読みやすい。
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五編どれも傑作。なかでも表題作「アウラ」が素晴らしい。とある館に住み込みで働く若い男を襲う怪異。典型的なゴシックホラー調でありながら、一方でメキシコ人にしか描けないメキシコの宿業も感じさせる、凄みのある作品。 その他、生々しい死の手触りを感じさせる脱走兵の物語「生命線」、ミステリ...
五編どれも傑作。なかでも表題作「アウラ」が素晴らしい。とある館に住み込みで働く若い男を襲う怪異。典型的なゴシックホラー調でありながら、一方でメキシコ人にしか描けないメキシコの宿業も感じさせる、凄みのある作品。 その他、生々しい死の手触りを感じさせる脱走兵の物語「生命線」、ミステリー仕立ての「純な魂」も秀逸。
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メキシコの作家、カルロス・フエンテス 著。死んだ友人の手記の登場するマヤ文明の雨の神「チャック・モール」、監獄から脱走する兵士達「生命線」、美しい海岸における老人の「最後の恋」、幼い頃に出会った女の子の家を訪ねる「女王人形」、ヨーロッパとメキシコの間で引きちぎれていく兄妹の愛「...
メキシコの作家、カルロス・フエンテス 著。死んだ友人の手記の登場するマヤ文明の雨の神「チャック・モール」、監獄から脱走する兵士達「生命線」、美しい海岸における老人の「最後の恋」、幼い頃に出会った女の子の家を訪ねる「女王人形」、ヨーロッパとメキシコの間で引きちぎれていく兄妹の愛「純な魂」、仕事募集の記事にひかれて老女の住む不気味な屋敷に迷い込んでいく「アウラ」、の六篇収録。 味わい深い短編集だった。 特に「チャック・モール」「女王人形」「アウラ」がよかった。いわゆるゴシック小説の部類なのだが、そこにメキシコ特有の神や死生観が絡んできて、何か原初的な恐怖を感じる。こういう話は、「死」がもはや生活と分離してしまった現代日本ではリアリティーをもって語れない気がする。 「生命線」と「最後の恋」は巧くできてはいるもののさほどオリジナリティーを感じなかったが(そもそもこれは長編の抜粋らしく、私としてはちゃんと長編として読みたかった)、「純な魂」に関しては解説を読むと著者自身の事情が影響していることがわかり、大分深みが増す。本編とは関係ないのだが、この解説の詳しさも、この本の魅力だろう。
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やはり表題作がいい。現実と幻想、過去と現在と未来、聖と俗、明と暗が溶け合い微妙な枠を通り超している。読後、現実に放り出された。
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FMシアターのラジオドラマを繰り返し聞いて、「アウラ」だけは読んでいたが、このたび通読。 ゴシック・ホラー・オカルトの系譜、 「アウラ」 「女王人形」 「チャック・モール」 ミステリーとも怖ろしい女ものともいえる、(慈しみ食らいつくす大地母神) 「純な魂」 極限の、あるいは人生後期の心理もの、 「生命線」 「最後の恋」 に分けられるか。多様な作風だが、やはり幻想ものが抜群に恐ろしく美しい。
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