バベットの晩餐会 の商品レビュー
隅々にまで作者の意識が行き届いた作品。最初の三分の一ぐらいで姉妹、それぞれの恋愛が描かれる。その描かれ方も、その後の経過に必要なことだけが読み手に伝えられる。無駄がなく、くっきりと伝わってくる。 バベットの登場で物語が大きく動き始める。パリからノルウェーに移り住み、牧師亡き後、二...
隅々にまで作者の意識が行き届いた作品。最初の三分の一ぐらいで姉妹、それぞれの恋愛が描かれる。その描かれ方も、その後の経過に必要なことだけが読み手に伝えられる。無駄がなく、くっきりと伝わってくる。 バベットの登場で物語が大きく動き始める。パリからノルウェーに移り住み、牧師亡き後、二人で住まう老姉妹の家事全般をして暮らすことになる。 富くじで1万フランが当たったバベットは、牧師の生誕100年を祝う晩餐会の料理は任せてほしい、と姉妹に頼む。姉妹は大金が転がり込んだバベットは自分たちのところからはもう、出て行ってしまう、と思い込んで願いを入れる。 バベットは入念な準備をして、祝宴に臨む。この宴にこの作品の著述の最初からのすべてが集約されている。最初に触れられた姉妹の恋愛の描写も、この宴の部分とのつながりで必要なだけに絞られている。 くっきりとした印象の残る、類まれな作品だと思った。
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作者のイサク・デーィネセンは、映画『愛と哀しみの果て』の原作者カレン・ブリクセンと同一人物です。 この作品も映画化されました。 いつか、小説で読みたいと思っていた作品です。 あとがきを読むまで作者の正体を知りませんでした。 食が人を幸せにする物語っていいですね。 普段の食卓に...
作者のイサク・デーィネセンは、映画『愛と哀しみの果て』の原作者カレン・ブリクセンと同一人物です。 この作品も映画化されました。 いつか、小説で読みたいと思っていた作品です。 あとがきを読むまで作者の正体を知りませんでした。 食が人を幸せにする物語っていいですね。 普段の食卓には、海亀のスープも極上のワインも無縁ですし、晩餐会ということもありません。 それでも、バベットはどんな風に包丁を使って、どんな調子でスープを調整して、どんなに素敵に盛り付けたのかと考えると、それだけで楽しくなる物語です。 ちくま文庫には、もうひとつの作品『エーレンガード』が収録されています。 小さな公国があった時代の物語です。 大人になると、小説を読むときにも『なにが』というような小難しいことを考えてしまいます。 この作品は、そんなことは考えずに、子供の頃のように『ものがたり』を楽しむ気持ちにさせてくれる作品です。 できれば、『愛と哀しみ〜』も、映画をドイツ語で見ているので小説を日本語でもう一度読みたいと思っています。 …捜さねば。
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「芸術家が次善のもので喝采を受けるのは、恐ろしいことなのです。 あのかたはおっしゃいました。 芸術家の心には、自分に最善をつくさせてほしい、 その機会を与えてほしいという、 世界中に向けて出される長い悲願の叫びがあるのだと」というバベットの言葉が印象的。
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