カント哲学の諸相 の商品レビュー

浜田義文(著者)

2013/09/23

各所で発表された論文・講演などを一冊にまとめた研究書。主にカントの実践哲学に関連する内容。『カント倫理学の成立』などで、カント哲学の体系的理解を支えとしつつイギリス道徳哲学やルソー哲学との比較という観点からカント思想の解明に努めてきた著者の研究スタイルがよくわかる。この著作ではアダム・スミスとキケロが比較対象として選択されている。もちろんこの選択はカントにとってこの二人が何がしかの重要性を持っていることからなされたものであり、決して恣意的な選択ではない。しかも、そのような比較によってカント哲学における「善意志」や「良心」といった鍵概念が哲学的伝統のなかでどのような位置を持っているかが解明されている。