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華厳宗祖師絵伝(華厳縁起) の商品レビュー

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2014/11/24

京都国立博物館で開かれていた特別展覧会「国宝鳥獣戯画と高山寺」、大盛況のうちに本日閉幕しました。ツイッターで混雑状況が出ていたのを見ていると、日によっては場外で240分待ちなんてこともあったようで、そしてまた絵巻(甲巻)の手前で60分とか待つ日もあったようです(^^;)。私は前期...

京都国立博物館で開かれていた特別展覧会「国宝鳥獣戯画と高山寺」、大盛況のうちに本日閉幕しました。ツイッターで混雑状況が出ていたのを見ていると、日によっては場外で240分待ちなんてこともあったようで、そしてまた絵巻(甲巻)の手前で60分とか待つ日もあったようです(^^;)。私は前期の終わり頃の平日、朝一番で行ってみたのですが、それでも1時間弱、外で待ったかと思います。 甲巻の生き生きとした動物たち、丙巻が実は紙の裏表に描いた絵を開いたものだと思われること、失われた部分があることを示唆する模本が存在すること、などなど、鳥獣人物戯画自体もおもしろく、まぁ待ったけれども行った甲斐はあったかな、というところでした(でも行けたら行こうと思っていた後期に行く気は失せましたけど(^^;))。 ところで、こちらの展示はもう1つ、高山寺自体もテーマになっていました。 開祖・明恵上人の生涯や、鳥獣人物戯画以外にも守り伝えられてきた宝物のあれこれ。これが予想以上におもしろく、へぇぇ、と唸らされました。 法を求める決意を示すために右耳を切ったとか、自ら見た夢の記録を40年に渡って書き残し、その中には夢の中の宗教体験が絵入りで記されているとか、明恵上人の求道の前のめりの激しさもなかなかすごいです。 宝物も数々ありますが、中で、特に印象が強かったのが、「宋高僧伝」を元にした、新羅の僧、義湘が入唐する際の顛末を描く絵巻、「華厳宗祖師絵伝 義湘絵」。義湘は大変な美男子だったそうで、入唐後、寄進を請いに立ち寄った家の侍女であった善妙は彼に一目惚れします。義湘はこれになびかず、仏に帰依するように説きます。 義湘を強く慕う善妙は、義湘が新羅に帰る際、龍に化身してその身を守り、故国に送り届けます。善妙は華厳の守護神となり、高山寺には善妙の立像も伝わっています。 いや、何か、すごい話だなと。 安珍・清姫では清姫は蛇になりますが、決して安珍を守るためではない。 恋は報われず、自らは龍となって、それでよかったのか、善妙さん!? と思いつつ、何だかドラマチックさに驚いて、全体としてはどんな話なのか、とこちらの本を借りてみました。 華厳宗祖師絵伝は2つの部分からなります。 一方はこれまで触れてきた義湘の話。 もう一方は義湘の師にあたる元暁の話。義湘とともに唐に行こうと思っていたのですが、夢枕に鬼が立ったのをきっかけに、仏法を求めるのに場所は関係あろうか、己の心以外に求めるべき師などいないと悟り、新羅に留まります。なかなか凡人には納得しにくい話の流れですが、インドに渡りたいと思いながら果たせなかった明恵上人には、感じるところの多い話だったのではないかと思われます。 義湘の話は大まかな話は前出の通りなのですが、善妙が龍に化身する前に、捧げ物を用意している間に義湘の船が出帆してしまうという下りがあります。嘆き悲しむ善妙はまず、捧げ物を海に投げ、続いて身を投げて龍と変じます。 また、絵巻としては残っていないのですが、義湘が新羅に戻った後、彼が理想の寺を造るのを助けるエピソードがあります。 ふぅむ。安珍・清姫が女の執念の話だとしたら、こちらは男の理想が勝利した話なのか・・・? 善妙はそれでよかったのかもしれないけど、何かちょっと、男に、というかお坊さんに都合のよすぎる話でないかい・・・? 何となく納得できないところもありつつ、巻末の解説を読んでいたら、このお話、むしろ、当時の「女性たち」に支持されていたようなのですね。 ときは承久の乱の頃。多くの女性がこの戦乱で夫を失いました。貴族階級の多くの女性たちが、未亡人となると出家して尼となり、高山寺にやってきました。善妙の悲劇を自らの境遇に重ね合わせ、涙を絞った、ということだったようです。義湘絵の成立には、はっきりしない部分も多いようなのですが、多くの尼たちの後押しがあったという推測も成り立ちそうです。 あるいは、激しく深い悲しみを投影するには、「龍」の姿はふさわしい器であったのかもしれませんね。 高山寺の鎮守には、女神となった善妙も勧請されています。 善妙神立像も本展で出展されていました。図録の美しい像を眺めつつ、尼君たちをはじめとする当時の女性たちの嘆き・報われなさにも思いを馳せてみます。 (いや、でもやっぱりちょっと納得しきれないんですけど(^^;)) *この「日本の絵巻」シリーズを今回初めて知りまして。なかなかおもしろそうなので、機会があればまた別の巻を借りてみようかなと思っています。

Posted byブクログ