映像の芸術 の商品レビュー
忘れられつつある広島出身の作家の一人であり、ベラ・バラージュの映像論を紹介する傍ら、映画批評家としても活躍した佐々木基一の映画批評を集成した一冊。評論の対象になるのは、草創期の映画から1990年代初頭の映画にまで及び、それ自体として一つの映画史と言っても過言ではない。映像論とし...
忘れられつつある広島出身の作家の一人であり、ベラ・バラージュの映像論を紹介する傍ら、映画批評家としても活躍した佐々木基一の映画批評を集成した一冊。評論の対象になるのは、草創期の映画から1990年代初頭の映画にまで及び、それ自体として一つの映画史と言っても過言ではない。映像論としても興味深いものを含んでいて、機械の眼と現実を瞬間的に対峙させて「未知の領域」を発見する「スナップ的方法」を論じた一節など、ベンヤミンが語った「無意識の織り込まれた空間」の「ショック」作用を連想させる。ただし、その方法を論じる際に佐々木が引き合いに出すのは、ブロッホなのだけれども。ヴィスコンティのうちにブレヒト的な「認識としての劇」を見て取るのも、佐々木ならではの視点かもしれない。何よりも感銘深かったのは、レネの『ヒロシマ・モナムール』を論じた一篇。公開直後の1959年に、すでにヒロシマを映画で撮る意味についての深い省察にもとづいて、この作品を論じた批評があったのだ。1971年に『映像論』として出されたものを編み直して生まれた本書が刊行されたのは1993年。佐々木が死去した年のことである。
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