アイドル工学 の商品レビュー
これも近所の図書館で見つけた本。 アイドルについての本、と言っても、刊行が1989年と古く、私はもっと最近のアイドル事情について知りたかったので期待せずに読んだ。しかし、面白かった。 著者は本書で、生々しい人間的実像を呈示しつつカリスマとしてメディアに登場する70年代の山口...
これも近所の図書館で見つけた本。 アイドルについての本、と言っても、刊行が1989年と古く、私はもっと最近のアイドル事情について知りたかったので期待せずに読んだ。しかし、面白かった。 著者は本書で、生々しい人間的実像を呈示しつつカリスマとしてメディアに登場する70年代の山口百恵、それに対しテレビの虚構であり、虚構であることを受け手もじゅうぶん理解した上で享受される80年代型アイドルの松田聖子。この2人の対比をメインテーマとして論述する。 松田聖子のような堂々たる虚構性・表層性は、時代の流れとともに変化した受け手の感受性によって支えられ、それにつれて「アイドル」概念も微妙に変化してゆく。 要するにここでも1980年代のポストモダン的な社会像が描かれているのだ。最終章では、まさに当時流行したポストモダン風味の社会批評が展開されている。 松田聖子後のメルクマールとして、著者はかなりおニャン子クラブの革命性を評価している。私は「夕焼けニャンニャン」を見ていなかったので知らないのだが、おニャン子クラブの呈示のされ方が、アイドルなる物の表出が、すべてオープンにされつつ実行されたという点、彼女たちの素人くささとクールな無意味さが新しかったということらしい。 本書の論述はおニャン子クラブで終わっているが、その後モーニング娘。を経てAKB48へと展開されるアイドルの表出層の変容はどのように語られるべきなのか、とても気になる。 意外と面白かった本書は、それ自体がいかにも80年代テイストではあるが、この見解はおそらく現在にも通じるところが多いと思われ、今後も私には縁遠かった「アイドル界隈」についての社会学的観察を読んでみたいと感じた。
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1989年発行。80年代のアイドルブーム、おニャン子の盛衰をシステムとして捉えようとした著作。すでに発行から20年以上たち、今になるとモーニング娘。AKBとアイドルが盛衰を繰り返す原点とも言える。 何よりもアイドルと洋楽、ニューミュージックなどが1つの進歩主義の中で捉えられてい...
1989年発行。80年代のアイドルブーム、おニャン子の盛衰をシステムとして捉えようとした著作。すでに発行から20年以上たち、今になるとモーニング娘。AKBとアイドルが盛衰を繰り返す原点とも言える。 何よりもアイドルと洋楽、ニューミュージックなどが1つの進歩主義の中で捉えられているというのが面白い視点だった。思えば当時は、クラシックを頂点としてオーディオの機器類も全盛を極めていた。 今となっては当たっていることや外れていることもあるが、当時の雰囲気を知るためにも良い本だと思う。
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