モーテル・クロニクルズ の商品レビュー
ヴェンダースに霊感を与え、「パリ、テキサス」を撮らせたサム・シェパードのエッセイ集 エッセイというより散文詩というか超短編集というか 言葉で作られたポートレイトという趣き
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サム・シェパードの書くものについて、邦訳ではあるが、以前読んだことがある。 モーテル・クロニクルズというタイトルのその小品集を、私は折り癖が付くように気の向いたところだけを開いて読んでいた。 そう言った読み方が正しいのかどうか、きっと正しくないのだろうと思う。 私は時折、ひどく...
サム・シェパードの書くものについて、邦訳ではあるが、以前読んだことがある。 モーテル・クロニクルズというタイトルのその小品集を、私は折り癖が付くように気の向いたところだけを開いて読んでいた。 そう言った読み方が正しいのかどうか、きっと正しくないのだろうと思う。 私は時折、ひどく気紛れなほんの読み方をする。 もちろん冒頭から、普通に筋を追って読む読み方も普通にする。 だが、時折、どんな本でも気の向いたところを開いて、そこからいきなり読み出すこともある。それやり方の差異を決める基準は特にない。 単に気が向いただけだ。 そう言った時にそう言った小品集はひどく気分に合う。 サム・シェパードは本当はそう言った名前ではない。本名は確かもっと別の名だった。彼は役者として出発し、殺人犯の名前を自分の名前として選んだ。どう言ったつもりだったのかそれも私は知らない。 彼の書いたものは他には鷹の月と、ボブ・ディランに同行したツアーの記録しか知らないが、翻訳でしか知り得ない、彼の描く世界の、奇妙に乾いた空気が、奇妙に私を惹きつけることがある。 砂埃の舞う、さびれたまさに知られないような名前の西部の街、どこまでも続く荒れた風景、そう言ったものが彼の原風景なのか、彼自身の視線は自分自身に対してすらどこまでも容赦ない。 人には勧めない。 自分の嗜好が他人と合うかどうかそれはまた別の話だ。 だが、容赦のない、乾いた砂の空気。 どこまでも続く道の果てに、なにもないことを知ってしまっている彼は、何の夢を追うのだろう、たまにそう思うこともある。 …読書感想文にはならない。
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