藤田健治著作集(第2巻) の商品レビュー
『哲学的人間学』(1977年、紀伊国屋書店)、『哲学的人間学方法論―生の連続と非連続のパースペクティヴ』(1988年、刀水書房)、『哲学的人間学―人間の本質への新しい試み』(1985年、放送大学教育振興会)のほか、『哲学的人間学―体系と転相』(1981年、二玄社)の「総説」などを...
『哲学的人間学』(1977年、紀伊国屋書店)、『哲学的人間学方法論―生の連続と非連続のパースペクティヴ』(1988年、刀水書房)、『哲学的人間学―人間の本質への新しい試み』(1985年、放送大学教育振興会)のほか、『哲学的人間学―体系と転相』(1981年、二玄社)の「総説」などを収録しています。 哲学的人間学とは、シェーラーやプレスナーなどの思想家たちの立場を指していますが、本書ではそれらの思想家たちの議論が紹介されているわけではありません。著者は、みずからの哲学的立場として、哲学的人間学を標榜しており、本書に収められている作品でもそうした著者自身の思想が開陳されています。むろん著者の思索も、過去の思想家たちとまったく無縁ではありえないことはいうまでもありません。著者は、ヘーゲル以降の思想家たちが、人間の実存や身体、意志といったテーマに取り組んだことを指摘し、それらの問題が人間のありかたへの問いにつながっていくことを論じています。 また著者は、従来の哲学における主要なテーマとして、存在論、認識論、人間学という三つがあげられるといいます。そのうえで、存在論も認識論も人間自身のありかたを離れては語りえないことから、ボルノーにならって「人間学的還元」がおこなわれるべきだと主張しています。このような立場から、従来の哲学における諸問題についての考察が展開されています。 さまざまな哲学上の諸問題がとりあげられており、著者自身はそれらがいずれも人間学という観点から統一的に解明されることを示したいと考えているようですが、個々の問題についての踏み込みがじゅうぶんになされていないような印象を受けました。
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