贅沢貧乏 の商品レビュー
ついに読んだ、贅沢貧乏。森茉莉の感性に時にうっとり、時に笑いながら読んだ。今だったら絶対アウトでしょう、というようなことも(当時だってアウトだったのではないか)、小気味良くぶった斬る文章は私にとっては笑えるが、嫌悪感を持つ人も多いはず。 森茉莉のすごい所は自己分析の鋭さ。室生犀星...
ついに読んだ、贅沢貧乏。森茉莉の感性に時にうっとり、時に笑いながら読んだ。今だったら絶対アウトでしょう、というようなことも(当時だってアウトだったのではないか)、小気味良くぶった斬る文章は私にとっては笑えるが、嫌悪感を持つ人も多いはず。 森茉莉のすごい所は自己分析の鋭さ。室生犀星が部屋に来た時の感想と、贅沢貧乏で描写される本人が見ている室内の様子との違い。それも理解し、世間から見た自分のこともよく見えている。それでも森茉莉は森茉莉としてしか生きられないし、他の生き方をするなんて死に値するのでしょう。 森茉莉を取り巻く人々、文壇の人々にも温かみを感じる。三島由紀夫についての文章は秀逸ではないか。森茉莉ではないが、パッパがいてくれたら、三島由紀夫も違ったかもしれないと思う。三島由紀夫について語れるほど知らないが、三島由紀夫の本質を見抜くような文章はうっとりとした。
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作者いわく「底抜け小説」、自虐的な描写についつい笑ってしまう。硝子瓶を愛したり、貧乏でも心の贅沢さを失うことのない生活は素敵だなと思った。また、今まで偉い文豪、くらいしか知識がなかった人達の一挙手一投足、言葉、などが知れたのも良かった。室生犀星さん、読んでみたいと思う。
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三島由紀夫は森茉莉のことを、 「言葉で自分の世界を構築してその城のなかに住んでいる。私もそうしたかったが、どうしても外からしか描けない。その点で森茉莉には勝てない」 というようなことを言っていたらしい。 森茉莉は、貧乏生活のなかでも彼女の愛好するヨーロッパ的な美しさを見出し、そ...
三島由紀夫は森茉莉のことを、 「言葉で自分の世界を構築してその城のなかに住んでいる。私もそうしたかったが、どうしても外からしか描けない。その点で森茉莉には勝てない」 というようなことを言っていたらしい。 森茉莉は、貧乏生活のなかでも彼女の愛好するヨーロッパ的な美しさを見出し、その世界を文章にした。彼女の自伝的小説には、とにかく西洋的でおしゃれな言葉たちが散りばめられている。陶酔感とナルシシズムが満ち溢れており、ああ、ナルシシズムってよくないことのように思っていたけど、創作においてはむしろ必要なものなんだなあと。ナルシシズムを排除するのをやめようと思った。同時に客観視点も持ち合わさなければならないけれど。 森鴎外の娘として溺愛され育つも、二回の離婚を経験し、年老いてから貧乏生活を送る彼女は、不幸だと周りに同情されたそうだが、 言葉で自分の世界を構築し、その中でのみ生き、それ以外のことはどうでもいいと捨ててしまえる、そんな強さを持っていた。彼女はきっと幸せだった。 ここにきて使い古された言い回しを使うけれど、いつだって幸せは自分の心が決めるのだ。 そして自分が生きるための世界を言葉で作れたら、それほど素敵なことはないと思った。
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面白かったです。森茉莉流の豪奢なレトリックに彩られたうつくしき哉、人生。エッセイに分類されているんですが、短編小説風の不思議な話も収録されています。浅草のノンシャランな気楽さと風通しを愛し、懶惰にアンニュイにチョコレートをかじるマリア。決して真似は出来ない生き方だけれど、ほんの少...
面白かったです。森茉莉流の豪奢なレトリックに彩られたうつくしき哉、人生。エッセイに分類されているんですが、短編小説風の不思議な話も収録されています。浅草のノンシャランな気楽さと風通しを愛し、懶惰にアンニュイにチョコレートをかじるマリア。決して真似は出来ない生き方だけれど、ほんの少し前の日本にこのようなエトランゼ気質の女性がいたことが誇らしいです。
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森茉莉さんの「贅沢貧乏」の思想、大いに共鳴いたします。心の贅沢、自分の贅沢なんですよね!森茉莉さんが雑誌「新潮」昭和35年6月号にのせた「贅沢貧乏」、群ようこさんの「れんげ荘」に出てくるので、どんなものか興味が湧きました。(笑) 牟礼魔利(むれ まりあ)の部屋、彼女の生き方がそう...
森茉莉さんの「贅沢貧乏」の思想、大いに共鳴いたします。心の贅沢、自分の贅沢なんですよね!森茉莉さんが雑誌「新潮」昭和35年6月号にのせた「贅沢貧乏」、群ようこさんの「れんげ荘」に出てくるので、どんなものか興味が湧きました。(笑) 牟礼魔利(むれ まりあ)の部屋、彼女の生き方がそうで、部屋にある物象は最新の注意が払われ、絶対にこうでなくてはならぬという鉄則によって選ばれています。貧乏臭さを追放し豪華な雰囲気を取り入れて・・・(彼女の目だけに映る・・・)!
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経歴と併せて読むと、なんかすごく納得がいった。 部屋を見た室生犀星が、その日は眠れなかった、という程の(どんなだ)貧乏ぐらし。 でも、彼女の姫目線では全てこだわりの欧羅巴の貴族の部屋。 ここで彼女が貧乏で若くなくて生活力のないのをすごく自覚的に書いてるのが面白いと思った。自分の作...
経歴と併せて読むと、なんかすごく納得がいった。 部屋を見た室生犀星が、その日は眠れなかった、という程の(どんなだ)貧乏ぐらし。 でも、彼女の姫目線では全てこだわりの欧羅巴の貴族の部屋。 ここで彼女が貧乏で若くなくて生活力のないのをすごく自覚的に書いてるのが面白いと思った。自分の作品のことなめくじ小説とか言ってるし。 文章は一文がだらだらと長くあっちこっちに飛んだりして読みづらい。
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森茉莉の有名エッセイ集。これと『父の帽子』が知名度では双璧ではなかろうか。 エッセイ集とは言うものの、小説ともエッセイともつかない不思議な散文だった。作中には実在の人物も登場するが、微妙に名前が変わっていて、その改名のセンスが面白い。
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黒猫ジュリエットのはなしがとても好き。存在とはどういうことなのか。 時間は一瞬一瞬飛び去っていくものだから現在という時間はないのだというのが印象的。 魔利の、最低限のお金で大すきなものだけに囲まれた自分にだけ贅沢なくらしにあこがれざるを得ない…
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
森鴎外の長女と聞くだけでも「贅沢」してきた人なんだろうなと思いつつ読み始めてみると、驚くべきことにその正反対。 彼女は、一見すると粗末な住まいに住んでいたといいます。かつては髪を洗うことさえ女中に任せていたというお嬢様っぷりだったそうですが、そんな生い立ちもあって何ひとつ自力でできない自分に対して面白おかしく(じつに客観的に)描き出すのは見事の一言に尽きるように思います。 彼女が大切にしていたのは、自分の価値観に従って生きることであり、美しく生きることだったのではないでしょうか。彼女にいわせれば、誰もがまったく同じような生活を送るような生活空間は空虚なものでしかない。 決して裕福ではないなかでも、チョコレートや少しの酒・タバコは欠かさない。部屋の様相にしても、周りの人にはわからなくても自分が贅沢だと思えればそれでいい。それが「贅沢貧乏」だということなのではないかという印象を抱きました。 反対に、品のない下らぬ贅沢を見せつけることや、「わたしは特別な人間だ」などということは嫌っていたに違いありません。そんな茉莉さんの考え方が、僕にはとてもしっくりきました。 長すぎるカッコ書き、文章の微妙なつながり、気になることもあるかもしれませんが、これはいかにも思ったことをそのまま書き連ねているような印象を受けます。決して緻密に構成されたものではないにしても、そこには彼女の思考の流れが生き生きと表れているのではないでしょうか(あれこれ飛び火することからは、彼女がおしゃべり好きだったことがわかります)。 こんな生き方をしてみたいものです。
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図書館で借りたときは読みきれず、今回購入。前半は、最近の軽めのお話ばかりを読んでいた身には読み進めるのに時間がかかったが、次第にその文体にも慣れて独特の世界に引き込まれ面白くなってくる。ほかの作品も読みたい。でもこの作品も読み返したい。もう一度読めたら★5つつける思う。
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