昭和史(2 1945-89) の商品レビュー
東京大学名誉教授の中村隆英(経済統計学、日本経済学)による、昭和史概説の戦後編。 【構成】 第5章 占領・民主化・復興 1 占領の開始 2 戦後の政治と社会 3 戦後復興と占領政策の転換 4 朝鮮戦争とサンフランシスコ講和 第6章 「もはや戦後ではない」 1 吉田内閣...
東京大学名誉教授の中村隆英(経済統計学、日本経済学)による、昭和史概説の戦後編。 【構成】 第5章 占領・民主化・復興 1 占領の開始 2 戦後の政治と社会 3 戦後復興と占領政策の転換 4 朝鮮戦争とサンフランシスコ講和 第6章 「もはや戦後ではない」 1 吉田内閣の倒壊 2 1950年代前半の経済と社会 3 1955年体制の成立 4 第二党としての社会党 5 高度成長の出発 6 所得倍増 第7章 成長を通じての変貌 1 池田内閣後期 2 佐藤の政治 3 日常化した成長 4 成長への反抗 5 ナショナリズムの変容と復活 6 高度成長の終焉 第8章 「大国化」と「国際化」 1 世界のなかの日本 2 自民党の内紛 3 石油危機後の経済過程 4 第二次石油危機と財政再建 5 石油危機以後の社会 6 プラザ合意以後 7 戦後史をふりかえって むすび 昭和の時代 以前から思っていたが、戦後史というカテゴリーでこれという概説書が見あたらない。日本史の全集ものだとだいたい3巻分ぐらいのボリュームになるし、それぞれ著者もばらばらで視点の一貫性に欠ける。外交史や時代を限定した政治史に限定すれば良書もあろうが、国内政治、経済、社会といった幅広いジャンルを多層化した形で一つの時代を書き上げた文献には今まで出会ったことがなかった。 その点、本書は非常にバランスがよいし、戦後史の初学者に薦めたい一冊である。特に国内政治問題に偏らず、日米間貿易を軸とした国際経済や国内産業構造の転換という視点が要所に盛り込まれている点は、普段政治外交史ばかり読んでいる評者のような人間には新鮮であり、ありがたい。統計もふんだんにもりこまれている。 1993年初版ながら、おそらく本書を超える戦後史概説書は今でもそう無いだろう。対アジア外交などの外交史がやや手薄なので、本書と五百旗頭眞編『戦後日本外交史(新版)』(有斐閣)を2冊通読すれば、日本の戦後史についての基本的な知識は身につけられるだろう。
Posted by
- 1